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早速次の日、王様は家来の皆を呼び集めて命じました。
「タマゴを150コ集め、そしてそれを使ってメレンゲのクッキーを作るのじゃ!急げ、時間はないぞ!」
しかし、家来の人々は誰も偉そうな王様の指示には耳を傾けませんでした。
「嫌です、どうして僕たちが」
「王様がやりたいことなら、どうぞ王様がやってください」
口々にそう言う家来に王様はカンカンに怒ってしまいました。
「何じゃ何じゃ!!だったらワシが一人でやってやるわい!」
王様はお城中からタマゴを大量に集め、そしてボウルに割ってはかき混ぜてを繰り返しました。王様の腕がクルクルと動き、少しずつ白いメレンゲがフワフワと生まれてきました。
しかし、やはり限界が来てしまいました。
王様の割ったタマゴの殻が山を築き上げた時、もうボウルにはタマゴが入らなくなっていたのです。それに王様もメレンゲを作るのに疲れてしまいました。
「ええい、このままじゃあいつまで経っても終わらないぞ!一体どうしたらいい?!」
王様は悩み、お城の書庫へと行って色々な本を読みました。何かいい方法はないかと考えながら本を漁っていると、王様はある絵を見つけました。
それは竜巻の絵でした。王様はこれを見て思いつきました。
「そうじゃ!竜巻といえばアレがある」
王様はそう言って、魔法の道具が置いてある倉庫へと足を運びました。
そこには本当にたくさんの魔法の道具がありました。あらゆるモノを吸い込むことができる「ソウジキ」に、入れておくだけで食べ物を冷たくできる「レイゾウコ」、数字を指しながら絶えず回り続ける「トケイ」など、数えたらキリがないほどの魔法の道具がそこには保管されていました。
王様の目当てはその中の一つで、「センタクキ」という道具でした。これはボタンを押すとグルグルとすさまじい速度で回転する魔法の道具で、昔王様はこの中に入って遊んだとき、まるで竜巻にでもあったような気持ちになったのでした。
「この道具にタマゴを入れてかき混ぜれば、一瞬で大量のメレンゲを作ることが出来るはずじゃ!」
王様はセンタクキを台所までエッサホイサと運び、そしてあるだけのタマゴを割ってからボタンを押しました。
「ムフフムフフ、これでやっと手に入る」
王様は期待に胸を膨らませながらじっとセンタクキの前で完成を待っていました。
しかし数分後、思いもよらない事態が起こってしまいました。それは王様にとっても予想外の出来事でした。
なんと、メレンゲがセンタクキから大量に溢れ出てきたのです。止まらない白い泡は、まるで怒り狂った怪物のように王様を飲み込みながら、勢いそのままに倉庫の外まで流れてゆきます。
「うわああああああああ」
流れに逆らうことも出来ず、王様はなす術もなくどんどん流されてゆきます。メレンゲはドアを砕き、門を壊し、それでも止まらず丘の下に広がる町の方へと流れてゆきます。
ズザザッ、ズザザッ、ズザザッ、ズザザッ
メレンゲは白い悪魔と化し、あらゆるものを飲み込みました。
家々を壊し、人々を流し、ようやくメレンゲがその勢いを止めたのは一時間余りの時間が経ってからでした。
「おお痛い痛い……。まったくひどい目にあったぞ」
王様はメレンゲの平原から顔を出して、そう声を出したときにあることに気づきました。
町の人々がみんな、王様のことを睨んでいたのです。みんなその眼には怒りの炎を宿らせていました。
「どうしたんじゃみんな?一体何を見ておるんじゃ?」
王様が不思議そうに声を上げたのを聞いて、町の人たちの怒りはいよいよ頂点に達しました。怒りを堪えられなくなった人々は次々に王様のことを責めました。
「どうしたもこうしたもないよ!いったいこれはどうしてくれるんだい!」
「家が今ので壊されてしまった!これからどうすればいいっていうんだ!」
「どうしていつも人に迷惑かけるようなことばかりするんだ!!」
誰もかれもが口を揃えて王様のことを責めました。「王様のせい、王様のせい」と声を揃えて責めました。
「わしのせいじゃない!断じてわしのせいじゃないぞ!」
王様は顔を真っ赤にして否定しました。しかし町の人々は、声を揃えて王様に問い詰めます。
「嘘だ!だったらどうしてこのメレンゲの流れに王様が巻き込まれているんだ!」
「嘘だ!だったらどうしてこのメレンゲがお城の方から流れてきているんだ!」
「わしのせいじゃない!わしのせいじゃない!」
