私と化け狐と世界

氷菜

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4巻

従者が借りた力

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優良は男性に近づき、男性の胸に突き刺さっている黒く太い剣を握る。そして、その剣をゆっくりと抜いていく。

?*「っ!あぁ!」
優良「・・・もう一度、聞く」
?*「分かった!答えるから・・・!」
優良「・・・・・」

優良は、男性に刺さった剣を素早く抜いた。すると、男性の傷は何事も無かったかのように回復していた。

?*「ふぅ・・・」
優良「話してもらおうか。赤也あかや
私*「・・・赤也?」
優良「こいつの名前だよ。赤也、元々僕の主をしていた人物」
私*「えっ!?優良の・・・元々の主!?」
赤也「・・・・・」

私たちの会話に、赤也は黙ったまま聞いていた。しかし、その赤也に対して優良が話題を戻した。

優良「赤也、質問に答えろ」
赤也「・・・フン、吸血化け狐がこの仕組みに分からねぇとはな」
優良「・・・なんだと?」
赤也「魔法を使えるヤツなんて、一人しか知らねぇくせに」
優良「っ!まさか・・・!」
?*「そう、そのまさかよ」
私*「っ!?」

私の後ろから聞き覚えのある声が聞こえたかと思うと、突然、私の首元に手を掛けられ刃物が添えられた。

優良「シレ・・・!」
シレ「全く、あなたのせいで回復するのに時間が掛かっちゃったわよ」
優良「っ、主から離れろ!」
シレ「主?あら、もう契約しちゃったの?はぁ・・・あの二人は何やってたんだか」

シレはそう言いながら、私の首に添えていた刃物を外し、私の背中をトンっと押した。私は、その拍子に優良の所まで押された。そして、私と優良を囲むようにしてシレと赤也が立つ。

私*「優良・・・」
優良「・・・仕方ない、主」
私*「な、何・・・?」

優良は、私の首元に口を持ってきた。

私*「ちょっと、優良!?」
優良「これしか方法が無いんだ。少しの間、僕に力を貸して」
私*「ちょっ、どういう事!?力を貸す!?」
優良「・・・ごめん!」

──ガブッ!──

優良の謝る声が聞こえたかと思うと、自分の首に何か噛まれたような衝撃を受け、私は力無く倒れた。そして、薄れゆく意識の中、私の視界には驚きの表情をしたシレが映っていた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

僕*「ごめんね、主・・・」

僕は、気を失ってしまった主に申し訳なさそうに謝った。そして、僕は主を静かに木に背中を預けた。

シレ「あ、あなた・・・」
僕*「・・・お前らのせいだ」
赤也「何だと?」
シレ「っ!赤也!左!」
赤也「っ!?」

──シュッ!──

僕は、赤也とシレに背中を向けながら赤也の左側から右に向かって陰陽玉を放つ。しかし、直前のシレの反応で赤也には当たるスレスレの所で避けられてしまう。

僕*「僕は・・・主には普通の人間として生きて欲しかった・・・」
シレ「・・・・・」
僕*「普通の人生を歩んで欲しかった!」
シレ「・・・あなた、林篠梨由とどんな・・・っ!」

──シュッ!ズドン!──

僕は、シレの質問を無視して次々と攻撃を仕掛けた。縦から、横から、斜めからと、ナイフや陰陽玉、光や氷などの光玉を放った。しかし、シレと赤也は、余裕の素振りで僕の攻撃を全て避けた。

僕*「僕には・・・主しかいないんだ・・・主しか・・・」
赤也「・・・シレ」
シレ「・・・えぇ、気を付けなさい」

そう、僕にとって主は。だから、僕は主には逆らえない。それを、こいつらは主を傷付けた。僕の大切な主をここまで追い詰めたんだ。だから、僕は・・・

僕*『・・・弐ノ術・風刺』
シレ「っ・・・」
赤也「シレ!」

僕の妖術は、シレに当たる事は無かった。だけど、そんなのはとっくに予想できたもの。風のように速く、剣のように鋭い程度のこの妖術だと、シレどころか月音にも当たらない。

シレ「・・・その程度?」
赤也「おいおい、こんなの月音だって避けられるぜ?」
僕*「・・・・・」
シレ「あなた、参ノ術、使えるんでしょう?」
僕*「・・・・・」

シレは、僕の事を少しずつ煽り始めた。どうせ、僕を感情的にさせて取り乱したところを一気に攻めるつもりだろう。心の中でどうすればいいか考えていたって、シレには悟りの能力があるから意味が無い。それに・・・

僕*「赤也はアレだったんだよね・・・」
赤也「ん?何か言ったか?」
僕*『壱ノ術・火炎』

僕は、赤也の反応を無視して妖術を使用する。普通なら、壱ノ術程度の妖術はシレ達にとっては直撃してもほぼ無傷で済む。そう、「普通なら」ね・・・

赤也「壱ノ術?おいおい、俺らの事を馬鹿にしてるのか?」
シレ「随分と甘く見られたものね」
優良「・・・・・」

僕は、赤也とシレの余裕さに無言・無反応でその場に立っていた。そして、そのままその妖術を赤也に向かって放つ。もちろん、余裕な赤也は、余裕の表情で避けようとする。しかし、赤也は突然、切羽詰まった表情への変えた。

赤也「お、おい・・・これって・・・」
優良「・・・フッ」
赤也「くっ・・・!」

赤也は状況を理解したのか、急いでその場を離れようとする。しかし、赤也が気付いた時には既に遅く、僕の妖術は赤也に直撃した。そして、赤也は身体の所々が少し焦げその場に倒れた。

シレ「赤也!?」
優良「・・・・・」

倒れた赤也にシレが駆け寄った。そして、僕の事を睨みつけてきた。

シレ「あなた・・・」
優良「・・・はぁ、これくらいでくたばるのかぁ」
シレ「っ!!」
優良「たかが壱ノ術で、くたばるとはね」
シレ「っ、何をしたの!」
優良「何もしてないよ?ただ、主の力を借りただけ」
シレ「彼女の・・・力・・・?」

シレは、意味が分かっていないようだった。それもそのはずだ。だって、僕の主、林篠梨由の能力を

シレ「彼女力は・・・『想像したものを具現化する』やつなんじゃ・・・」
優良「・・・はぁ、研究者で悟りの能力を持っている割には知らないんだね」
シレ「っ・・・」
優良「まぁいいよ。教えてあげる」

僕はそう言って、闇の光の玉を作る。そしてそれを片手に一つ持ってそのまま真上に投げた。すると、その玉はある程度の高さまで上がると静止して、そして、花火のように散り始めた。そして、僕はこう言い放つ。

優良『主の本当の力をね!』
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