白木と武藤

一条 しいな

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 紙が用意されている。胸から言葉が出てくるようだと武藤は思った。真っ白の紙ではなく、デコボコとした紙である。パソコンとは違う。本当に真っ白な紙だ。武藤はまず、どんな物語にしようかと考えていた。
 武藤は静かにペンを進ませる。インクが紙に染み込む。カリッとペン先が引っかかる。作っていくのは楽しい。でも怖い。もう直しをするかも。寒くはないはずなのに、体が震えていた。武藤はペンを動かす。インクが染みるのだ。
 それが楽しいのだ。今はなにも考えない。ただアイデアを書いていく。それだけなのに、胸がときめく。初めて会う物語。武藤は美しくない文字を書いていく。インクの色は黒だ。
 武藤は白木が美しい原稿用意を持ってくると思っていた。美しい文字をかけないから、別にいいだろうと楽観視をする武藤もまたいて、ただひたすらにメモを書く。
「どうだ?」
「原稿用紙がいい」
 武藤はそうつぶやいた。後ろから白木の声が聞こえたからだ。武藤は背中から闇が深まっていることに気がついた。いつの間に夜になったのだろうとそう不思議に思っていると、白木が近寄ってきた。
「抱きしめたら、どうする?」
「えっ、いや、びっくりする」
「頬にキスをする」
「やめろ」
 白木の言葉に対して武藤は嫌悪があったはず、それなのにどこか楽しんでいる自分がいると気がつかないふりをする。どこかで違和感を味わう。それは心の奥底で、今は小説のことを考えるべきだ。
「武藤はなにを考えている?」
「外に出たい。人と話したい」
「いいか。会いに行くか?」
「えっ」
 振り返る武藤に白木が近づいてくる。それにおびえている武藤がいて、それを表に出してくない。武藤は自分がなぜ白木におびえているか、考える前に白木の手が武藤の視界をさえぎる。
「おまえの目を食って、俺だけのものにしたら、怒るか?」
「怒る」
 そうだなと白木は笑った。声も上げず、吐いた息で武藤はわかった。静かだった。
 武藤は目を開けると、知らない建物だった。武藤は驚いた。真奈美がいたからだ。誰かと電話している。武藤を返すことを話している。それが頼もしいが、実現するのか、わからない。
「真奈美さん?」
 そのまま、武藤は消えた。
 いや、白木が抱きしめている。そのまま、黙っている。
「これでも、おまえは一人か」
「なぜ、彼女が」
「それは、おまえがほしいから」
「彼女は、彼女の人生がある」
「おまえには、おまえの人生がある」
 武藤の目が白木の手に向けられた。そのまま、目を閉じていた。

