私と化け狐と世界

氷菜

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6巻

過去と絆

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私*「・・・ん」

目が覚めると、周りが木に囲まれた場所にいた。前に、優良と初めてあった場所だ。しかし、前よりも木の数が少し減っているようにも見える。

私*「ここって・・・」
?*「気がついた?主」
私*「っ!」

声がした方へ視線を送ると、そこには私の従者である優良がいた。

私*「優良・・・!」
優良「結構やられちゃったみたいだね」
私*「うん・・・それに・・・」
優良「誘拐もされちゃったね・・・」
私*「・・・・・」

ぼんやりとだが、シレが私を殺そうとして槍が私の腹部に刺さって、名前は忘れたが男性に拘束されて誘拐させられたことを覚えている。

優良「主、今更こんな事を言うのも変なんだけど・・・」
私*「ん?何?」
優良「・・・ごめん。こんな目に合わせちゃって・・・」
私*「・・・・・」
優良「僕は、主には普通の人間の生活をして欲しかったんだ。でも・・・」

優良は悲しそうな顔をしながら私にそう言ってきた。しかし、私はそんな優良を責めたりはしない。こんな目にあったのは、優良の責任じゃないから・・・

私*「ううん、優良のせいじゃない」
優良「主・・・」
私*「ただ、教えて欲しいの」
優良「・・・何?」

私は、ずっと気になっていたことがある。それは・・・

私*『あなたは、私の何なの?』
優良「・・・え?」

優良は、少し戸惑ったような表情をした。それもそう。急に、こんな事を質問されれば誰だって戸惑う。

優良「僕は、君の従者だよ?」
私*「それは知ってるよ。そうじゃなくて・・・」
優良「・・・?」
私*「私に逆らえないってどういう事?」
優良「それは、従者と主の関係だから・・・」
私*「違う。あなたは、私が主になる前から言ってた」
優良「・・・・・」
私*「あなたは、誰なの?私と何の関係があるの?」
優良「・・・・・」

私が質問すると、優良は暗い表情をして口を閉じてしまった。そんなに言いたくない事なのだろうか・・・。でも、私が主になった以上、隠し事をして欲しくない。大事な事は、隠さないで、面と向かって言うべきだと思う。すると・・・

優良「・・・分かった。全部話すよ」
私*「っ・・・!」

決心をしたような顔をして私に返答してきた。嬉しかった。一番信じられる人物だったから、余計に嬉しさがあった。優良は、そう宣言した後、ゆっくりと話を始めた。

優良「まず、僕は吸血化け狐の優良。そこは変わらない。雄だっていうところもね」
私*「うん・・・」
優良「そして僕はね、主」
私*「・・・うん」

優良は、ゆっくりと深呼吸をした。そして、私の目をまっすぐと見て言い放つ。

優良『僕は、君の召使いだったんだ』
私*「っ!?」

私は愕然とした。召使い・・・って事は、私は王女だったってことになる。しかし、今の私は王女ではなく、ただの平民。っとなると、私の前世が王女だったのだろうか・・・

私*「召使いって・・・王女だったの?私・・・」
優良「君の前世だけどね」
私*「・・・・・」

まさかの予想的中。っても、嬉しい気持ちなんかは無かった。とても、複雑な気分だ。そんな事を思っている中、優良は話を進めていく。

優良「僕達妖怪は、ほぼ不死身のようなもの。だから、妖怪にとって人間の一生は、ほんの少しの時間。人間が喫茶店でお茶をするぐらいね」
私*「そんなに短いんだ・・・」

妖怪が長生きするというのは前から知っていたが、人間の一生がここまで短く感じるなんて、驚きだ。

優良「そんな短い時間でも、僕はとある時代の女王の召使いになった。それが君」
私*「・・・・・」
優良「君は、国の誇りだった。優しくて美しく、差別をしない、そんな王女だった」
私*「そうなんだ・・・」
優良「だけど・・・」

優良は、一気に悲しそうな顔を見せた。どうやら、その時代の国で何かがあったらしい。

優良「そんな王女を巡って、あちこちの国で戦争が起こった」
私*「えっ・・・」
優良「最初はそんなに大きくは無かった。誰もが大きくならない事を願った。でも、現実は甘くはなかった・・・」
私*「・・・・・」

優良「戦争をしている国の中の一つが、誤って王女の国に爆弾を落としてしまった」
私*「爆弾・・・」
優良「僕は、王女と共に逃げたんだ。王女を守る事が僕の義務だったから」
私*「優良・・・」
優良「だけど・・・王女は、逃げた先の崖で銃で撃たれて・・・」

優良は、自分の腕をぎゅっと握って何とか言葉を出そうとしていた。それを見た私は、そっと優良の手に自分の手を乗せる。

私*「ありがとう。そこまで話してくれれば十分だよ・・・」
優良「・・・主」
私*「私は・・・優良が決心して私にその事を話してくれただけで嬉しいから・・・」
優良「っ・・・!」

優良は、私の言葉を聞いてホットしたような、そんな顔をしていた。私に話して、どのような反応をするのかが不安だったらしい。

優良「主が嫌な反応をしなくて良かったよ」
私*「あはは、そんなに不安だったんだ」
優良「そりゃそうだよ。話すのに凄く緊張したんだから」
私*「そっか。・・・ありがとうね?本当に」
優良「・・・うん!」

この時、私は優良のと間で深い絆が生まれたような気がした。優良も私との間で絆が生まれたと思ったのだろう。私の顔をじっと見つめていた。そんな時だった。私の身体に異変が出始めたのは。

私*「っ・・・」
優良「主?どうかした?」
私*「大丈夫・・・何でもない・・・」

──ドクンッ!──

私*「っ!!」
優良「主!?」

胸が急に締め付けられるように痛くなった私は、胸を抑えながらその場に転がる。

優良「主!どうしたの!?」
私*「っ!ぐっ・・・!」

こんな痛みは初めてだ。とても嫌な痛み・・・拒絶したくなるような、そんな痛み。汗をかきながら転げ回る私を見て優良は、慌てていた。

私*「ぐっ・・・!はぁ・・・はぁ・・・」
優良「主!しっかりして!」
私*「ゆう・・・ら・・・っ」

私は、徐々に酷くなっていく痛みに耐えられず、そのまま気を失ってしまった。
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