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序章 世界創造
神(?)との邂逅
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「あれ?ここは…?」
気絶していたらしい青年は病衣のまま雲、と思われるフワフワの物体の上で目が覚めた。周囲には人影は見当たらず、空はどういう理屈か黄金に輝いている。
必死に糸を握っていたあの時からどのくらい時間が経ったのだろう。気を失っていたのは一瞬だったのか、はたまた数日だったのか。そもそもここはあの糸によって引き上げられた場所なのか否か。青年には判断の仕様がないことだらけだった。
「おお~。目が覚めたかい?」
青年は突然背後から声をかけられ、驚いて振り返った。そこには真っ白な人型の何かが立っているではないか。
「貴方は…ひょっとして糸を垂らしてくれた方ですか?」
しかし、青年はそこまで動じなかった。死後の世界が実際にあったことから始まる超常現象の連続で、彼の感覚が麻痺していたのだ。ただ、人型の何かはその反応を好ましく思ったのか、上機嫌に青年と目線(目は無いが)をあわせるように座り込んだ。
「そうだよ。君には感謝しているからね。」
「感謝、ですか?」
「うん。君のお陰でさ、世界の殻が割れたんだよね。」
「???」
白い何かの言い分は青年にとってチンプンカンプンであった。会ったこともない相手に感謝されるような偉業を達成した事は無いし、『世界の殻』なる言葉も初耳だ。そんな困惑する青年を見て、白い何かは苦笑するように肩を竦めた。
「まあ、それが当然の反応だよね。じゃあ順に説明していこうか、金剛クン?」
「え!?な、なんで…」
金剛、という病弱な自分が嫌でつけた『Second World』内のアバター名。ゲームの中とは言え、その名に恥じない強さを手に入れたもう一人の自分。状況からいって神仏の一柱と思われる存在が、まさかゲームの自分を知っているとは思わなかった。
「そりゃあ知ってるさ。なんてったってVRゲーム『Second World』を創ったのは他でもない私だからね。」
「創っ!?そんな馬鹿な…でもそう言えば開発企業が謎だって聞いた事があった気も…いやでもまさか…」
「信じられないよねぇ~。色々と事情があってね、お礼と頼み事をするために君を呼んだワケよ。」
「は、はぁ。」
正直理解が追い付かないが、状況から鑑みて相手は神仏の類なのだろう。そんな存在が自分に何の用があるのかは解らないが、少なくとも話だけでも聞かねばならないと純朴な青年は考えて正座をした。
「そ、それで神、様?私にどう言ったご用件がおありなのですか?」
「じゃあまずお礼から。魔神を倒してくれて本っっっっ当に有り難う!アイツは新しい世界を生み出す為の最期の壁だったからね。金剛クンのお陰で私の実験は成功したんだ。」
「実験、ですか?」
「そう。簡単に言うとね、あのゲームは君たちの概念で言う異世界の成長を促進させる装置だったんだよ。」
何やら途方もない事を言い出した神(暫定)だが、青年は黙って相手の話を聞き続けた。
「大変だったんだよ?世界の卵を創るのは簡単なんだけど、それを自然と孵化させるのは数億分の一の確率なんだよね。世界の卵が一人前の世界になる為には色々厳しい条件があるから。そこで科学技術が発達した君たちの世界を利用して、ゲーム機に見せかけた魂魄の模写装置を流通させたってワケよ。」
「魂魄の、模写?」
「うん。『Second World』の中ってさ、現実と変わらないだろ?あれって実はまだ卵の世界にプレイヤーの模写した魂を私が用意した肉体に入れてたんだ。今風に言えば全員異世界へ魂だけ転移してたんだよね。」
厳密には違うけど、と神(暫定)は締めくくった。青年は色々と常識外れな内容に頭がおかしくなりそうだったが、少しでも理解しようと努力した。
「つまり、僕の魂も異世界へ入っていたということですね?」
「まあそうだね。ここまでがオフラインの時代。ゲームが世界中で普及して色んな魂のデータが集まって、卵の中で自前の魂を持つ存在が生まれたんだ。これが次の段階、オンライン化だよ。不思議に思わなかった?今日日のAIは優秀だけどさ、あのNPC達は人間臭さがあったでしょ?」
「それはNPCが単なるデータではなくて、歴とした知的生命体だったからということですか?」
「正解!」
神(確定)の言うとおり、オンライン化した後の『Second World』では異常なほど有能で柔軟な思考と返答をこなすNPC達が揃っていた。対応は人間のそれと同じであったし、世間では話題にもなっていたようだ。その秘密はNPCが人間だったから、という事のようだ。
「ここまでは順調だったんだ。本来ならメチャクチャ時間が掛かる知性を持つ生き物の誕生っていう条件をクリア出来たからね。でも、問題はその後さ。世界が邪道な方法で不自然で急激に成長し過ぎたせいで、卵の殻が分厚くなっちゃったんだよね。」
「殻ですか?」
「ああ、殻ってのは比喩表現ってやつさ。世界の卵が世界へと孵化するためのきっかけを便宜上『殻』って呼んでるだけ。んで、『Second World』の殻は『中世編の魔神討伐』だったんだよ。」
「あ、それって…!」
ここで漸く話が繋がった。どうやら青年は知らず知らずの内に神が新たな世界を生み出す手伝いをしていたらしい。一種の創造神話に関わってしまったということだ。
「いや、まいったよ。魔神が強過ぎて実験は失敗したかな?とも思ったんだ。やっぱり横着しちゃあダメだな~とか思ってた時に、君が見事に倒してくれた。感謝してもしきれないよ、ホント。」
「い、いえ、頭を上げて下さい!」
そう言って神は躊躇なく深々と頭を下げた。はっきり言って神とは思えない低姿勢に、青年も慌ててしまう。青年があたふたしていると、神はガバッと顔を上げた。
「そこで!本当は金剛クンの夢に出てお願いを何でも聞いてあげる、ハズだったんだ。でも…」
「僕は死んでしまいました。」
「そうなんだよ。でも生き返らせることは御法度。だからそれ以外なら何でも願いをいくつでも叶えてあげるよ。」
何と間の悪いことだろう。あそこで屋上に行かず大人しく寝ていれば、現世を謳歌出来たということか。それを知った青年は涙を流し、感情のまま号泣した。
「…生きたかったよね。こればっかりはどうしようも無いんだ。」
父と母に恩返しがしたかった。妹の我が儘をもっと聞いてやりたかった。そして何よりも、もっと幸せに生きたかった。そんなあらゆる感情が今になって溢れてくる。青年の慟哭を神は神妙に見ていることしか出来なかった。
気絶していたらしい青年は病衣のまま雲、と思われるフワフワの物体の上で目が覚めた。周囲には人影は見当たらず、空はどういう理屈か黄金に輝いている。
必死に糸を握っていたあの時からどのくらい時間が経ったのだろう。気を失っていたのは一瞬だったのか、はたまた数日だったのか。そもそもここはあの糸によって引き上げられた場所なのか否か。青年には判断の仕様がないことだらけだった。
「おお~。目が覚めたかい?」
青年は突然背後から声をかけられ、驚いて振り返った。そこには真っ白な人型の何かが立っているではないか。
「貴方は…ひょっとして糸を垂らしてくれた方ですか?」
しかし、青年はそこまで動じなかった。死後の世界が実際にあったことから始まる超常現象の連続で、彼の感覚が麻痺していたのだ。ただ、人型の何かはその反応を好ましく思ったのか、上機嫌に青年と目線(目は無いが)をあわせるように座り込んだ。
「そうだよ。君には感謝しているからね。」
「感謝、ですか?」
「うん。君のお陰でさ、世界の殻が割れたんだよね。」
「???」
白い何かの言い分は青年にとってチンプンカンプンであった。会ったこともない相手に感謝されるような偉業を達成した事は無いし、『世界の殻』なる言葉も初耳だ。そんな困惑する青年を見て、白い何かは苦笑するように肩を竦めた。
「まあ、それが当然の反応だよね。じゃあ順に説明していこうか、金剛クン?」
「え!?な、なんで…」
金剛、という病弱な自分が嫌でつけた『Second World』内のアバター名。ゲームの中とは言え、その名に恥じない強さを手に入れたもう一人の自分。状況からいって神仏の一柱と思われる存在が、まさかゲームの自分を知っているとは思わなかった。
「そりゃあ知ってるさ。なんてったってVRゲーム『Second World』を創ったのは他でもない私だからね。」
「創っ!?そんな馬鹿な…でもそう言えば開発企業が謎だって聞いた事があった気も…いやでもまさか…」
「信じられないよねぇ~。色々と事情があってね、お礼と頼み事をするために君を呼んだワケよ。」
