中島と暮らした10日間

だんご

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5 デス・ゲーム

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 馴染みのお店で、ちょっと気分を入れ替えよぅ~……って来てみたのだが。
 コレはいったい、何事だい?

 「たけちゅわ~ん♡おひさぁ~♡」

 夕方5時。
 酔っぱらいで死屍累々。
 ♡マークを飛ばすマスターの顔も赤い。

 「たけちゅわん♡チュッバッ♡(投げキッス)」

 『パタン……』

 ソッとドアを閉めた自分。
 うん。
 何も見なかった。
 さて、ちょっと早いけど、居酒屋に……

 『バタンッ!!』
 「たけちゅわん♡ひどぉいぃ♡」

 ドアが激しく開いた瞬間に、ぶっとい腕に回収されてしまった。

 『パタン……』

 前の通りは、何事もなかったかのような静寂が訪れている事でしょうよ……
 だって回収される自分を見た人いなかったもん……
 目撃者0よ?
 ホラー映画とかで見た事あるもん……
 ジョーズとかアナコンダとか……
 これ即死ぬ役のヤツ……

 「んっも~♡たけちゅわんのイ・ケ・ズゥ♡」

 どうして?こうして?こうなった?

 「えっ?ちょっと、このモンスターはどこから湧いたのっ?!」

 「ひどぉい♡」

 「ちょっ?!マスター!!色々苦しいから、離して……ちょっ、マジ離してぇ?!」

 「あっ……諦めろぅ……たけ……」

 床に転がってる人物から、聞き覚えのある声がする。

 「そっ……その声は、まっさん?!」

 「おぅよ……」

 「まっさん……なんで、こんな事態にっ?!」

 「それを話せば、長くて短いんだが……」

 「えっ?どっち?」

 「アレをやっちまったのさ……」

 「まっ……まさか……あの……封印された……?」

 「あぁ……テキーラ・キッス……デス・ゲームだ……」

 ヤーメーテーーーーーっっ!!

 「たけちゅわん♡勝負よぉ♡」

 「いぃぃやぁあぁぁぁ~~!!」

 「諦めろ……たけ……みんな、食われちまったよ……ぐふぅっ(バタンッ)」

 「まっさん?!まっさん?!まっさーんっ!!」

 「さぁさぁ……たけちゅわん?勝負しましょう?」

 「ひっ?!」

 やベェよっ?!
 マスターの目がマジでイッちゃってるよっ?!
 しかもオネエモードだよっ?!
 もう大暴走確定入っちゃってんじゃんっ?!
 あっ、そうだっ!!
 ママさんなら止められるはずっ!!
 って、ウェイ?!
 ママもおだぶってるっ?!
 ヤベェ……
 あっ、あそこに転がってるの、サト先生?!
 ミッツもキョーコさんも……みんな、おだぶってる……

 「ショットグラスにライム♡注ぐわねぇ♡」

 始まる……悪魔のゲームが始まっちまう……
 しかも、サシ飲みとか……不毛過ぎる……


 最初にこのゲームを考えたバカは、あそこに転がってる。
 サト先生に足蹴にされた形で転がってる、ミッツだ。

 多分、合コンに連敗しまくって、頭がどうにかしちまったんだろうけども。
 いや、普段からバカだったな。
 バカだ。バカだと思ってたら、やっぱりバカだった。

 王様ゲームでかすりもしないミッツは、それが悲し過ぎて、馴染みの店でこう言った。

 『テキーラ・ゲームってどう?』

 内容を聞いて唖然としたわ。

 『テキーラをショットグラスで飲み干して、ライムを1番早く咥えた人が王様。王様が絶対で、命令出来るってヤツ。他の順番は、もう1回テキーラして決めてくのさ……』

 なに、ドヤ顔してんだバカがっ!!って、みんなにどつかれてたけど……
 そこは酔っぱらいの集まり。
 物は試しとばかりに、手を出してしまったんだよね……

 最初のゲームは良かった。
 余裕があったから。

 王様が何番と何番でチューって言うと、それを避ける為にテキーラを飲んで、野郎同士でふざけんなよと言いながらも、ワーギャー楽しんだ。

 問題は2回目以降。

 キッス組は悔しくて仕返しがしたいが、王様が圧倒的に有利な状態だ。
 だって、みんなより少ない量しか入ってないから。
 それに気が付いた瞬間、醜い足の引っ張り合いが始まった。
 王様だった者を罠に嵌めるのだ。
 
 言い出しっぺのミッツが、王様だったサト先生の脇腹をつつき。
 脇が弱いサト先生が、噴き出せ青春をかましてしまった。

 そんなミッツは、まっさんの変顔に噴き。
 まっさんは、マスターのウィンクに噴き……まさに泥試合。

 その泥試合を更に地獄に変えたのもミッツだ。

 王様を取れたものの、他の順番も経験して辛かった事が身に染みていたミッツ。
 余分なテキーラを飲みたくない……飲ませたくないミッツ。
 心優しい、おバカなミッツは、こう言った。

 『みんな王様とチュー』

 思考がおかしくなった酔っぱらいは、それにしたがった……

 そして、それがリピートされて……みんなが倒れた。
 これは間違いない。
 デス・ゲームだ。

 みんなは、その悲惨なゲームを封印して、2度としない事を誓った。

 誓ったはずなのに……いったい、なぜ?

 「たけちゅわん♡不思議そうな顔をしてるわねぇん♡」

 「マスターだってあの時、封印しようって言ってたのに、なぜ?」

 そう。マスターだって被害が大きかったはずだ。
 封印に大賛成だったじゃないか。
 なのに……なぜ?

 「それは……ママが……嫁がやってみたいって言ったからだよっ!!」

 「なっ?!バレたのっ?!」

 「ミッツのおバカがツルリと漏らしよったわっ!!」

 「あんのおバカがぁっ!!」

 バカだバカだと思っていたけど。
 マジでバカだった。
 ママがこんな面白事件を知って『やってみ?』って言わないはずがない。
 むしろ、嬉々としてやるわ。
 大して酒が強いわけでもないのに……

 「……でも、マスター。ママ、あそこに転がってるけど?もう止めていんじゃない?」

 「わかってないわねぇ、たけちゅわん♡……1人だけ無事な人間がいると、悔しいでしょ?」

 「なっ……!?」

 「死なばもろとも……よん♡」

 自分は、このゲームの本当の恐ろしさをわかっていなかったようだ。
 いや、人間の負の感情の強さをわかっていなかったらしい……

 「あっ、マスター。せめてチューは止めて?」

 勝っても負けても、永遠的にマスターとチューは嫌だ。

 「了解~……じゃ、暴露話で♡」

 「了解~……」

 その後、倒れた自分達が、目を覚ましたのは翌朝の4時だった。
 平日なので、みんな一緒に酔いが覚めたのは、言うまでもなかった。
 
 

 
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