1 / 12
異世界とりっぷ
1.ここ、どこ。
しおりを挟む「な、な、何処だここォ!?」
真昼間の森の中に、俺の叫び声が虚しく反響した。──目を開けたらここに居た。信じてもらえないかもしれないが、本当なんだ。 眩い光に包まれたと思って目を閉じた。次の瞬間には鬱蒼とした森の中。何じゃこりゃ、瞬間移動かよ!?
幸い、俺は一人では無かった。つか、こんな意味不明な状況にたった一人で放り込まれたら流石の俺でも絶望しちゃうって。
混乱する俺の斜め右後ろには男が立っている。この状況になる前までは口をきくのも嫌だったのに、今となっては居るだけマシだ。俺は男に話しかけた。
「な、なあ!犀川ってば!こ、ここ何処だ!?俺たち、店に居たよな!?」
当の犀川は、ぽかんと大口を開けて宙を見つめているばかりで、俺の声なんて届いていないようだった。ダメだこいつ。
パニックになりそうになる思考を抑えるため、俺はここに至るまでのことを必死に思い出していた。
---------
俺は確か、居酒屋にいたんだ。ボランティアサークルとは名ばかりの集まりで、新入生歓迎会のため、新しい出会いがあるかもなんて胸を高鳴らせつつ、俺は酒をあおっていた。
あの子可愛いな…いや、隣の子もタイプだ…なんて横目でチラチラと窺いつつ飲む酒の美味さときたら。──俺は歓迎会を快く楽しんでいたのに、それを奴がぶち壊したんだ。
歓迎会も中盤になって場も盛り上がってきたころ、女子たちがきゃあきゃあと黄色い声をあげ始めた。何事かと振り向いた先に、奴は立っていた。
「あれ?波多野?」
「げっ、犀川…!?」
居酒屋の入口に立って顔を覗かせていたのは、犀川快だった。俺いわく、今最も会いたくない喋りたくないランキング一位の男である。
あまりの動揺に、俺は思わず立ち上がっていた。
「な、何でここに…」
「何でって…友達と飲みにきたんだけど」
「何だとぉ…」
たしかに、犀川の背後には数人の男たちが見える。大方、大学の友人だろう。犀川御一行はどかどかと居酒屋へ入店してきて、瞬く間に席を確保してしまったのだ。
しくじった…。俺は一人頭を抱えた。もう既に、サークルの目ざとい女子たちは犀川に意味ありげな視線を送っている。楽しかったはずの飲みの席に、不穏な空気が流れ出す。そして、俺の不安は現実のものになってしまったのだった。
*
「やだ~快くんってば~それ本当?」
「あはは、まあね」
「すご~い!」
両脇を可愛い女の子に挟まれる犀川を見て、俺は奥歯をギリギリと鳴らした。犀川の一味は、店にやってきてから直ぐに若者のノリでサークルの面々と打ち解け、今では両者入り乱れて飲んでいる。
特に犀川は女子に大人気で、絶えずサークルメンバーの接待を受けている状況だ。
だから嫌だったのに……!!!!
犀川と顔を合わせてから浮かんだ不安が実現してしまった。女子の関心が犀川に総取りされ、俺は一人寂しく飲む。最悪の状況だ。
俺は犀川をギッと睨みつけていた。睨みつけすぎて目が痛い。デレデレしやがって。
俺の目力が凄すぎたのか、犀川がふとこちらを見た。まともに視線がかちあう。
まさかじっと見返されるとは思わなくて動揺するが、ここで目を逸らしたら負けのような気がして、俺は視線を合わせ続けた。もう、引くに引けない状況だったんだ。
0
あなたにおすすめの小説
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています
柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。
酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。
性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。
そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。
離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。
姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。
冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟
今度こそ、本当の恋をしよう。
アルファのアイツが勃起不全だって言ったの誰だよ!?
モト
BL
中学の頃から一緒のアルファが勃起不全だと噂が流れた。おいおい。それって本当かよ。あんな完璧なアルファが勃起不全とかありえねぇって。
平凡モブのオメガが油断して美味しくいただかれる話。ラブコメ。
ムーンライトノベルズにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる