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マルの言葉に、崇嗣さんと男はぎょっとしたような顔をした。
「録音だって? 何の言いがかりだよ」
男は誤魔化すように笑うが、崇嗣さんの表情は厳しいままだ。どういうことだ、と促されて、マルは違和感の理由を述べる。
「微かですが、ノイズが聞こえます。おそらくはコートの右側……、そう、内ポケットに何か録音器具があります」
崇嗣さんは男の内ポケットに手を突っ込むと、小型のマイクロフォンを引き出した。
「俺をはめようとしたのか?」
「ち、違う、あんたをはめようだなんて……!」
地面に落としたマイクロフォンを踏み潰し、マルの手を掴んでその場から立ち去ろうとした崇嗣さんの後を、男は慌てたように追う。
「待ってくれ! ほんの出来心で、あんたをはめる気なんてなかったんだよ!」
崇嗣さんは足を止めると、男の真意をはかるように見た。男は慌ててぶ厚い封筒を取り出すと、崇嗣さんに渡した。
「二度目はないぞ」
崇嗣さんは男の胸に拳を当てると、マルの手を引いたままその場を去った。
家に着くなり、崇嗣さんは何かを警戒するように部屋のあちこちを調べると、やがて満足したように緊張を解いた。そのようすを、マルは玄関に立ったまま、じっと眺めていた。
「さっきの、どうやってわかった?」
「あの人から、ずっと微かなモーター音が聞こえていたんです。録音しているのだと気づいたら、なぜだろうと不思議に思いました」
新しいこの身体は、人間の耳には届かないような小さな音でも聞くことができる。
「そうか」
崇嗣さんはコートを脱ぐと、コンロの火をつけ、その上に薬缶を乗せた。ガリガリと音をさせながら、崇嗣さんがコーヒーミルで豆を挽いている。芳ばしい匂いが部屋中に満ちた。彼が何を考えているのかわからず、マルは不安が募った。
「あの」
勇気を出してマルが話しかけようとしたときだった。
「飲むか?」
崇嗣さんは自分のカップに口をつけると、もう片方のカップをマルに差し出した。
フードを外し、崇嗣さんに近づく。カップを両手で受け取ると、崇嗣さんは自分のカップを持ったまま、リビングのソファに腰を下ろした。ソファで丸くなっていたヴィオラが迷惑そうに片目を開けたが、再び目をつむった。
「約束を破って申し訳ありませんでした」
「録音だって? 何の言いがかりだよ」
男は誤魔化すように笑うが、崇嗣さんの表情は厳しいままだ。どういうことだ、と促されて、マルは違和感の理由を述べる。
「微かですが、ノイズが聞こえます。おそらくはコートの右側……、そう、内ポケットに何か録音器具があります」
崇嗣さんは男の内ポケットに手を突っ込むと、小型のマイクロフォンを引き出した。
「俺をはめようとしたのか?」
「ち、違う、あんたをはめようだなんて……!」
地面に落としたマイクロフォンを踏み潰し、マルの手を掴んでその場から立ち去ろうとした崇嗣さんの後を、男は慌てたように追う。
「待ってくれ! ほんの出来心で、あんたをはめる気なんてなかったんだよ!」
崇嗣さんは足を止めると、男の真意をはかるように見た。男は慌ててぶ厚い封筒を取り出すと、崇嗣さんに渡した。
「二度目はないぞ」
崇嗣さんは男の胸に拳を当てると、マルの手を引いたままその場を去った。
家に着くなり、崇嗣さんは何かを警戒するように部屋のあちこちを調べると、やがて満足したように緊張を解いた。そのようすを、マルは玄関に立ったまま、じっと眺めていた。
「さっきの、どうやってわかった?」
「あの人から、ずっと微かなモーター音が聞こえていたんです。録音しているのだと気づいたら、なぜだろうと不思議に思いました」
新しいこの身体は、人間の耳には届かないような小さな音でも聞くことができる。
「そうか」
崇嗣さんはコートを脱ぐと、コンロの火をつけ、その上に薬缶を乗せた。ガリガリと音をさせながら、崇嗣さんがコーヒーミルで豆を挽いている。芳ばしい匂いが部屋中に満ちた。彼が何を考えているのかわからず、マルは不安が募った。
「あの」
勇気を出してマルが話しかけようとしたときだった。
「飲むか?」
崇嗣さんは自分のカップに口をつけると、もう片方のカップをマルに差し出した。
フードを外し、崇嗣さんに近づく。カップを両手で受け取ると、崇嗣さんは自分のカップを持ったまま、リビングのソファに腰を下ろした。ソファで丸くなっていたヴィオラが迷惑そうに片目を開けたが、再び目をつむった。
「約束を破って申し訳ありませんでした」
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