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2章 亜人の国
19話 スパルタカスの小剣
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「また会えたな」
スパルタカスが不敵な笑みを浮かべながら言った。彼の両手は空いている。持っていた小剣はアルタイア兵たちの喉に突き刺さっていた。
「俺の名はスパルタカス」
スパルタカスは腰ベルトから小剣を引き抜いた。その形状は半月刀。トラキア剣闘士用の小剣だ。
「お前を殺す者の名だ」
瞬間、俺は後方へと飛び退った。が、スパルタカスたちの方が早かった。獣人たちが踏み台となり、ヤツは高く飛んできた。
「あぁ」
ラヴェンナの悲痛な叫び声と共に浮遊が消失する。スパルタカスの魔法無効化領域に入ってしまったのだ。
スパルタカスに組み付かれ、俺は下の大枝に叩きつけられた。
馬乗りになったヤツはすぐに小剣を振るってきた。痛みに呻く暇もない。咄嗟に剣で受けとめるが、衝撃で折れてしまった。第二の剣撃を受ける前にヤツの体を蹴り飛ばす。バランスが崩れた隙に這い出し、幹の方に向かって一気に枝を駆け抜ける。
背後から獣の咆哮が響く。チラッと見やればスパルタカスだけでなく他の獣人たちも迫っていた。
「リサンドラ!」
俺の呼び掛けに火の精霊が現れる。
「魔法は使えるか!?」
彼女は首を振った。まだ無効化領域から抜け出せていない。いやむしろスパルタカスはさらに距離を詰めている。
俺は剣を後ろに放った。金属音が響く。この隙にさらに加速した。太くて丈夫な枝ではあるが、いつ滑り転んでもおかしくはない。それでも全力で走った。
「リサンドラ!」
精霊が天高く手を上げると、そこから火球が飛び出した。
これでエルフたちに報せることができた。後はとにかくここから離脱しなければ、武器がない以上どうしようもない。
風魔法を使って飛び立とうとした時、前方からユリアの声がした。
「伏せてッ!!」
幹の広場にユリアと数十人のエルフたちが弓を構えていた。
俺が前に飛び伏せた同時に矢が放たれた。
頭上を飛び去る矢の音の後、獣人たちの叫び声が上がる。
矢を受けた獣人たちがバタバタと枝から地上へと落ちて行った。しかし、その中にスパルタカスはいない。
慌てて周り見回した。ヤツは下の枝を駆けていた。枝にいた不運なエルフが切り殺された。矢を受ける直前に飛び移っていたのだろう。
俺がスパルタカスを目で追っている間にもユリアたちは矢を放って獣人たちを地上へと突き落としていた。
獣人たちもスパルタカス同様別の枝へと飛び移り始めた。
俺は枝の上を転がり落ちた。
「ラヴェンナ!」
風の魔法により空に浮かぶ。
広場ではユリアが他のエルフたちに指示していた。
「気を付けろ。スパルタカスが下の枝からそっちに向かっているぞ」
ユリアはコクリと頷きながら弓を弾く。
「あなたは?」
俺の方を見ながらも彼女は矢を放ち、迫りくる獣人の眉間に命中させた。
「ヤツらには通常の武器じゃ太刀打ちできない。だから対抗できる武器を取ってくる」
「そんなモノがあるの?」
「ある。2人の兵士を犠牲にしてしまったがな」
枝を渡って3人の獣人たちが広場に現れた。
「ラヴェンナ!」
精霊が巻き起こした突風により、獣人たちは広場から吹き飛ばされていった。
「ホント便利よね、その力」
「あぁしかし、万能でもないってことを今実感させられている最中だよ」
精霊魔法は通じない。通常の武器ではすぐ壊されてしまう。
鬼人衆スパルタカスを倒すには、ヤツ自身の武器を使わなければ……
スパルタカスが不敵な笑みを浮かべながら言った。彼の両手は空いている。持っていた小剣はアルタイア兵たちの喉に突き刺さっていた。
「俺の名はスパルタカス」
スパルタカスは腰ベルトから小剣を引き抜いた。その形状は半月刀。トラキア剣闘士用の小剣だ。
「お前を殺す者の名だ」
瞬間、俺は後方へと飛び退った。が、スパルタカスたちの方が早かった。獣人たちが踏み台となり、ヤツは高く飛んできた。
「あぁ」
ラヴェンナの悲痛な叫び声と共に浮遊が消失する。スパルタカスの魔法無効化領域に入ってしまったのだ。
スパルタカスに組み付かれ、俺は下の大枝に叩きつけられた。
馬乗りになったヤツはすぐに小剣を振るってきた。痛みに呻く暇もない。咄嗟に剣で受けとめるが、衝撃で折れてしまった。第二の剣撃を受ける前にヤツの体を蹴り飛ばす。バランスが崩れた隙に這い出し、幹の方に向かって一気に枝を駆け抜ける。
背後から獣の咆哮が響く。チラッと見やればスパルタカスだけでなく他の獣人たちも迫っていた。
「リサンドラ!」
俺の呼び掛けに火の精霊が現れる。
「魔法は使えるか!?」
彼女は首を振った。まだ無効化領域から抜け出せていない。いやむしろスパルタカスはさらに距離を詰めている。
俺は剣を後ろに放った。金属音が響く。この隙にさらに加速した。太くて丈夫な枝ではあるが、いつ滑り転んでもおかしくはない。それでも全力で走った。
「リサンドラ!」
精霊が天高く手を上げると、そこから火球が飛び出した。
これでエルフたちに報せることができた。後はとにかくここから離脱しなければ、武器がない以上どうしようもない。
風魔法を使って飛び立とうとした時、前方からユリアの声がした。
「伏せてッ!!」
幹の広場にユリアと数十人のエルフたちが弓を構えていた。
俺が前に飛び伏せた同時に矢が放たれた。
頭上を飛び去る矢の音の後、獣人たちの叫び声が上がる。
矢を受けた獣人たちがバタバタと枝から地上へと落ちて行った。しかし、その中にスパルタカスはいない。
慌てて周り見回した。ヤツは下の枝を駆けていた。枝にいた不運なエルフが切り殺された。矢を受ける直前に飛び移っていたのだろう。
俺がスパルタカスを目で追っている間にもユリアたちは矢を放って獣人たちを地上へと突き落としていた。
獣人たちもスパルタカス同様別の枝へと飛び移り始めた。
俺は枝の上を転がり落ちた。
「ラヴェンナ!」
風の魔法により空に浮かぶ。
広場ではユリアが他のエルフたちに指示していた。
「気を付けろ。スパルタカスが下の枝からそっちに向かっているぞ」
ユリアはコクリと頷きながら弓を弾く。
「あなたは?」
俺の方を見ながらも彼女は矢を放ち、迫りくる獣人の眉間に命中させた。
「ヤツらには通常の武器じゃ太刀打ちできない。だから対抗できる武器を取ってくる」
「そんなモノがあるの?」
「ある。2人の兵士を犠牲にしてしまったがな」
枝を渡って3人の獣人たちが広場に現れた。
「ラヴェンナ!」
精霊が巻き起こした突風により、獣人たちは広場から吹き飛ばされていった。
「ホント便利よね、その力」
「あぁしかし、万能でもないってことを今実感させられている最中だよ」
精霊魔法は通じない。通常の武器ではすぐ壊されてしまう。
鬼人衆スパルタカスを倒すには、ヤツ自身の武器を使わなければ……
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