婚約破棄されたら、王様の専属抱き枕に任命されました!

アイリス

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ウィリスの闇

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ここは国王の執務室。
座り心地の良い椅子に腰掛け、黒い笑みを浮かべる国王ウィリスの前には、一人の覆面の男が跪いている。
彼は、代々の国王の手足となって働く名もなき影一族の現当主だ。

「で、あのマヌケな元婚約者…クリフと言ったか。アイツはどうしてるんだ」

「は。貧乏暮らしに弱音ばかり吐いていますが、妻にしっかりと手綱を握られているようです」

「へえ…。リリーは無事に手に入れたことだし、もう監視はつけなくていいだろう。お前の仕事は完璧だった。ご苦労だったな」

「お褒めに預かり、光栄にございます」

影は音もなく執務室を後にする。
残ったのは国王と宰相、ただ2人だけである。


「お前にも随分世話になったな」

「とんでもございません。アメリアという少女が存外によい働きをしてくれました」

「分かっていると思うが、リリーには決して漏らすなよ」

「御意に」

宰相が慇懃に頭を下げる。


実はクリフの婚約破棄に関しては、ウィリスが密かに手を回した結果でもあった。
愛しいリリーを手に入れるため、影にクリフについて探らせていたのだ。

分かったことはたくさんあった。
実はクリフの女遊びが非常に激しいこと
クリフと現伯爵の浪費癖のせいで、伯爵家の財政は火の車であること
伯爵家は水源の権利だけ手に入れ、リリーを大切にするつもりなどまるでないこと
そして、伯爵家の近くで花売りをしているアメリアが、クリフに想いを募らせていたこと

あとはクリフに結婚を不安に思わせる言葉を吹き込み、同時にアメリアを焚きつけるだけだった。
それだけで簡単に堕落したのだから、やはりクリフには浮気者の素質があったのだろう。

クリフに関する資料を手に取ったウィリスは、勢いよくそれを暖炉に投げ捨てる。
紙の束はすぐに大きな炎に包まれ、あっけなく灰になった。



「陛下、ひとつ伺いたいのですが」

「なんだ」

ウィリスから目で促され、宰相が少しためらってから口を開く。

「魔女の呪いなど、陛下のお力であれば簡単に解けたのではありませんか?」

「…ああ、そんなことか」

革張りの椅子に腰掛けたウィリスは足を組む。
宰相の言う通り、あの程度の呪いであればウィリスの力でどうとでも出来た。
しかし、その時に気付いたのだ。中和魔法を持っているリリーを呼び出す良い口実になると。
思った通り、彼女は震えながらも同じベッドに入ってくれた。

再びやって来た魔女の前にリリーが飛び出したのは予想外だったが、身を呈して庇われるのは存外悪くなかった。
リリーからの深い愛を感じ取れたからである。

ちなみにあの魔女は、リリーを少しでも傷つけた刑として魔力を全て取り上げ、暗い森の奥に捨ててやった。
生き残れるかはあの女次第だ。



宰相も辞去し、執務室で一人きりになったウィリスは、時間停止の術をかけている小さな野花の束を取り出す。
10年前、リリーを助けた際にお礼としてもらったものだ。

「リリー、君は私が一生大切にすると誓うよ」

愛しい人の顔を思い浮かべ、ウィリスは満足げな表情で呟いた。


(了)
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