王様はそう言いながら、走って丘の上のお城まで帰っていきました。その背中には、町の人々の罵声が容赦なくぶつけられました。
王様は走りました。走りながら泣きました。大粒の涙をポロポロとこぼし、えんえんと声を上げて泣きました。王様はとっても悲しい気持ちになりました。
「わしは…ただ欲しいものがあっただけなのに……」
お城に戻り、がれきの山をかき分けながら王様は自分の部屋へと行きました。幸い部屋は無事だったようで、王様の二つの宝箱は傷一つ付いていませんでした。ですが王様はそれを喜べないほどに、身体も心もクタクタになっていました。
ベッドに身を預けて目を閉じ、眠ろうとしましたがなかなか寝付けませんでした。身体は疲れているのに、心がキュウキュウと痛んで寝付けませんでした。
そうして時間を過ごしていると、また魔女が窓から部屋に入ってきました。
「こんばんは王様。今日は散々でしたね」
魔女の他人事めいたその言い方に、王様は怒りを露にしました。
「何を言うか!元はと言えば、お前がわしをそそのかしたんじゃろ!」
「確かに私はメレンゲクッキーを作るように指示しましたが、しかし王様、あんな乱暴なやり方で作れなんて一言も言ってはいませんよ」
「確かにそれはそうじゃが……。では逆に問うが、お前は一体わしにどうやってあんな大量のタマゴからメレンゲを作ってほしかったんじゃ?わしにはああする以外の方法はもう思いつかないんじゃが」
王様のその言葉に魔女は笑い、言葉を返しました。
「それは嘘ですよ王様。王様の心はちゃんと答えを知っています。ただそれを素直に口に出来ていないだけです」
そう言ってから魔女は再び音もなく地面から浮き、「自分の心に尋ねてみてください。どうしたいかを」と告げてから空へと消えていきました。
王様は飛んでいく魔女の背中を見送りながら、胸に手を当ててみました。トクントクンという動きを感じて、そのリズムに合わせながら自分自身に問いかけてみました。
「わしは一体どうしたいんじゃ?わしは一体何がしたいんじゃ?」
王様は夜空に浮かぶ大きな月を眺めました。それはとてもきれいで、でも王様は不思議と悲しい気持ちになりました。そして同時に、ようやく自分の答えに気づくことが出来ました。
「タマゴを150コ集め、そしてそれを使ってメレンゲのクッキーを作るのじゃ!急げ、時間はないぞ!」
しかし、家来の人々は誰も偉そうな王様の指示には耳を傾けませんでした。
「嫌です、どうして僕たちが」
「王様がやりたいことなら、どうぞ王様がやってください」
口々にそう言う家来に王様はカンカンに怒ってしまいました。
「何じゃ何じゃ!!だったらワシが一人でやってやるわい!」
王様はお城中からタマゴを大量に集め、そしてボウルに割ってはかき混ぜてを繰り返しました。王様の腕がクルクルと動き、少しずつ白いメレンゲがフワフワと生まれてきました。
しかし、やはり限界が来てしまいました。
王様の割ったタマゴの殻が山を築き上げた時、もうボウルにはタマゴが入らなくなっていたのです。それに王様もメレンゲを作るのに疲れてしまいました。
「ええい、このままじゃあいつまで経っても終わらないぞ!一体どうしたらいい?!」
王様は悩み、お城の書庫へと行って色々な本を読みました。何かいい方法はないかと考えながら本を漁っていると、王様はある絵を見つけました。
それは竜巻の絵でした。王様はこれを見て思いつきました。
「そうじゃ!竜巻といえばアレがある」
王様はそう言って、魔法の道具が置いてある倉庫へと足を運びました。
そこには本当にたくさんの魔法の道具がありました。あらゆるモノを吸い込むことができる「ソウジキ」に、入れておくだけで食べ物を冷たくできる「レイゾウコ」、数字を指しながら絶えず回り続ける「トケイ」など、数えたらキリがないほどの魔法の道具がそこには保管されていました。
王様の目当てはその中の一つで、「センタクキ」という道具でした。これはボタンを押すとグルグルとすさまじい速度で回転する魔法の道具で、昔王様はこの中に入って遊んだとき、まるで竜巻にでもあったような気持ちになったのでした。
「この道具にタマゴを入れてかき混ぜれば、一瞬で大量のメレンゲを作ることが出来るはずじゃ!」
王様はセンタクキを台所までエッサホイサと運び、そしてあるだけのタマゴを割ってからボタンを押しました。
「ムフフムフフ、これでやっと手に入る」
王様は期待に胸を膨らませながらじっとセンタクキの前で完成を待っていました。
しかし数分後、思いもよらない事態が起こってしまいました。それは王様にとっても予想外の出来事でした。
なんと、メレンゲがセンタクキから大量に溢れ出てきたのです。止まらない白い泡は、まるで怒り狂った怪物のように王様を飲み込みながら、勢いそのままに倉庫の外まで流れてゆきます。
「うわああああああああ」
流れに逆らうことも出来ず、王様はなす術もなくどんどん流されてゆきます。メレンゲはドアを砕き、門を壊し、それでも止まらず丘の下に広がる町の方へと流れてゆきます。
ズザザッ、ズザザッ、ズザザッ、ズザザッ
メレンゲは白い悪魔と化し、あらゆるものを飲み込みました。
家々を壊し、人々を流し、ようやくメレンゲがその勢いを止めたのは一時間余りの時間が経ってからでした。
「おお痛い痛い……。まったくひどい目にあったぞ」
王様はメレンゲの平原から顔を出して、そう声を出したときにあることに気づきました。
町の人々がみんな、王様のことを睨んでいたのです。みんなその眼には怒りの炎を宿らせていました。
「どうしたんじゃみんな?一体何を見ておるんじゃ?」
王様が不思議そうに声を上げたのを聞いて、町の人たちの怒りはいよいよ頂点に達しました。怒りを堪えられなくなった人々は次々に王様のことを責めました。
「どうしたもこうしたもないよ!いったいこれはどうしてくれるんだい!」
「家が今ので壊されてしまった!これからどうすればいいっていうんだ!」
「どうしていつも人に迷惑かけるようなことばかりするんだ!!」
誰もかれもが口を揃えて王様のことを責めました。「王様のせい、王様のせい」と声を揃えて責めました。
「わしのせいじゃない!断じてわしのせいじゃないぞ!」
王様は顔を真っ赤にして否定しました。しかし町の人々は、声を揃えて王様に問い詰めます。
「嘘だ!だったらどうしてこのメレンゲの流れに王様が巻き込まれているんだ!」
「嘘だ!だったらどうしてこのメレンゲがお城の方から流れてきているんだ!」
「わしのせいじゃない!わしのせいじゃない!」
王様はそう言いながら、走って丘の上のお城まで帰っていきました。その背中には、町の人々の罵声が容赦なくぶつけられました。
王様は走りました。走りながら泣きました。大粒の涙をポロポロとこぼし、えんえんと声を上げて泣きました。王様はとっても悲しい気持ちになりました。
「わしは…ただ欲しいものがあっただけなのに……」
お城に戻り、がれきの山をかき分けながら王様は自分の部屋へと行きました。幸い部屋は無事だったようで、王様の二つの宝箱は傷一つ付いていませんでした。ですが王様はそれを喜べないほどに、身体も心もクタクタになっていました。
ベッドに身を預けて目を閉じ、眠ろうとしましたがなかなか寝付けませんでした。身体は疲れているのに、心がキュウキュウと痛んで寝付けませんでした。
そうして時間を過ごしていると、また魔女が窓から部屋に入ってきました。
「こんばんは王様。今日は散々でしたね」
魔女の他人事めいたその言い方に、王様は怒りを露にしました。
「何を言うか!元はと言えば、お前がわしをそそのかしたんじゃろ!」
「確かに私はメレンゲクッキーを作るように指示しましたが、しかし王様、あんな乱暴なやり方で作れなんて一言も言ってはいませんよ」
「確かにそれはそうじゃが……。では逆に問うが、お前は一体わしにどうやってあんな大量のタマゴからメレンゲを作ってほしかったんじゃ?わしにはああする以外の方法はもう思いつかないんじゃが」
王様のその言葉に魔女は笑い、言葉を返しました。
「それは嘘ですよ王様。王様の心はちゃんと答えを知っています。ただそれを素直に口に出来ていないだけです」
そう言ってから魔女は再び音もなく地面から浮き、「自分の心に尋ねてみてください。どうしたいかを」と告げてから空へと消えていきました。
王様は飛んでいく魔女の背中を見送りながら、胸に手を当ててみました。トクントクンという動きを感じて、そのリズムに合わせながら自分自身に問いかけてみました。
「わしは一体どうしたいんじゃ?わしは一体何がしたいんじゃ?」
王様は夜空に浮かぶ大きな月を眺めました。それはとてもきれいで、でも王様は不思議と悲しい気持ちになりました。そして同時に、ようやく自分の答えに気づくことが出来ました。
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