 キスをする。唇に唇を重ねる。それだけなのに、体が熱かった。なぜか、わからないが、武藤の体が発情期のように、白木を求めていた。目をつぶり、ただ唇に柔らかい感触を楽しむ。感触を楽しむように、唇を柔からかくかまれて、何度も確かめるように唇を重ねる。それは何度も。お互いの存在を確かめるように。
「白木、もう」
 いいだろうと言ったすきに唇の中を入っていく意思を持った舌。昔だったら、かみきってやろうと思うが、そんな気力もない。ただ、受け入れる。不思議な気持ちだった。武藤はなぜこの化け物を受け入れようとしているのか。それを考えていた。
 多分、流されたんだろう。人間、わかりやすい方に流れていくのだ。武藤には白木しかいない。白木は武藤しか知らない。それが安心するんだ。お互いしか知らない。そんなことはないのに武藤はわかっている。
「白木、俺の前はいなかったか?」
「いない」
「そんなことはないだろう」
「おまえを救いに来た」
「な、わけ。だって姫にも会ったことがあるだろう?」
「ここは時空がゆがんでいる」
「ときがまっすぐに流れない」
 それはどういう意味だと武藤は問いかける前に武藤の尻をなでる手があった。
「まず慣らそう」
 白木が言った言葉がわからず、武藤はなにをと言う前にたらいがおいてある。そうして、武藤の尻の穴にかん腸をする。あまりにも鮮やかな動きなのて、なにをされたのか、わからない。しばらくして腹痛が襲いかかる。
「トイレ」
「間に合わない」
 ここでしろというのかと思うと、羞恥心でいっぱいになる。白木はため息をついて、武藤をお姫様抱っこをして、そのままトイレにいた。
「なんで早く言わない」
 トイレに出た後で武藤が言った。強制的にフンを出されて、水分がほしくなった。水を渡す白木から奪うように飲む武藤に「俺の手がフンまみれになっていいのか」と言われた。お互いに気持ち悪いということがわかる。
「俺がかん腸をする」
「武藤はいいのか?」
 俺でと白木が言った。不安げな声だった。それで白木も不安ということが伝わった。
「いい。おまえがいい」
「自暴自棄になっていないか?」
「わかった。こうしてみると、祐樹は俺の憧れ。憧れを壊したくない」
「ずっとそうやって思いつづけるのか」
「流されて恋することもある。人間はいろんな形がある」
「俺に恋しているのか?」
「俺にはおまえしかいない」
「浅海がいる」
 浅海と言われた。祐樹以外で親しくなった友人だ。武藤は考えていた。考えていたが「白木を見て、触ってほしいと思った」と言ってみた。白木の顔がびっくりしているようで目が泳ぐ。なにかあるのかと思った武藤に「俺の心を変えたのか」と問いかけていた。
「いや、多分だが、ずっと抑えられた性欲が爆発したんだなと思う」
「いや、オナニーくらいならやっていたが」
「抑えていたんだ。自分を」
 武藤はしばらく黙っていた。だから、体が性欲に突き動かすのかと思った。
「だったら、女ではないのは?」
「それは知らない」
「まあ、いいか」
 いきなり尻を触られた。びっくりしていると、毛の生えた尻をニコニコと白木は触る。楽しげであり、残虐性を帯びていると武藤は思った。武藤の気持ちなど知らず。そっと、穴の周りをマッサージする。ゾクゾクはしない。ただ、そこは排除するもの。かん腸をしてよかったと思う武藤に白木は「俺のものなんだ」という。
「ふざけるな。俺は俺のものだ」
「へえ。ほしかった。ずっとほしかった」
 へと武藤は声を上げた。尻に生暖かい感触があった。そんなことをしたら、お互いに性病になる。白木は感染症になると言いそうになる。しかし、生温かい舌の感触、柔らかい感触にきゅんと腰が反応する。
 感じてはいけないと、内蔵に近い部分が近い恐怖で背中から快感でゾクゾクする。武藤は自分が変態だと思った。男に尻の穴をなめられて、感じているのだから、それでわかる。きっと武藤は白木で感じているのだろう。そう心を作り替えたのかも、それとも武藤は白木が好きなのか。ずっと一緒にいて、勘違いをしている。
「白木、怖い」
 尻の穴の周りを何回もなめられる。ビクビクと体がおびえている武藤に白木は穴を指でマッサージする。それでゆっくりと入れていく。まず、爪先。違和感がある。気持ち悪いと考えていた。ローションを足しても、違和感や気持ち悪さがある。異物であることは確かだ。早くこの拷問よ、終われと武藤は思う。
「気持ち悪い?」
「変えるつもりか?」
「うん」
「やめろ」
「いい。面倒くさい」
 おい、武藤は慌てていたが、気がつけば、ゾクゾクと背筋から快感のようなしびれを腰から受け取った。美しいと思ったのは、なんだっけと意識をそらそうとした。しかし、腰から勃ちあがっていく気配がある。
 指が美味しくてキュンと内側で存在を確かめる。それが気持ちよく、トロンとした目で武藤は白木を見つめる。
「早くほしい?」
 嫌だったとは言えない。ほしくてたまらない。自分のほしいものが刺激される。奥まで入っている。それが余計に満たされた気持ちにさせる。ドクトクと心臓に血液が送られる音が聞こえる。顔が熱い。そうして、しびれていく。
「白木、やめろ。怖い」
 ハッとした白木がいた。
「戻す」
「はっ?」
 さっきまで感じていた高揚感から、気持ち悪さが戻ってきて、おえと武藤は言った。白木はムスッとした。
「俺がほしいものではない」
「キスしよう」
 白木の目が大きくなり、笑った。
「焦ることもある。ゆっくりすればいいんだろう?」
「ほしい。武藤がほしい」
 白木はキスする。それでいいのにと思っていると顔を寄せて何度も武藤を味わう。
「ごめん」
「暴走するんだ。化け物でも」
 武藤が言うと白木は目をそらす。顔を真っ赤にしている。
「武藤も同じになる」
「そうだな」
 首筋になでられ、武藤の頬をかまれた。加減はされていたが、武藤はびっくりした。
「なんでそんなことをするんだ?」
 やりたいからと言われた。武藤にはさっぱりでわからない。ただ化け物の気が済むなら、してもいいかと考えていた。体がどっと疲れたのも事実、自分に入れてはいけないものを入れられ、気持ち悪さで苦しくなっていたのは確かだ。武藤は目をつぶる。白木も黙っている。
 自己嫌悪が襲ってくる。自分は白木を利用しているだけではないか。白木を利用して満たされないものを満たそうとしているのではないか。祐樹に愛されなかったことを白木に埋めてもらうことばかり考えていないか。武藤はそんなことを思う。違うとは言い切れない。確かにそういう部分があるから、そんなことを思う。武藤は苦しくなった。
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