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異世界とりっぷ
10.俺たちのこと
しおりを挟む少しだけ、俺たちのことを話そうと思う。見た目も性格も全然違う俺たちが、如何にしてくっつき、そして離れ離れになったのか。
俺たちの付き合いは、アルバイト先に犀川が入ってきたことから始まる。
駅からほど近い、若者が主な客層の小洒落たカフェ。その店で俺はキッチンを、犀川は接客を担当していた。
犀川は目立つ奴だった。そもそも、採用された直後からバイトの女子に連絡先を聞かれまくる犀川、同じ男としては憎たらしいことこの上ない。
スラリと伸びた肢体に、小さな顔。身長は180センチ超えてるって言ってた。神は二物も三物も与える。
ミルクティーみたいな色の、ふわふわした髪と白い肌。少し垂れた優しげな瞳は綺麗なブラウンだ。すっと通った美しい鼻梁に、小さめの唇。
全てが完璧な、お人形みたいな美形の男だ。
近寄り難いくらいの容姿だが、気さくな性格で話してみると面白い。冗談も言えて、気遣いができて、しかも頭の回転も早いときたらモテない訳がないのだ。当初は女子の関心を独り占めする犀川に少なからず嫉妬した俺だが、話しているうちにそんな敵意は跡形もなくなっていった。
同じ年齢だったというのも大きな要因の一つだろうが、俺たちはすぐに意気投合した。
とにかく性格の相性が良かった。打てば響くような関係性は心地よかったし、人気者の犀川を独占する優越感もあった。誘われたら飲みに行き、俺の方も犀川を色々な店へ連れ回した。
俺たちは益々仲良くなり、親友とも呼ぶべき関係性になっていた。
但し、ここで一つだけ問題が出てくる。
────犀川と同じ時間を過ごすうち、俺は彼のことを好きになってしまっていたのだ。
俺は、バイセクシャルだ。気づいた当初は自分に戸惑いを感じたが、それにももう慣れた。どちらかというと好きになるのは女性の方が多いが、好みの男にも劣情を抱く。
……犀川は、俺のタイプど真ん中の人間だった。
教養があって、優しくて何より顔が抜群に良い。好きになるなと言われても無理じゃないか。気づけば、俺は犀川に恋心を抱くようになっていた。
でも、これは叶わない恋だ。引く手あまたの犀川は、勿論モテまくっている。恋人はいないようだったが、明日、彼女ができましたと報告されても全く驚かない。
だから、この気持ちはそっと胸の奥にしまっておく。そもそも、異性愛者であろう犀川に相手にされる訳がないのだ。
半ば諦めかけた想いでも、ふとした瞬間に溢れそうになる。いっそアルバイトをやめて、連絡も絶ってしまえば楽なのかとも思うけど、それは出来ない話だった。
*
その日、俺たちは二人で飲んでいた。場所は犀川のマンション。俺たちは互いの部屋を行き来するまでの仲になっていたのだ。
犀川快という男、大学生にしてファミリー向けのマンションに一人暮らしという悠々自適な暮らしぶり。大学も私立だし、実家が裕福なのだろう。全くもって恵まれた奴だ。これで性格が悪かったら心置き無く嫌いになれるんだが、生憎性格まで良いという隙の無さである。
コンビニで適当に選んだ酒を持ち込んで、スマブラしたりするのはめちゃくちゃ楽しかった。時刻が深夜に差し掛かるころには、盛り上がりも酔いも最高潮に達していた。
恋人の話をしだしたのは、犀川の方だったと思う。あんまり記憶はないけど。
「波多野は…彼女はいないの?」
犀川は酔ってもあまり顔に出ないタイプだ。ここでも俺との違いが出ている。俺は酔うと完全に我を忘れて、意味の分からない言動ばかりしてしまう。犀川の方は、今夜もほんのり顔が赤らんだ程度だった。
さり気ない質問なのに、俺は内心でギクリとしていた。強がって、ぶっきらぼうに答える。
「彼女ぉ?いるわけないだろ。どこかの誰かさんと違って、俺はモテないからなぁっ」
「日野さんが波多野のことカッコイイって言ってたよ」
「ぅえっ!?まじで!?」
「うん。だいぶ前だけど」
衝撃の言葉に、思わず俺は姿勢を正した。犀川が言う日野さんとはアルバイトの先輩だ。彼女が?俺を?
舞い上がった俺の心は、次の犀川の発言で瞬時に地に落とされた。
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