「は、はぁ。」
正直理解が追い付かないが、状況から鑑みて相手は神仏の類なのだろう。そんな存在が自分に何の用があるのかは解らないが、少なくとも話だけでも聞かねばならないと純朴な青年は考えて正座をした。
「そ、それで神、様?私にどう言ったご用件がおありなのですか?」
「じゃあまずお礼から。魔神を倒してくれて本っっっっ当に有り難う!アイツは新しい世界を生み出す為の最期の壁だったからね。金剛クンのお陰で私の実験は成功したんだ。」
「実験、ですか?」
「そう。簡単に言うとね、あのゲームは君たちの概念で言う異世界の成長を促進させる装置だったんだよ。」
何やら途方もない事を言い出した神(暫定)だが、青年は黙って相手の話を聞き続けた。
「大変だったんだよ?世界の卵を創るのは簡単なんだけど、それを自然と孵化させるのは数億分の一の確率なんだよね。世界の卵が一人前の世界になる為には色々厳しい条件があるから。そこで科学技術が発達した君たちの世界を利用して、ゲーム機に見せかけた魂魄の模写装置を流通させたってワケよ。」
「魂魄の、模写?」
「うん。『Second World』の中ってさ、現実と変わらないだろ?あれって実はまだ卵の世界にプレイヤーの模写した魂を私が用意した肉体に入れてたんだ。今風に言えば全員異世界へ魂だけ転移してたんだよね。」
厳密には違うけど、と神(暫定)は締めくくった。青年は色々と常識外れな内容に頭がおかしくなりそうだったが、少しでも理解しようと努力した。
「つまり、僕の魂も異世界へ入っていたということですね?」
「まあそうだね。ここまでがオフラインの時代。ゲームが世界中で普及して色んな魂のデータが集まって、卵の中で自前の魂を持つ存在が生まれたんだ。これが次の段階、オンライン化だよ。不思議に思わなかった?今日日のAIは優秀だけどさ、あのNPC達は人間臭さがあったでしょ?」
「それはNPCが単なるデータではなくて、歴とした知的生命体だったからということですか?」
「正解!」
神(確定)の言うとおり、オンライン化した後の『Second World』では異常なほど有能で柔軟な思考と返答をこなすNPC達が揃っていた。対応は人間のそれと同じであったし、世間では話題にもなっていたようだ。その秘密はNPCが人間だったから、という事のようだ。
「ここまでは順調だったんだ。本来ならメチャクチャ時間が掛かる知性を持つ生き物の誕生っていう条件をクリア出来たからね。でも、問題はその後さ。世界が邪道な方法で不自然で急激に成長し過ぎたせいで、卵の殻が分厚くなっちゃったんだよね。」
「殻ですか?」
「ああ、殻ってのは比喩表現ってやつさ。世界の卵が世界へと孵化するためのきっかけを便宜上『殻』って呼んでるだけ。んで、『Second World』の殻は『中世編の魔神討伐』だったんだよ。」
「あ、それって…!」
ここで漸く話が繋がった。どうやら青年は知らず知らずの内に神が新たな世界を生み出す手伝いをしていたらしい。一種の創造神話に関わってしまったということだ。
「いや、まいったよ。魔神が強過ぎて実験は失敗したかな?とも思ったんだ。やっぱり横着しちゃあダメだな~とか思ってた時に、君が見事に倒してくれた。感謝してもしきれないよ、ホント。」
「い、いえ、頭を上げて下さい!」
そう言って神は躊躇なく深々と頭を下げた。はっきり言って神とは思えない低姿勢に、青年も慌ててしまう。青年があたふたしていると、神はガバッと顔を上げた。
「そこで!本当は金剛クンの夢に出てお願いを何でも聞いてあげる、ハズだったんだ。でも…」
「僕は死んでしまいました。」
「そうなんだよ。でも生き返らせることは御法度。だからそれ以外なら何でも願いをいくつでも叶えてあげるよ。」
何と間の悪いことだろう。あそこで屋上に行かず大人しく寝ていれば、現世を謳歌出来たということか。それを知った青年は涙を流し、感情のまま号泣した。
「…生きたかったよね。こればっかりはどうしようも無いんだ。」
父と母に恩返しがしたかった。妹の我が儘をもっと聞いてやりたかった。そして何よりも、もっと幸せに生きたかった。そんなあらゆる感情が今になって溢れてくる。青年の慟哭を神は神妙に見ていることしか出来なかった。
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