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白木は武藤にそれ以上のことはしなかった。それが幸いなことなのか、武藤には白木の気まぐれにしか思えなかった。武藤自身、自分がこの世にいらないものとして考えていたのかも。それは遠い過去の記憶として消していたことだ。自分でも言った当時のことを思い出せない。
ただ、自分のしたことが重大な過失だと思っている。祐樹を殺した犯人は、武藤なのだ。あのとき、武藤が祐樹に助けを求めなければ、そんなことにはならなかったと考えている。武藤はあのときを思い出すたびに、そう考えていた。
人は慣れるということがある。そんな自分にも慣れて当たり前になって、それが異常であることを忘れる。武藤の見ている世界、自分は存在してはいけないこと、それはいじめの体験からと、祐樹に助けたことによって、記憶を強化された。その心の傷が武藤を人に混じることをさせなかった。
弱虫なのかも。と武藤は自分をいつも思う。勇気を出して、やっても、裏目にでる。祐樹を助けられたのか、自分がただの愛玩になっただけなのではと思うときもある。自分のしていることは正しかったのか、考えて窮屈な気持ちになる。自分は間違った存在なのではないかと思いを強化していくようだった。
せめて、祐樹の状態がわかればいいと武藤は考えていた。そこに自分はいなくてもいいと考えていたとき、自分に小さな違和感があった。そうではないと叫んでいる自分がいた。武藤はそれを無視した。ものすごい勢いで祐樹に会いたいことだけを意識していた。
布団の中で武藤は目を閉じた。さっさと眠ってしまうことにする。例えば、それが悪夢でも、時間が経過してくれる。誰も自分の存在がしていいと言われなかった。それは武藤自身も、そのうちの一人と気がついていなかった。
武藤は明かりが消えていることに気がついた。畳のい草の匂いが強く、武藤はようやく落ち着いてきたところだ。窓ガラスから月が見える。もうそんな時間になったのかと考えると、ときとは恐ろしいと武藤は考えていた。
年取るにつれ、時間の過ぎることの早さに戸惑う。一人だと余計だ。そこに子どもを加えれば、ときは早くなる。しかし、それだけ、充実した気持ちにさせるだろう。それが武藤にはわからない上、多分一生それを手に入れることは無理なんだろうと思う。武藤が手に入れてしまうには、人と暮らすということ、誰かと共に生きる生活だ。自分が病気のように、化け物と会話をしている姿を妻にも子どもにも見せられない。はたからみれば異質な行動で、理解できまい。祐樹を生かすには白木が必要だ。
もし、武藤が心も強かったから、多分、きっと、そのまま人と関わっていたのだろう。友人のように。占い師をしていたかも。
そこまで考えるとうさんくさいなと武藤は考えていた。
まぶたがゆっくりと下がってくる。誰かの体温を感じる。誰かが言っている。遠い昔を思い出させる。母がこうして一緒に眠ってくれた。怖いものはない、あなたの心が作っていると。そうなのだ、と自分に言い聞かせても、化け物達は武藤を追ってきたときもある。話しかけてきたものもいた。
怖いものは怖いと武藤は当時の自分がいることを知っている。その頃にはなにをいっても、大人は信じてくれないとわかっていたから、心を閉ざした。しかし、助けてくれるものがいた。
その日も、化け物と人の区別がつかなくて、一人で帰ってきたときだ。化け物と人が話しているのを見た。そのとき、怖かったはずなのに、衝撃だった。
「大丈夫かい?」
「そいつ、もしかして、俺の正体を見破っているのでは?」
「あー、なるほど。おびえているね」
女なのに男のような口調で話す人だった。明らかに女性の格好をしているのに、口調だけは男だった。そういう人もたまにいると考えている武藤に「困ったことがあったら、この名刺を鏡にかざしてね」と女は名刺を武藤に無理やり渡してきた。
武藤は女にわけのわからないことを言われた、変な集団なのかもと武藤は考えていた。
「いいね」
それが武藤と組織とのつながりができたできごとだった。武藤は報告だけして、社員が調査するというものだ。最初は助けてもらう方が多かった。しかし、武藤もなんとか白木と付き合ううちに、化け物が寄り付くこともなくなった。それで、自分の居場所も見つけられたのだと勝手に思っていた。
