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本編
11.おやすみ
しおりを挟むお腹がだいぶ目立ち始めた頃、僕はウサギとお茶会を楽しんでいた。
赤ちゃんが風邪をひいたら大変だからと、庭に出る禁止された。僕も赤ちゃんが可哀想だから、不満はない。
なのに、ウィリアム様は庭を見ながらお茶が飲めるようにと、二重窓を出窓に作り替えてくれた。
ウサギが出窓にちょこんと腰掛け、僕はその前に置かれた安楽椅子に座る。
ティーセットを準備してくれたウサギが、近寄ってきて、ブランケットをくれた。
「忘れてた。ありがとう」
ウサギの用意してくれたのは、たんぽぽのお茶だった。香ばしい香りはウィリアム様が時々飲んでるコーヒーみたい。少し苦いからクッキーとよく合う。
今日は甘い薔薇のジャムが乗ったクッキー。ふわりと香る薔薇がとても好き。
「ウサギさんも食べて。薔薇ジャムのクッキー、美味しいよ。僕、ジャムの中で薔薇ジャムが一番好き」
苺も林檎もオレンジも好きだけど。ウィリアム様が僕のために作ってくれたジャムだから。
「赤ちゃんも好きになってくれるかな」
お腹をさすりながら語りかけると、大好きな香りに包まれた。
「この子もきっと好きになる。私とリヒトの子だからな」
振り返ると、大好きな顔がそこにある。
「ウィル様、おかえりなさい」
「ただいま。今日も泣かずに待っていられたな」
乾いた目元にちゅっとキスを送られる。お返しに僕もウィリアム様の頬に口付けた。
「赤ちゃんとウサギさんがいてくれるので、大丈夫です」
「そうか」
安心したようにウィリアム様は微笑んでくれたけど。僕は正直に打ち明けることにした。
「でも、あの、本当は少し寂しいです」
ウィリアム様の袖を握ると、その手をそっと外され、指を絡めて握り直される。
「私も会えなくて寂しかった」
「ウィル様……」
名前を呼ぶと、優しいキスが唇に落ちた。ぽかぽかとぬるま湯に包まれるような穏やかな唇。柔らかで湿った感触が心地良い。
意識がゆっくりと蕩けていく。
「眠くなった?」
「はい……」
「運んであげるから、寝なさい」
「まだ……一緒に……」
「リヒトが寝てもそばにいる」
「うれし、い……」
「おやすみ、リヒト」
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