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その後・ウィリス様の作戦勝ち
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ここは立派な王宮の中の、国王ウィリスの執務室である。
リリーは今、ウィリスに別れの挨拶をするためにここを訪れていた。
「リリー、本当に帰ってしまうの?」
ウィリスの逞しい腕に抱き込まれ、リリーはドキドキしながら頬を染めた。
毎晩一緒のベッドに入っていたというのに、こうして昼間抱きしめられるのはまだ慣れない。
「…はい。輿入れの準備のため、一度帰って来るようにと両親が…」
リリーは今まで、ウィリス専属の侍女として王宮にいた。
しかしこれから盛大な結婚式を挙げ、王妃として王宮に上がることになるのだ。
そのためには専用の教育も、ウェディングドレスの製作も、嫁入り道具の選定も必要になる。
まずは一度王宮勤めをやめ、実家に帰って来るようにと両親から連絡がきたのである。
「じゃあ次はいつ会える?明日も来てくれるかい?」
「それは…」
明日は体のサイズを測ったり、これからお世話になる家庭教師との顔合わせがあったりと大忙しだ。ウィリスに会いに来る時間はない。
せっかく大好きな人と結ばれたのに、一緒に過ごす時間が減る結果になるとは皮肉なものだ。
口ごもったリリーを見て、ウィリスは美しい顔を悲しげに歪ませた。
「来てくれないのか…?一緒にいたいと思っているのは、私だけなんだな」
「そんなっ!ウィリス様とお会いできないなんて、私もとても寂しいのですっ!信じてください!」
リリーだって、大好きなウィリスとずっと一緒にいたい。
これからは1人で寝なければいけないと思うと、苦しくて胸が張り裂けそうだ。
だがその気持ちをウィリスに誤解されているようで、リリーは彼を見上げて一生懸命叫ぶ。
「ウィリス様と離れたくないのです…。でも、やらなければいけないことがたくさんあって…。私、どうしたら…っ」
リリーの瞳にじわりと涙が浮かんだ。
ウィリスと結婚するには、これは避けて通れない道なのだ。
しゅんと俯いたリリーの額に、ウィリスがキスをひとつ落とす。
そして満面の笑みである提案をした。
「ではここに家庭教師を呼ぼう」
「…え?」
リリーはぽかんとウィリスを見上げる。
「ドレスだって、王宮勤めの針子を使えばいい。もしも君の実家から持って来たいものがあるなら、誰か人を遣って持って来させよう。そして夜はまた私のベッドにおいで?」
「で、ですが…」
もしもそうできるならとても嬉しい。
だが、王宮に住みながら輿入れの準備をした王妃など聞いたことがない。
ためらうリリーの前で、ウィリスがまた少し寂しそうな表情を浮かべる。
「リリー、もう君とは一時も離れていたくないんだ。魔女の呪いは解けたが、君がいないと今夜も眠れそうにない。ね?ずっとここにいてくれないかい?」
「ウィリス様…っ」
こんなに心のこもった愛の言葉を受け取っていいのだろうか。
リリーの心の奥の奥まで見透かすようなウィリスの瞳に見つめられ、リリーは熱に浮かされたたように「はい」と返事をした。
「リリー、嬉しいよ」
またウィリスに抱きしめられ、リリーもそっと彼の背中に手を回す。
彼にこんなに愛されて、自分は世界で一番幸せな花嫁だと思った。
リリーは今、ウィリスに別れの挨拶をするためにここを訪れていた。
「リリー、本当に帰ってしまうの?」
ウィリスの逞しい腕に抱き込まれ、リリーはドキドキしながら頬を染めた。
毎晩一緒のベッドに入っていたというのに、こうして昼間抱きしめられるのはまだ慣れない。
「…はい。輿入れの準備のため、一度帰って来るようにと両親が…」
リリーは今まで、ウィリス専属の侍女として王宮にいた。
しかしこれから盛大な結婚式を挙げ、王妃として王宮に上がることになるのだ。
そのためには専用の教育も、ウェディングドレスの製作も、嫁入り道具の選定も必要になる。
まずは一度王宮勤めをやめ、実家に帰って来るようにと両親から連絡がきたのである。
「じゃあ次はいつ会える?明日も来てくれるかい?」
「それは…」
明日は体のサイズを測ったり、これからお世話になる家庭教師との顔合わせがあったりと大忙しだ。ウィリスに会いに来る時間はない。
せっかく大好きな人と結ばれたのに、一緒に過ごす時間が減る結果になるとは皮肉なものだ。
口ごもったリリーを見て、ウィリスは美しい顔を悲しげに歪ませた。
「来てくれないのか…?一緒にいたいと思っているのは、私だけなんだな」
「そんなっ!ウィリス様とお会いできないなんて、私もとても寂しいのですっ!信じてください!」
リリーだって、大好きなウィリスとずっと一緒にいたい。
これからは1人で寝なければいけないと思うと、苦しくて胸が張り裂けそうだ。
だがその気持ちをウィリスに誤解されているようで、リリーは彼を見上げて一生懸命叫ぶ。
「ウィリス様と離れたくないのです…。でも、やらなければいけないことがたくさんあって…。私、どうしたら…っ」
リリーの瞳にじわりと涙が浮かんだ。
ウィリスと結婚するには、これは避けて通れない道なのだ。
しゅんと俯いたリリーの額に、ウィリスがキスをひとつ落とす。
そして満面の笑みである提案をした。
「ではここに家庭教師を呼ぼう」
「…え?」
リリーはぽかんとウィリスを見上げる。
「ドレスだって、王宮勤めの針子を使えばいい。もしも君の実家から持って来たいものがあるなら、誰か人を遣って持って来させよう。そして夜はまた私のベッドにおいで?」
「で、ですが…」
もしもそうできるならとても嬉しい。
だが、王宮に住みながら輿入れの準備をした王妃など聞いたことがない。
ためらうリリーの前で、ウィリスがまた少し寂しそうな表情を浮かべる。
「リリー、もう君とは一時も離れていたくないんだ。魔女の呪いは解けたが、君がいないと今夜も眠れそうにない。ね?ずっとここにいてくれないかい?」
「ウィリス様…っ」
こんなに心のこもった愛の言葉を受け取っていいのだろうか。
リリーの心の奥の奥まで見透かすようなウィリスの瞳に見つめられ、リリーは熱に浮かされたたように「はい」と返事をした。
「リリー、嬉しいよ」
またウィリスに抱きしめられ、リリーもそっと彼の背中に手を回す。
彼にこんなに愛されて、自分は世界で一番幸せな花嫁だと思った。
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ホント良いヤンデレ具合でした。
本人に気付かれることなく囲い込む話大好きです。そして溺愛!
楽しいお話ありがとうございました。
すっごく面白かったです
特にウィリスのヤンデレ具合が好みで良かったです
ヤンデレがすごく好きなのでニヤニヤで
ヤンデレ具合が完璧すぎてこんな人に愛されてみたいと思うぐらい面白かったです
書き方とかすごく上手くて面白かったです
ハッピーエンドと思いきや最後の最後で……!
主人公にとって良かったのかどうか分かりませんが、非常に完成度の高い作品であることは間違いないと思いました。
感想ありがとうございます!
完成度が高いなんて…!><
私にはもったいないくらいのお言葉をいただいてとても嬉しいです。
知らぬが仏、とはちょっと違うかもしれませんが、主人公はウィリス様の黒さを知らないので、主人公にとっては円満ハッピーエンドになれたと思っております☆