元カレと異世界に飛ばされたんだが。〜俺とあいつの異世界探訪機〜

うさぎ

文字の大きさ
11 / 12
異世界とりっぷ

11.俺たちのこと-②

しおりを挟む



 「いまは違うみたいだけどね。昨日、告白された」
「へ…?」
「断ったよ。確かに美人だし恋人だったら楽しそうだけど…波多野といる方がもっと楽しいもん」
  
  テンションが一気に下がる。「もん」て。子供かよ。
  それに、なんだよその回答は。日野さんに告白された?そして振った理由が、俺と居た方が楽しいから?いい加減にしてくれ。俺は叫び出しそうになった。そうやってお前が思わせぶりな言動をするから、俺はお前から離れられない。期待して、もしかしたらと思ってしまう。
  もう俺の胸を締め付けるような態度はやめてくれ。俺は胸を掻きむしりたい衝動に駆られた。

  ……でもそんなのは俺の一方的な都合で、犀川には関係のないことなのだ。
  俺はテーブルの上の缶を引っつかみ、強引にプルタブを引いた。

「ったく!やってらんねえよ!あーあ、俺もモテたい!彼女欲しい!」

  身も蓋もない叫びだ。半ばヤケクソで、酒を喉に流し込む。こんな醜態でも、犀川の前でなら見られてもいっかと思うほどには心を許していたし。それと同時に恋を諦めてもいた。
   だから、次の発言には度肝を抜かれたのだ。

「俺と付き合えば?」

  犀川は、事も無げにそう提案してきた。








   「は…?ははは、それもいいかもな~。高学歴で将来有望だし、お前の顔好きだし」
「うん。俺も波多野のこと好き」
「おっ、じゃあホントに付き合っちゃうかー?なんて、ははは。ははー…」

  部屋の中で俺だけが笑っていた。その乾いた笑いも、小さくなってフローリングの床に吸い込まれていく。犀川はゆるく笑ってはいるが、あくまで真剣な表情だ。

「え……?なに。マジなの?」
「マジだけど?」
「えええ……」

  マジか。マジなの?言われたことが理解できなかった。冗談だよな?ここは笑い飛ばして流すのが正解だよな?
  笑って誤魔化そうにも、犀川の方は笑っていない。明かりを落とした薄暗い部屋の中でも、犀川の色白な顔だけが白く浮き上がっている。

「な、なんで俺……」

  声が、震えた。多分、身体の方も震えてる。
  自分で言うのも悲しくなるが、平凡を絵に書いたような男だぞ。見た目も十人並、頭脳も運動神経も普通、犀川とは対極のいる人間だ。なんで犀川と仲良くなれたのか不思議になってきた。お前、俺のどんなとこが好きなんだ。自分でも自分の何がいいのかサッパリ分からない。

「好きなところは一杯あるけど……。一番は、一緒にいて安心するとこかな」
「安心……?」
「うん。波多野は裏表がないでしょ。誰にでも平等に接するし、俺におもねったりもしない。そういう人と居るのは、心地がいい」

  頬が熱く火照っていく。
  これはよく出来た夢なんじゃないのか。俺の強すぎる恋心が魅せた、哀しい幻。明日になったらやっぱり冗談でした、って消えてしまう夢。

「俺、波多野が好きだよ。波多野は俺のこと好きじゃないの?」

  ダメ押しの一言で、俺の堤防は決壊した。

「……っおれも、お前のことすきだっ……」

  犀川の部屋に、俺の叫びが響いた。

   ここから、俺たちの恋人関係がスタートしたんだ。
  ……結局、俺は犀川を自分から振ることになってしまうのだけれど。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。 酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。 性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。 そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。 離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。 姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。 冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟 今度こそ、本当の恋をしよう。

【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました

ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。 タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。

処理中です...