私と化け狐と世界

氷菜

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3巻

危機

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私は理解が追いつかなかった。

私*「し、死ぬって・・・まさか・・・」
月音「・・・・・」

私は微笑しながら月音を見た。しかし、月音は表情を変えずに私だけを見つめていた。

私*「ほ、本当に・・・?」
月音「・・・残念ながら本当です」
私*「・・・・・」

何も答えることが出来なかった。そしてそれと同時に、頭の中が真っ白になる。そんな中、月音は私に質問を投げかけた。

月音「もう一度質問です。本当にあなたは妖術を使えないのですか?」
私*「・・・・・」

私はすぐに答えることが出来なかった。私自身は妖術を使う事はほぼ不可能だが、私のもう一つの人格は妖術を使うことが出来る。しかも、かなり高度な妖術、つまりは参ノ術を使ったらしい。月音が言う事には、参ノ術を使うことの出来る者でも、使うと身体全体に莫大な負担が掛かり、一度の戦闘で使えるのは三回が限度らしい。それ以上は、どうなるかは誰も予想ができないらしい。

私*「そ、そんな危険な妖術を・・・使える訳が・・・」
月音「・・・そうですか」

私の返答を聞いた月音は、ゆっくりと立ち上がりドアへ歩いていった。

私*「月音・・・さん・・・?」
月音「・・・ここに居てください」
私*「・・・えっ?」
月音「・・・絶対ですよ」

月音はそう言い残すと、部屋を出ていった。その瞬間・・・

──ドスンッ!──

私*「っ!?な、何!?」

急に地震が起き、天井からポロポロと木の破片が落ちてきた。しかし、地震はすぐに止み静寂が訪れた。

私*「な、何だったの・・・」

突然の事で私は状況を理解出来ず、パニックになっていた。しかし、そんな状況だったが私は違和感を覚えた。

私*「・・・・・」

──静かだ・・・結構大きな地震だったと思うんだけど・・・

そう、あまりにも静かすぎる。いくら、落ち着いていたって言っても、先程のようなかなりの大きさの地震にしては静かすぎるのだ。そんな事を考えていると、ふと、月音が部屋を出ていく時に私に残した言葉を思い出し、私の頭に嫌な予感が過ぎる。

私*「まさか・・・」
?*「・・・みーつけたー」
私*「っ!?」

私が頭の中で整理をしようとした時、頭上から突然声が聞こえた。咄嗟に見ると、そこには・・・

私*「シ、シレ・・・!?」
シレ「久しぶりねぇ、梨由ちゃーん?」

シレが寝ている私と向かい合わせになるようにフワフワと浮いていた。

シレ「元気そうで何よりね」
私*「くっ・・・」

シレはそう言うと、ゆっくりと移動し私の寝ているベッドの隣にゆっくりと床に足を付けた。

私*「何で・・・月音は・・・」
シレ「あぁ、あの狐なら風夜が相手をしているはずよ」
私*「なっ!?」

──月音さんが・・・

シレ「それより・・・」
私*「っ!?」
シレ「自分の心配をした方がいいんじゃないの?」

私の周りには、いつの間にかに小型のナイフが何本も添えられていた。

シレ「フフフ・・・」
私*「くっ・・・」

──まずい・・・まだ回復出来ていないのに・・・

シレ「・・・選ばせてあげる」
私*「・・・・・」
シレ「『私達に付いてくる』か『ここで私に殺される』か・・・」
私*「っ!!」
シレ「好きな方を選ぶといいわ」

私は迷った。私にとっては悪人から出された選択肢なんて答えるなんて出来ない。しかし、答えなかったらここで殺されるだろう。それなら、シレ達に付いていった方が私は死なずに済むかもしれないし、月音達にも迷惑が掛からない。それなら・・・

私*「私は・・・」
月音「梨由さん!!」
私*「っ!」

選択肢の答えを言おうとした時、部屋の扉が一気に開き月音が息を切らしながら入ってきた。

私*「月音さん・・・!」
シレ「・・・チッ」
月音「梨由さん、あなたはその質問に答える必要はありません!」
私*「で、でも・・・」
月音「シレ!梨由さんから離れてください!『弐ノ術・豪雨刀』!」

月音はそう言うと、シレに向かって妖術を使った。すると、シレに強い風が吹き強い雨が降り注いだ。

シレ「何?こんなので私を倒そうと・・・っ!」
月音「・・・・・」

シレは何かを感じ取り、後ろに大きく飛んだ。すると、先程までシレが居た場所に風が刀のように鋭くなり、雨は針のように尖ったまま嵐のように降り注いだ。そして、私の周りに添えられていたナイフは、粒子となって消えていった。

