元カレと異世界に飛ばされたんだが。〜俺とあいつの異世界探訪機〜

うさぎ

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異世界とりっぷ

1.ここ、どこ。

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「な、な、何処だここォ!?」

  真昼間の森の中に、俺の叫び声が虚しく反響した。──目を開けたらここに居た。信じてもらえないかもしれないが、本当なんだ。    眩い光に包まれたと思って目を閉じた。次の瞬間には鬱蒼とした森の中。何じゃこりゃ、瞬間移動かよ!?
  幸い、俺は一人では無かった。つか、こんな意味不明な状況にたった一人で放り込まれたら流石の俺でも絶望しちゃうって。
  混乱する俺の斜め右後ろには男が立っている。この状況になる前までは口をきくのも嫌だったのに、今となっては居るだけマシだ。俺は男に話しかけた。

「な、なあ!犀川ってば!こ、ここ何処だ!?俺たち、店に居たよな!?」

  当の犀川は、ぽかんと大口を開けて宙を見つめているばかりで、俺の声なんて届いていないようだった。ダメだこいつ。
  パニックになりそうになる思考を抑えるため、俺はここに至るまでのことを必死に思い出していた。


---------

  俺は確か、居酒屋にいたんだ。ボランティアサークルとは名ばかりの集まりで、新入生歓迎会のため、新しい出会いがあるかもなんて胸を高鳴らせつつ、俺は酒をあおっていた。
  あの子可愛いな…いや、隣の子もタイプだ…なんて横目でチラチラと窺いつつ飲む酒の美味さときたら。──俺は歓迎会を快く楽しんでいたのに、それを奴がぶち壊したんだ。
  

  歓迎会も中盤になって場も盛り上がってきたころ、女子たちがきゃあきゃあと黄色い声をあげ始めた。何事かと振り向いた先に、奴は立っていた。

「あれ?波多野?」
「げっ、犀川…!?」

  居酒屋の入口に立って顔を覗かせていたのは、犀川快さいかわかいだった。俺いわく、今最も会いたくない喋りたくないランキング一位の男である。
  あまりの動揺に、俺は思わず立ち上がっていた。

「な、何でここに…」
「何でって…友達と飲みにきたんだけど」
「何だとぉ…」

  たしかに、犀川の背後には数人の男たちが見える。大方、大学の友人だろう。犀川御一行はどかどかと居酒屋へ入店してきて、瞬く間に席を確保してしまったのだ。
  しくじった…。俺は一人頭を抱えた。もう既に、サークルの目ざとい女子たちは犀川に意味ありげな視線を送っている。楽しかったはずの飲みの席に、不穏な空気が流れ出す。そして、俺の不安は現実のものになってしまったのだった。



「やだ~快くんってば~それ本当?」
「あはは、まあね」
「すご~い!」

  両脇を可愛い女の子に挟まれる犀川を見て、俺は奥歯をギリギリと鳴らした。犀川の一味は、店にやってきてから直ぐに若者のノリでサークルの面々と打ち解け、今では両者入り乱れて飲んでいる。
  特に犀川は女子に大人気で、絶えずサークルメンバーの接待を受けている状況だ。

  だから嫌だったのに……!!!!

  犀川と顔を合わせてから浮かんだ不安が実現してしまった。女子の関心が犀川に総取りされ、俺は一人寂しく飲む。最悪の状況だ。
  俺は犀川をギッと睨みつけていた。睨みつけすぎて目が痛い。デレデレしやがって。
  俺の目力が凄すぎたのか、犀川がふとこちらを見た。まともに視線がかちあう。

  まさかじっと見返されるとは思わなくて動揺するが、ここで目を逸らしたら負けのような気がして、俺は視線を合わせ続けた。もう、引くに引けない状況だったんだ。
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