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58話 賢者の石
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「アイトさん、Nanazonの使い方はこのミニナナがお教えしますからね!」
肩に乗るナナさんが胸を張る。
それは頼もしい限りだ。
それはいいとして、僕や黒猫がデーモン・ディメンションを貸し与えられたということはーー
「イルヴァーナさんもシシーから?」
そう問いかけるとイルヴァーナは首を振る。
「私のデーモン・ディメンションの対価は血ですの。人間のイルヴァーナじゃすぐに枯れ果ててしまいますわ」
ミニシシーが説明してくれた。
「その代わり、シシーからは新しくとっておきの魔剣をもらったよ」
イルヴァーナは自らのボックス・ディメンションから銀色の剣の柄を覗かせた。
なるほど、血の代価は確かに人間には負荷が大き過ぎる。魔神だからこその代価だったんだ。
では、僕の場合は?
ナナさんの代価はお金だ。僕はそんなに持っていないぞ。
「ふ・み・た・お・し」
ミニナナさんが小声でそう言って、親指をグッと立てている。
いや、絶対ダメでしょ。
僕は黒猫の方を見る。
「アイツらならお前に金だしてくれるんじゃないか?」
黒猫が僕の後方を示す。
振り返って見ると、僕らとは少し距離を置いた所に天使たちの姿があった。その中心にいる天使は、地上監視センターでセンター長と呼ばれていた男だった。
「なんでここに彼らが!?」
僕は思わず身構えた。
「安心しろ。今のアイツらには俺たちに対する敵意はないだろうぜ」
黒猫はミニミミを指す。
「撃ち落とされたシャトルの中にいたコイツらをミミがひそかに助けてたんだよ」
思い返せば、ミミはドラゴンに乗ってシャトルの残骸を吹き飛ばしていた。その時に助けていたのか。
「おい、お前らもこっちに来いよ!」
黒猫が天使たちに呼びかける。
「ここからが本題。イースの野郎を倒す方法のことだ」
その黒猫の言葉に、それまで大木に寄りかかっていた亜人王がむっくりと起き上がる。
「やっとかよ。待ちわびたぞ。で、どんな方法なんだ?」
黒猫は僕ら一同を見回した。
「魔神王を倒す方法は1つ。本物の賢者の石を使うんだ」
天使のセンター長が驚きの声を上げる。
「なに!? まだこの世界にあるというのか!? あの石が!」
その問い掛けに黒猫は力強く頷いた。
「ちょっと待って。本物の賢者の石って何のこと? 話についていけないわ」
亜人王の娘クイーナが戸惑った表情で割って入る。
僕も同じだ。今まで僕らは紛い物の賢者の石を見てきた。それとは別に本物の賢者の石が存在していたのか?
「あぁ、まぁいきなりじゃ戸惑うよな。ちゃんと説明するよ。そもそも、あの魔神王は本物の賢者の石によって生み出されたんだぜ」
あの魔神王が!?
僕だけじゃない。その場にいる者たちのほとんどが黒猫の話に驚いている。
「事の始まりは、賢者の石がこの世界の外側から飛来した時のことだ。この国のどこかに石は落ちた。そしてそこにいた何か……それは人間だったかもしれないし、亜人やモンスター、あるいは植物や鉱物だったかもしれん……とにかく石の近くにたまたまあったソレが影響を受けて進化した。それがあの魔神王だ」
黒猫の言葉を受けて、センター長が大きく頷いた。
「その通りだ。賢者の石には無機、有機に関わらず進化させる作用がある。我々も研究の過程で同様のモノを作ろうとしたが、上手くいかなかった」
センター長が言っているのは、あの紛い物の賢者の石のことだろう。
あれ? と言うことは……
「千年王や百年王も、普通の動物を進化させて作り出したんですか?」
僕が問いかけるとセンター長は頷いた。
「その研究とやらの為に私たちは苦しんできたんだぞ!」
イルヴァーナが語気を強める。
確かに百年王によって王国は荒れていたし、千年王には少なくない数の人々が犠牲になった。
「全てはあの魔神王を封印し続ける為だったのだ。ヤツが目覚めれば世界が蹂躙される!」
と、そこでクイーナが遠慮がちに手を挙げる。
「ちょっといい? 私たち亜人族には世界を脅かす厄災の言い伝えがあるわ。今までは千年王のことかと思っていたけど、本当は魔神王のことだったのかも」
その言葉に亜人王を同意する。
「俺もそう思うぜ。で、大昔に現れた魔神王はどうやって封印したんだ? 本物の賢者の石を使ってか?」
黒猫は首を横に振って否定する。
「違う。その時はこの天使たちと、アルゴン・クリプトンという男が戦い、辛うじて封印したらしい」
アルゴン・クリプトン!?
これまでの旅で彼の所有物を何個か見てきた。思えばここまでの道のり、彼の軌跡を辿っていたように思う。
その彼が魔神王を封印しただって?
「アルゴン・クリプトンも賢者の石と同じく世界の外からやって来たんだ……実は、この俺もそうなんだよ」
黒猫はそう言った。
「この世界の外には、数えきれない程の異世界が存在しているんだよ」
肩に乗るナナさんが胸を張る。
それは頼もしい限りだ。
それはいいとして、僕や黒猫がデーモン・ディメンションを貸し与えられたということはーー
「イルヴァーナさんもシシーから?」
そう問いかけるとイルヴァーナは首を振る。
「私のデーモン・ディメンションの対価は血ですの。人間のイルヴァーナじゃすぐに枯れ果ててしまいますわ」
ミニシシーが説明してくれた。
「その代わり、シシーからは新しくとっておきの魔剣をもらったよ」
イルヴァーナは自らのボックス・ディメンションから銀色の剣の柄を覗かせた。
なるほど、血の代価は確かに人間には負荷が大き過ぎる。魔神だからこその代価だったんだ。
では、僕の場合は?
ナナさんの代価はお金だ。僕はそんなに持っていないぞ。
「ふ・み・た・お・し」
ミニナナさんが小声でそう言って、親指をグッと立てている。
いや、絶対ダメでしょ。
僕は黒猫の方を見る。
「アイツらならお前に金だしてくれるんじゃないか?」
黒猫が僕の後方を示す。
振り返って見ると、僕らとは少し距離を置いた所に天使たちの姿があった。その中心にいる天使は、地上監視センターでセンター長と呼ばれていた男だった。
「なんでここに彼らが!?」
僕は思わず身構えた。
「安心しろ。今のアイツらには俺たちに対する敵意はないだろうぜ」
黒猫はミニミミを指す。
「撃ち落とされたシャトルの中にいたコイツらをミミがひそかに助けてたんだよ」
思い返せば、ミミはドラゴンに乗ってシャトルの残骸を吹き飛ばしていた。その時に助けていたのか。
「おい、お前らもこっちに来いよ!」
黒猫が天使たちに呼びかける。
「ここからが本題。イースの野郎を倒す方法のことだ」
その黒猫の言葉に、それまで大木に寄りかかっていた亜人王がむっくりと起き上がる。
「やっとかよ。待ちわびたぞ。で、どんな方法なんだ?」
黒猫は僕ら一同を見回した。
「魔神王を倒す方法は1つ。本物の賢者の石を使うんだ」
天使のセンター長が驚きの声を上げる。
「なに!? まだこの世界にあるというのか!? あの石が!」
その問い掛けに黒猫は力強く頷いた。
「ちょっと待って。本物の賢者の石って何のこと? 話についていけないわ」
亜人王の娘クイーナが戸惑った表情で割って入る。
僕も同じだ。今まで僕らは紛い物の賢者の石を見てきた。それとは別に本物の賢者の石が存在していたのか?
「あぁ、まぁいきなりじゃ戸惑うよな。ちゃんと説明するよ。そもそも、あの魔神王は本物の賢者の石によって生み出されたんだぜ」
あの魔神王が!?
僕だけじゃない。その場にいる者たちのほとんどが黒猫の話に驚いている。
「事の始まりは、賢者の石がこの世界の外側から飛来した時のことだ。この国のどこかに石は落ちた。そしてそこにいた何か……それは人間だったかもしれないし、亜人やモンスター、あるいは植物や鉱物だったかもしれん……とにかく石の近くにたまたまあったソレが影響を受けて進化した。それがあの魔神王だ」
黒猫の言葉を受けて、センター長が大きく頷いた。
「その通りだ。賢者の石には無機、有機に関わらず進化させる作用がある。我々も研究の過程で同様のモノを作ろうとしたが、上手くいかなかった」
センター長が言っているのは、あの紛い物の賢者の石のことだろう。
あれ? と言うことは……
「千年王や百年王も、普通の動物を進化させて作り出したんですか?」
僕が問いかけるとセンター長は頷いた。
「その研究とやらの為に私たちは苦しんできたんだぞ!」
イルヴァーナが語気を強める。
確かに百年王によって王国は荒れていたし、千年王には少なくない数の人々が犠牲になった。
「全てはあの魔神王を封印し続ける為だったのだ。ヤツが目覚めれば世界が蹂躙される!」
と、そこでクイーナが遠慮がちに手を挙げる。
「ちょっといい? 私たち亜人族には世界を脅かす厄災の言い伝えがあるわ。今までは千年王のことかと思っていたけど、本当は魔神王のことだったのかも」
その言葉に亜人王を同意する。
「俺もそう思うぜ。で、大昔に現れた魔神王はどうやって封印したんだ? 本物の賢者の石を使ってか?」
黒猫は首を横に振って否定する。
「違う。その時はこの天使たちと、アルゴン・クリプトンという男が戦い、辛うじて封印したらしい」
アルゴン・クリプトン!?
これまでの旅で彼の所有物を何個か見てきた。思えばここまでの道のり、彼の軌跡を辿っていたように思う。
その彼が魔神王を封印しただって?
「アルゴン・クリプトンも賢者の石と同じく世界の外からやって来たんだ……実は、この俺もそうなんだよ」
黒猫はそう言った。
「この世界の外には、数えきれない程の異世界が存在しているんだよ」
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