雨が降っている。しとしと雨で霧も出ている。武藤は窓の外を見ていた。武藤は外に出たいと考えていた。白木に頼むことを考えて、愛玩だからか、やっぱりだめなのかもと考えていた。雨は窓に水滴をつけて、細長くなっているものが多い。こんもりと盛り上がった水の粒はまるで、画像ツールで作ってしまったようだが、じっと見ていると、一粒一粒、風に吹かれて増えていた。それは音もなく、あらかじめ決められた場所のように、ガラスに水滴はふんわりとつく。それが面白くて武藤は童心に戻ったような気持ちになった。
「外に出たいか?」
いきなり白木が問いかけた。武藤の目がキラリと光ったのか、わからないが、自分でも「ああ」と答えていた。武藤は素直に言った自分に驚いた。家の中にいるのはうんざりなのだ。暇だ。それに考えてくないことばかり、考えている。雨でもいい。外に出て行きたいと考えているのだ。
「白木」
「礼を言うのか?」
「なんで、おまえの許可が必要なんだ?」
「なぜって、危ないからだよ」
そんなことだろうかと武藤は考えていた。もしかしたら、重要なことを隠しているのではないかと武藤は思いついた。
「おまえ、俺になにか隠していないか?」
「隠すもなにも。ここは化け物の世界だから」
武藤は言われてようやく気がついた。今まで、安全だったから、失念していたのか。それとも記憶が化け物の世界に擦り合わせていくのだろうか。武藤の顔は青ざめていた。
「べつに変なことではない。当たり前の変化だ」
まるで不思議ではないと言いたげな白木に武藤はいらだちを覚えていた。武藤は怒り出せばよかったと考えていた。それができれば、した。それは無理だった。恐怖が先に立ち、自分ではないことにおびえていた。自分が自分で変わる。それは流動的な自分に意識する。環境でここまで変わるのだろうかと武藤は考えていた。恐ろしいと武藤は考えていた。
「なに、すぐにそれも忘れるさ」
白木の言葉に余計に追い打ちをかけられたような気分に武藤はなった。このまま、化け物の世界に順応していくのだろうか。
「白木、俺がいない世界を見たい」
「なんで」
「祐樹に会いたい」
「傷つくぞ」
「それでもいい。そうしたら、きっと俺は」
化け物の世界で安心して暮らせるはずだろうと武藤は考えていた。それが自分でも意外だった。武藤は考えたのだろう。自分を納得させる方法がないと。
結局、武藤は区切りを必要もしたのかも。愛玩であることは変わらない。変えられるものではないのだ。契約した。口約束でも、契約は契約。悪魔か、なにかと思うが、化け物だって悪魔のような部分を出すというのが近代の化け物たちにもある。いつまでも若い気持ちでいても、意味がない。自分はしっかりと歳をとっている。それを受け入れて、前に進むしかない。
無意識のうちに武藤は考えていた。自分のいない世界の祐樹を見ていないと、安心しないのだろう。きっと、大丈夫だと思える。祐樹は強い。武藤のような孤独な生き物ではないと思う。そう言い聞かせている。
「おまえはなにを思う?」
「なにをって別に?」
「悲しいだろう?」
「悲しいって」
そんなつもりではないと武藤は言った。
「俺は悲しいと思う。武藤のいない世界はつつがなく動いているから」
「それは」
「見てきた。腹が立った、俺は」
「そうか」
「結局、俺は武藤を傷つける」
「そんなことはないよ。白木。おまえは悲しんでくれている」
「これも偽物の感情かも」
「そんなことはない」
武藤には白木の言葉がなぜ「偽物の感情」という言葉を使うのが不思議だった。
「人間は偽物の感情を使う」
「えっ」
「笑っているのに、悲しいとか。泣いてウソをつく」
「本音と建て前とか?」
「違う。もっと無意識にウソをつく」
武藤には言わんとしていることがわからなかった。無意識にウソをつくとはどういうことだろうか。それを武藤が理解したら、変わるのだろうか。そこまで考えてみたが武藤にはどういう意味を指摘したいのか、わからない。
「人間はうそつきだ」
「そうではない人間もいるだろう?」
うそつきと呼ばれていい気分もしない武藤がいた。自分もうそつきと含まれているせいか、ムキになっているのではと武藤は考えてみたが、そこまで気がついたみたものも、そこまで思考が発展していかなかった。
「でも、武藤はうそつきだ」
「ウソをついたことはない」
「もういいんだ。気がついていないのに、指摘しても意味がない。それに悪いことではないと俺は思う」
「なんで、指摘するんだよ」
「それは、指摘すれば意識するからだ」
「そんな単純なものではない」
無意識を意識するのは大変である。それは武藤にはわかっている。だから、それを意識しようとする本もあるのだ。無意識をコントロールするべきではないのではとなぜか武藤は意地悪なことを思っていた。
