元カレと異世界に飛ばされたんだが。〜俺とあいつの異世界探訪機〜

うさぎ

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異世界とりっぷ

6.魔法

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  エドの話を聴き終わったあと、俺はじっとしていることが出来ず、小屋を飛び出した。小屋の周りには森が広がっていて、頭上を鳥のような生き物が飛んでいく。
  異世界?地球じゃない?何だそれ、ふざけるなよ。エドの話の途中、何度も「ドッキリでした」の看板を手にした誰かが扉を開けて入って来てくれるのを期待した。そんな展開にはならなかった。一体何なんだ?言いようのない怒りが込み上げてくる。

  暫くすると小屋から犀川も出てきて、俺の方へと近づいてくる。

「波多野…大丈夫?」
「…大丈夫な訳あるか。何なんだよここ」
「……ないてるの?」
「泣いてねえよ!」

  覗き込まれて、俺は慌てて顔を逸らした。ちょっと心細くて鼻を啜っただけだ。泣いてなんかない。…嘘だ。ちょっと、目尻が濡れてる。

「そっか…。エドが外に出るのはいいけど、あんまり遠くへ行くなって。魔物に出くわすかもしれないから」
「魔物!?」

  聞き捨てならない単語に、俺は思わず聞き返した。

「魔物って…ファンタジー映画に出てくるみたいな…?」

  いかつくてゴツゴツしてて人に危害を加えてくる、あの魔物…?

「さあ…。俺も出会ったことないから分かんないけど。少なくとも、俺たちじゃ太刀打ちできないのは確かだね」
「……お前、なんでそんな平然としてるんだよ」
「え?俺?」

  怖いよ、と犀川は言った。

「怖いよ。怖くないわけないじゃん。でも、こうなったからには泣いてても始まらない。とにかく何とか帰る方法を探さなきゃ。エドも協力してくれるって」
「………帰れるのか」
「調べてみないと分からない。エドも、この世界に取り込まれた異世界人がどう過ごしてるかまでは把握してないみたいだし。でも、部屋が余ってるから調べる間、貸してくれるって。相部屋なんだけど、いいよね?」

  エドが良い人で良かったね。事も無げに言う犀川はやっぱり飄々としていて、いまいち感情が掴めない。俺はまだ気持ちの整理がつかなくて、不安で一杯なのに。

「…そんなに落ち込まないで。そうだ、面白いもの見せてあげる」
「面白いもの…?」

  犀川が着いてこいと言うので、俺たちは小屋へと引き返した。キッチンにはまだエドがいて、ハーブティーを飲んでいる。

「あ、エド。あれ、波多野に見せていい?」
「…好きにしろ」

  案内されたのは、勝手口から出たところにある裏庭だった。小屋の裏手に面しているその場所にはエドが植えたであろう作物があり、自給自足しているというのは本当のようだった。いや、疑っていた訳ではないが。犀川が指したのは、畑に面する小さな池のような場所だ。池と言っても、大きな水溜まりほどのサイズで、藻のせいで表面が濁っている。

「…で?これが何」
「いいから、見てて」

  犀川はおもむろに池に近づいたかと思うと、両手を水面に向かって伸ばし始めた。
  空気が微かに変わっていくのを感じた。始め、何が起きているのか分からなかった。それまで澱んでいた池を取り巻く空気が、少しずつ清浄されていく感じ。
  変わっていく空気と同時に、池の方にも変化が起こっていた。表面を覆いつくしていた藻が、無くなっていく。池が、綺麗になっていく。
  俺は、あんぐりと口を開けていた。


「ね。どう?」

  こちらを見上げてくる犀川の顔には、満面の笑みが浮かんでいた。
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