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異世界とりっぷ
12.ギルド
しおりを挟む時を戻して現在、俺たちはうっかりした女神のせいで日本から南クロエメリカへと飛ばされた。魔物も魔法も何でもござれの世界だ。
しかも相方は元彼の犀川快。俺一人で飛ばされるよりかは何倍もマシだが、異世界へ来たのは犀川が手に入れてしまった能力に一因があるのだという。魔力を持つ者は歪みに吸い寄せられやすいのだとか。この事について、さっき犀川と喧嘩になりかけた。
俺はいわば犀川の巻き添えとして異世界へ飛ばされてしまったのだ。そう抗議すると、犀川は一言。
そんなことあの女神に言え。
犀川を責めきれないのは、件の浄化能力が本人の意志とは関係なく与えられたものだからだ。まさかまさかの女神側のミス。犀川の言うことは正しい。俺たちは日本へ帰還するため、粛々とできることを見つけていくしか道はないのだ。
先日そうそうに頓挫しかけた異世界脱出計画だが、エドの提案によって少し進展が見られた。
場所はやはりキッチン、三人でテーブルを囲み座る中、エドが口火を切った。
*
「え?王都へ?」
「うむ…王都には魔法研究所がある。それに、異世界人のほとんどが王都で暮らしている」
「魔法研究所?」
「国と大魔法師の橋渡し役を担う機関だ。異世界人の研究も行っている。そこへ行けば、分かることも多かろう」
「なるほど……」
犀川は思案するように目を伏せる。長い睫毛の影が顔に落とされた。
「でも、王都へ行くには金が要るんでしょう」
「その件についてだが……。ギルドはどうだ?」
「ギルド?」
俺と犀川が復唱する声が重なった。
……ギルドって、ファンタジー小説とかに出てくる、クエストとか仕事を受注できるやつ?
その問いに答えるように、エドは小さく頷いた。
*
その場所は、森を抜けて30分ほど下った所にあった。そこら一帯は小さな街のように整備されていて、酒場や日用品の店などが点在している。
エドは自給自足の生活を送っているが、時折狩った獲物を売りに来るらしい。市場は思ったより賑わっており、この世界に来てから初めて見る人の数に、俺は謎の興奮を覚えた。
俺が辺りをキョロキョロと見回している間にも、エドと犀川はぐんぐん進んでいくので追いつくのに必死だ。そうして辿り着いたのが、数ある建物の中でも一際大きな「ギルド」であった。
建物内に足を踏み入れると、エドは勝手知ったる様子でカウンターの方へ歩いていく。
「お!エド、久しぶりじゃないか」
「ああ……」
「会えて嬉しいよ。今日の依頼は高報酬なのが揃ってるよ」
「……今日は儂ではなくて、後ろの二人に仕事が欲しい」
エドの言葉に合わせて、受付の男の視線が注がれる。真正面からまともに見られて、居心地が悪い。
「へえ。見たことないツラだな。エド、こちらのお二人さんは?」
「こっちの背の高い方がカイ。隣がユーヤ、異世界人だ」
"異世界人"の単語に、場の空気が少し変わったような気がした。歓談していた人々は一瞬動きを止め、ちらりとこちらを見てくる。小心者の俺なんてビビりまくりだが、犀川は何処吹く風、凛とした表情で正面を見据えている。
「へえ……それは珍しいな。それで、この二人に仕事が欲しいって?」
「ああ。金が入用なんだ。王都を目指してるものでね」
「ほう。それは大金が必要だろうね。だが、彼らは何ができるんだ?右も左も分からない人間においそれと仕事を斡旋することは出来ないね」
「あの……俺、魔法が使えます」
犀川の発言に、とうとうギルド内は完全に静まりかえった。
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