意識してしまえば、コントロールしてしまおうとするのではないだろうか。
ただ、自分のしたことが重大な過失だと思っている。祐樹を殺した犯人は、武藤なのだ。あのとき、武藤が祐樹に助けを求めなければ、そんなことにはならなかったと考えている。武藤はあのときを思い出すたびに、そう考えていた。
人は慣れるということがある。そんな自分にも慣れて当たり前になって、それが異常であることを忘れる。武藤の見ている世界、自分は存在してはいけないこと、それはいじめの体験からと、祐樹に助けたことによって、記憶を強化された。その心の傷が武藤を人に混じることをさせなかった。
弱虫なのかも。と武藤は自分をいつも思う。勇気を出して、やっても、裏目にでる。祐樹を助けられたのか、自分がただの愛玩になっただけなのではと思うときもある。自分のしていることは正しかったのか、考えて窮屈な気持ちになる。自分は間違った存在なのではないかと思いを強化していくようだった。
せめて、祐樹の状態がわかればいいと武藤は考えていた。そこに自分はいなくてもいいと考えていたとき、自分に小さな違和感があった。そうではないと叫んでいる自分がいた。武藤はそれを無視した。ものすごい勢いで祐樹に会いたいことだけを意識していた。
布団の中で武藤は目を閉じた。さっさと眠ってしまうことにする。例えば、それが悪夢でも、時間が経過してくれる。誰も自分の存在がしていいと言われなかった。それは武藤自身も、そのうちの一人と気がついていなかった。
武藤は明かりが消えていることに気がついた。畳のい草の匂いが強く、武藤はようやく落ち着いてきたところだ。窓ガラスから月が見える。もうそんな時間になったのかと考えると、ときとは恐ろしいと武藤は考えていた。
年取るにつれ、時間の過ぎることの早さに戸惑う。一人だと余計だ。そこに子どもを加えれば、ときは早くなる。しかし、それだけ、充実した気持ちにさせるだろう。それが武藤にはわからない上、多分一生それを手に入れることは無理なんだろうと思う。武藤が手に入れてしまうには、人と暮らすということ、誰かと共に生きる生活だ。自分が病気のように、化け物と会話をしている姿を妻にも子どもにも見せられない。はたからみれば異質な行動で、理解できまい。祐樹を生かすには白木が必要だ。
もし、武藤が心も強かったから、多分、きっと、そのまま人と関わっていたのだろう。友人のように。占い師をしていたかも。
そこまで考えるとうさんくさいなと武藤は考えていた。
まぶたがゆっくりと下がってくる。誰かの体温を感じる。誰かが言っている。遠い昔を思い出させる。母がこうして一緒に眠ってくれた。怖いものはない、あなたの心が作っていると。そうなのだ、と自分に言い聞かせても、化け物達は武藤を追ってきたときもある。話しかけてきたものもいた。
怖いものは怖いと武藤は当時の自分がいることを知っている。その頃にはなにをいっても、大人は信じてくれないとわかっていたから、心を閉ざした。しかし、助けてくれるものがいた。
その日も、化け物と人の区別がつかなくて、一人で帰ってきたときだ。化け物と人が話しているのを見た。そのとき、怖かったはずなのに、衝撃だった。
「大丈夫かい?」
「そいつ、もしかして、俺の正体を見破っているのでは?」
「あー、なるほど。おびえているね」
女なのに男のような口調で話す人だった。明らかに女性の格好をしているのに、口調だけは男だった。そういう人もたまにいると考えている武藤に「困ったことがあったら、この名刺を鏡にかざしてね」と女は名刺を武藤に無理やり渡してきた。
武藤は女にわけのわからないことを言われた、変な集団なのかもと武藤は考えていた。
「いいね」
それが武藤と組織とのつながりができたできごとだった。武藤は報告だけして、社員が調査するというものだ。最初は助けてもらう方が多かった。しかし、武藤もなんとか白木と付き合ううちに、化け物が寄り付くこともなくなった。それで、自分の居場所も見つけられたのだと勝手に思っていた。
雨が降っている。しとしと雨で霧も出ている。武藤は窓の外を見ていた。武藤は外に出たいと考えていた。白木に頼むことを考えて、愛玩だからか、やっぱりだめなのかもと考えていた。雨は窓に水滴をつけて、細長くなっているものが多い。こんもりと盛り上がった水の粒はまるで、画像ツールで作ってしまったようだが、じっと見ていると、一粒一粒、風に吹かれて増えていた。それは音もなく、あらかじめ決められた場所のように、ガラスに水滴はふんわりとつく。それが面白くて武藤は童心に戻ったような気持ちになった。
