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つながりを求めた(6)
しおりを挟む目が覚めると、自分の部屋のベッドで寝ていた。
あれ、夢でも見てたか。確かバイト行って、コンビニ行って、そこからの記憶が曖昧だ。なんか変なことを考えていたのは覚えてるけど……。きっと、家に着くなりそのまま寝てしまったんだろう。
キッチンのある廊下の電気がついているのに気づく。
消しに行こうと起きあがろうとしたが、体が驚くほど重くて叶わなかった。
これ……熱あるな。そう悟ったところで動くのを諦める。
すると廊下の方から、物音が聞こえてきてピクリと固まる。泥棒かと思ったが、すぐに部屋の扉が開いて不覚にも安心させられた。
「なんで柳瀬さんがいるんですか……」
「起きたのか。なら水飲んで、食べられるようなら何か腹に入れるか」
「あの俺」
「お前軽く熱あるぞ。俺の家の前に倒れてた」
なんか食べられるもの買ってくる、と言って英司は出て行ってしまう。
家の前に倒れてたって俺、家までもうすぐなのに、そんなところで力尽きていたのか。ということは、英司がここまで運んでくれたことになる。……後で謝ろう。
渡された水をコクコクと飲み干すと、手を伸ばしてテーブルにコップを置いた。
少しふわふわする頭で考える。
あんなに避けていた英司と、こうしてまた呆気なく会うことになるなんて。じわじわ実感が湧いてきた。
これで何日ぶりだろうか。また会わないようにするの失敗したな…俺っていつもこうだ。しかも、盛大に迷惑かけてるし。…やっぱり後で謝ろう。
さっき出ていく前、起き上がれないのがわかっていたように、英司は千秋の上半身だけ起こした。随分慣れている感じだった。
取られるまで気づかなかったけど、おでこには、濡れタオルも乗せられていた。
英司は思ったよりもすぐ帰ってきた。
「軽い熱だけど、食べやすいやつな。おかゆとあったかい方のうどん、どっちがいい?もし食欲ないなら、ゼリーとか色々買ってきたから」
「ちょ、ちょっと待ってください」
「あ?」
既視感がある。ぶら下げられているパンパンのスーパーの袋。目に入った必要そうなものは全部買ってきた、みたいな感じがありありと伝わってくる。
ただの軽い熱なのに、そこまで甲斐甲斐しく看病してもらうのは何だか申し訳ない。でも、正直助かっているのはたしかだ。
「いや……ありがとうございます。おかゆでお願いします」
「わかった。これ、横に置いとけ」
袋から出したスポーツドリンクを渡される。
もしかして……そっちの袋全部飲み物なのか?だとしたらすごい重かっただろうし、やっぱり絶対飲みきれる気がしない。
英司がつくってくれた、ほかほかと湯気漂うおかゆを掬って、ふーふーと少し冷ましてから口に含む。
「食べられるか?」
「はい……おいしいです」
「さすがにお粥くらいはつくれるからな」
別に何も言ってないのに、と思いながら温かいおかゆをゆっくり口に運んでいく。
「あの、ここまでしてくださってありがとうございました。運んでもらったり……色々迷惑、かけてすいません」
「そんなこと考えんな。迷惑なわけないだろ」
最後に会った時あんな感じで別れたのに、こうして面倒を見てくれる英司は優しい。
おかゆが食べ終わると、食器を持って英司はキッチンの方へ消えていく。
横に置いたスポーツドリンクを少し飲むと、こうなったら早く回復しようと布団を首まで上げて横になる。
かちゃかちゃと食器の音が聞こえてきて、それが心地いい。
柳瀬さん終わったら帰っちゃうのかな…と目は閉じつつ眠れずにいると、食器を洗い終えた英司が部屋に戻ってきた気配を感じた。
ゆっくり目を開けて姿を捉える。
「なんだ寝てなかったのか。でも眠そうだな」
「柳瀬さん」
「ん?」
ベッドのそばまでやってきて枕元にしゃがみ込むと、千秋の話を聞くために近づいた。
そんなに近いと、風邪を移りますよ。先にそう言おうとしたけど、やっぱり出てこなかった。
「……怒ってますか?」
その代わり、熱に浮かされるままにするりと出てきた言葉。にもかかわらず少し声が震えた。
「……悪い。体調崩したの、俺のせいだよな」
千秋の質問には答えず、少し罰の悪そうな顔をした。
いや…そうだけどそうじゃないというか。結局は自業自得、というか。とにかく英司の責任ではない。
顔をふるふると横に振ると、英司が優しく笑った。
「……怒ってねえよ。でも、俺はお前のこと傷つけた。あのとき結構焦ってて…本当ごめん」
「傷ついたというか、ショックだっただけで……」
「余計ひどいな、俺」
「いやショックってのは自分にっていうか、とにかく、俺は傷ついてないんです……でも……」
もう文脈がグダグダだ。自分でも何言っているのかわからない。熱がなくたって、こんな俺の心情説明できる気しない。
なのに、普段なら言わないことを、ぽろぽろと言ってしまう。
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