シレ「流石は化け狐ね・・・」
月音「私を甘く見ないでください。それと、これ以上梨由さんに近づいたら・・・」
シレ「っ!」

月音が一瞬見えなくなったかと思うと、シレの首元に短刀を添えいつでも切れるように体制を取っていた。

月音「私があなた方を殺します」
シレ「・・・・・」

シレは目を閉じた。すると・・・

シレ「フフフ・・・アハハハ!」
月音「・・・・・」

部屋に響くくらいの声の大きさで高らかに笑った。言葉を間違えれば、すぐにでも月音に殺されるというのに・・・

シレ「私達を殺す?そんな事、あなたに出来るのかしら?」
月音「前の私とは違います。甘く見ないでください!」
シレ「それなら・・・今、梨由ちゃんがどういう状況か・・・分かるのかしら?」
月音「っ!?」

月音が私の方へ振り向いた。その瞬間、私の背後から首に冷たく鋭い何かが添えられたのを感じた。

?*「よう、元気にしてたか?危険人物ちゃんよ」
私*「っ!」

私の耳元で聞き覚えのある男性の声が囁いた。その声の正体は・・・

月音「風夜・・・!」
風夜「ん?おぉ、誰かと思ったら・・・」
月音「くっ・・・相変わらず卑怯ですね・・・」

月音は左手に持っているお札を握りしめながらシレに向かって言葉を放った。月音は、これまでに感じたことのないくらいの殺気を漂わせていた。

シレ「褒め言葉として受け取っておくわ」
月音「・・・・・」

月音は無言になり、シレに向かって急に日本刀で攻撃した。しかし、シレはそれを分かっていたかのように軽々と避けていった。

シレ「あらあら、そんなんじゃ当たらないわよ?」
月音「・・・っ!」
シレ「それに・・・」

──パキーーーン!──

月音「なっ!?」
シレ「・・・隙だらけなのよ!」
月音「ぐはっ!」

刀を弾き返された月音は、シレの強烈な蹴りを腹部にもろに受け、背後の壁に叩きつけられた。

私*「月音さん!」
シレ「なーんだ、全然変わっていないじゃないの」
月音「くっ・・・」

月音はフラフラになりながらも、立ち上がってお札を構えた。しかし・・・

月音「っ!ぐぅ・・・!」
私*「月音さん!?」

月音は、腹部を抑え急に崩れるようにして倒れた。そして、月音の腹部からは・・・

月音「くっ・・・」
私*「えっ・・・ち、血・・・?」

大量の血液が流れ出していた。それを見てシレはクスクスと笑い出す。

シレ「私がただの蹴りを入れると思う?」
月音「ま・・・ほう・・・ですか・・・」
シレ「そうよ、あなたに時間を取られるわけにはいかないの」

──このままじゃ・・・死んじゃう・・・

シレ「私達は、梨由ちゃんに用があるからね?」
月音「ぐっ!はぁ・・・はぁ・・・」

──でも私には・・・何も出来ない・・・

シレ「それに、あなたはあの娘を救えないでしょう?」
月音「はぁ・・・はぁ・・・」

──どうしたら・・・

?*『本当に君は、何も出来ないんだね』
私*「っ!」

私の頭の中にあの声が響く。

私*「あなたは誰なの!?何で私の中に・・・」
?*『今、それを言っている場合?』
私*「っ!」
?*『それと、今回は眼帯を外させてもらうからね?』
私*「っ!ちょ、ちょっと待って!」

そう訴えたが、またもや私の意識が続く事はなかった。

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風夜「ん?おい、どうした?」
シレ「・・・どうしたの」
風夜「いや、気を失っちまったみたいだぜ?」
シレ「はぁ?あなた、何やったのよ」
風夜「何もやってねぇよ!」

・・・うるさいなぁ、相変わらずこの二人は話し声が大きいしうるさい。まったく、耳障りだ。

私?『うるさいなぁ・・・』
風夜「っ!?」

そう言った瞬間、首元に添えられていたナイフが無くなった。

私?『あぁ、取ってくれたんだ。邪魔だったんだよねぇ・・・それ』
風夜「くっ・・・」

風夜は、先程までのニヤついた顔とは売って変わって、一気に顔色を変え団扇を構えていた。

月音「り、梨由・・・さん・・・」
私?『ん?あらら、ボロボロになってるじゃん』

私は呆れながらも、月音の近くに歩み寄ろうとした。すると、一・二歩進むと、目の前に黄色い玉が物凄い勢いで横切った。

私?『危ないなぁ・・・』
シレ「・・・・・」
私?『はぁ・・・分かったよ』
シレ「っ!?」

私は左眼の眼帯を外した。そして・・・

私?『さぁ、来なよ。まとめて相手をしてあげるからさ?』
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