「外に出たいか?」
いきなり白木が問いかけた。武藤の目がキラリと光ったのか、わからないが、自分でも「ああ」と答えていた。武藤は素直に言った自分に驚いた。家の中にいるのはうんざりなのだ。暇だ。それに考えてくないことばかり、考えている。雨でもいい。外に出て行きたいと考えているのだ。
「白木」
「礼を言うのか?」
「なんで、おまえの許可が必要なんだ?」
「なぜって、危ないからだよ」
そんなことだろうかと武藤は考えていた。もしかしたら、重要なことを隠しているのではないかと武藤は思いついた。
「おまえ、俺になにか隠していないか?」
「隠すもなにも。ここは化け物の世界だから」
武藤は言われてようやく気がついた。今まで、安全だったから、失念していたのか。それとも記憶が化け物の世界に擦り合わせていくのだろうか。武藤の顔は青ざめていた。
「べつに変なことではない。当たり前の変化だ」
まるで不思議ではないと言いたげな白木に武藤はいらだちを覚えていた。武藤は怒り出せばよかったと考えていた。それができれば、した。それは無理だった。恐怖が先に立ち、自分ではないことにおびえていた。自分が自分で変わる。それは流動的な自分に意識する。環境でここまで変わるのだろうかと武藤は考えていた。恐ろしいと武藤は考えていた。
「なに、すぐにそれも忘れるさ」
白木の言葉に余計に追い打ちをかけられたような気分に武藤はなった。このまま、化け物の世界に順応していくのだろうか。
「白木、俺がいない世界を見たい」
「なんで」
「祐樹に会いたい」
「傷つくぞ」
「それでもいい。そうしたら、きっと俺は」
化け物の世界で安心して暮らせるはずだろうと武藤は考えていた。それが自分でも意外だった。武藤は考えたのだろう。自分を納得させる方法がないと。
結局、武藤は区切りを必要もしたのかも。愛玩であることは変わらない。変えられるものではないのだ。契約した。口約束でも、契約は契約。悪魔か、なにかと思うが、化け物だって悪魔のような部分を出すというのが近代の化け物たちにもある。いつまでも若い気持ちでいても、意味がない。自分はしっかりと歳をとっている。それを受け入れて、前に進むしかない。
無意識のうちに武藤は考えていた。自分のいない世界の祐樹を見ていないと、安心しないのだろう。きっと、大丈夫だと思える。祐樹は強い。武藤のような孤独な生き物ではないと思う。そう言い聞かせている。
「おまえはなにを思う?」
「なにをって別に?」
「悲しいだろう?」
「悲しいって」
そんなつもりではないと武藤は言った。
「俺は悲しいと思う。武藤のいない世界はつつがなく動いているから」
「それは」
「見てきた。腹が立った、俺は」
「そうか」
「結局、俺は武藤を傷つける」
「そんなことはないよ。白木。おまえは悲しんでくれている」
「これも偽物の感情かも」
「そんなことはない」
武藤には白木の言葉がなぜ「偽物の感情」という言葉を使うのが不思議だった。
「人間は偽物の感情を使う」
「えっ」
「笑っているのに、悲しいとか。泣いてウソをつく」
「本音と建て前とか?」
「違う。もっと無意識にウソをつく」
武藤には言わんとしていることがわからなかった。無意識にウソをつくとはどういうことだろうか。それを武藤が理解したら、変わるのだろうか。そこまで考えてみたが武藤にはどういう意味を指摘したいのか、わからない。
「人間はうそつきだ」
「そうではない人間もいるだろう?」
うそつきと呼ばれていい気分もしない武藤がいた。自分もうそつきと含まれているせいか、ムキになっているのではと武藤は考えてみたが、そこまで気がついたみたものも、そこまで思考が発展していかなかった。
「でも、武藤はうそつきだ」
「ウソをついたことはない」
「もういいんだ。気がついていないのに、指摘しても意味がない。それに悪いことではないと俺は思う」
「なんで、指摘するんだよ」
「それは、指摘すれば意識するからだ」
「そんな単純なものではない」
無意識を意識するのは大変である。それは武藤にはわかっている。だから、それを意識しようとする本もあるのだ。無意識をコントロールするべきではないのではとなぜか武藤は意地悪なことを思っていた。
意識してしまえば、コントロールしてしまおうとするのではないだろうか。
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