騙されて異世界へ

だんご

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16 終わりが見えない

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 ︵︵︵ガタガタガタ……︶︶︶
 『ギィ……ギギギギギギ……』
 『ピギィ………』

 「えっ……?虫ってあんなに鳴いたか……?」

 「虫だけじゃねぇからな。ホレ、手が止まってるぞ?」

 「なんだよ……ネズミまでいたのかよ……」

 「そんな可愛いいもんじゃねぇよ」

 「んじゃ、何がいたんだよ」

 「……イエナイ」

 「だから、教えてくれてもいいだろ?」

 「イエナイ……ほら、サッサと手を動かせよ?次は掃除だからな」

 「わかったよ……」

 イエナイって鳴くのな。
 メチャクチャ怖ぇ。
 幸いにもバル○ンが効いているみたいだから、助かるわぁ……
 お仲間のゴキさんと一緒に成仏してくれっ。
 モクモクと草むしりをしてるよ。
 レベルが上がってたお陰で、ゴッソリ握ってもすんなり引っこ抜けるのが嬉しいな。
 どんどん雑草の小山が出来上がって行く。
 終わったら【微風】で乾燥させて焼いてしまうか。

 そう言えば草抜きしている途中で井戸も見つけた。
 リックも井戸の存在を忘れてたらしく、飲み水は買い、風呂は川で済ますか、大衆浴場を利用してたそうだ。
 食事も外食がメインだったらしい。
 ……家を持つ意味があるか謎しか残らんな。

 「これで終わりだ」

 隣の雑草を引き抜くのを合わせても1時間で終わった。
 凄いスピードではなかろうか。

 「庭ってこんなに広かったんだな……」

 「知らなかったのかよ……家買う時、見なかったのか?」

 「いや買った時は、すでにボーボーだったな」

 「マジかよ……まぁ、立派な家だからな。買えるなら買っちまうか……」

 「そうなんだよな。何件か見た家はズタボロでな。疲れ果てた時、この家の前でどうかって聞かれてな?買ったんだよなぁ」

 「……それ、騙されてたんじゃないのか?中見てないんだろ?」

 「そう言えば、見てなかったなぁ……しばらく住人がいなかったから埃っぽいとは言われたが……」

 「完全に不良物件掴まされたんじゃないか……他になんて言われた?」

 「前の住人の物が少しあるってのと、なんか出るって言われたなぁ……」

 「なんか……イエナイか?」

 「う~ん……忘れたな。大した事じゃ無かったはずだ。また言えないかよ。ソブルの中で流行ってんのか?」

 「そんなんじゃねぇよ。まったく、しっかり聞いとけよ……」

 絶対に事故物件だ。いや、イエナイ物件だ。
 駆除しても駆除しても……怖っ!!
 滅茶苦茶怖ぃっ!!

 「ソブル、だいたい1時間経ったよな?そろそろ入ってみるか?」
 
 「あぁ……そうだな。まず、ドアを開けたら、煙を出すんだ。吸い込まない様にな?」

 「んで、窓を開けて廻る、と」

 「そうだ。あけるぞ」

 玄関ドアを開けたら、外でしばらく待機。
 煙、吸いたくないからな。
 一応、手拭いで口元も覆っているが、接してる時間は少ない方がいいだろう。

 「うわぁ~……こんなにいたのかよ……」

 カブリ虫とイエナイが敷き詰められた感じで、もう鳥肌だ。
 
 「うぇ……なんだよコレ……俺、この中で生きてたのか……?」

 「今更かよ。なんだ?魅了でもされてたんじゃないのか?」

 「何に魅了されるってんだよ……」

 「何って……イエナイ」

 「言えよ」

 「イエナイ」

 「だから言えってば」

 「だからイエナイだ」

 「はぁ?!からかうなよ!そろそろ冗談じゃねぇぞ?!」

 「だから!ソイツが【イエナイ】だっての!!」

 「はぁっ?!……?!なんだよコイツ?!毛があるぞっ?!」

 「やっとかよ……ソイツはカブリ虫にくっついて回る【イエナイ】って魔物だよ。そこぉらじゅう、煤と埃まみれにしたゃうんよぉ」

 「なっ……なぜ若干訛ったんだ?」

 「このセリフは、ばぁさまが言ってたから、つい」

 ついついあのセリフが言いたくなるのは仕方ない。
 名作だからな。
 リックは残骸共を呆然と見ているが、早く片付けないとヤバいぞ?

 「リック。魔物まで沸いたとなれば、タバサがどう思うかねぇ……早く動いた方がいいんじゃねぇか?」

 「っ?!そうだなっ!窓、開けて来るっ!」

 ……さて。
 とりあえず、俺は見える所の残骸でも片付けるか。
 大雑把な物は【アイテムボックス】に収納して、煤や埃、イエナイ等の亡骸をほうきで集めるか。

 「ソブル、窓全開にしてきたぞ。次は、どうする?」

 「おいおい、指示待ちかよ……」

 「だってよぉ?サッパリわからない分野だからよ?」

 「わかったよ……庭に部屋の物持ってくから、いる物・いらない物で仕分けしといてくれ」

 「わかった!」
 
 綺麗な返事だな。
 綺麗過ぎて、逆に心配だ。
 ……試しておくか。

 「……一応聞くが、この水が残っている皮袋は?」

 「いる物だ!」

 「いらない物だよっ!!不潔だろうがっ!!」

 「え……勿体ないだろ?」

 「そう思えるなら、1つを大切に使えよ……」

 「とりあえず、迷ったヤツ置き場も作って、3箇所に分けといてくれ」

 「わかった!」

 ……綺麗な返事だな、おい。
 回収した物をドサドサ出し、リックに任せる。
 急がないとタバサが来てしまうので、玄関から見える範囲は、ほうきで集めてしまわなければならない。
 タバサが帰ったら、リックに指導だな。
 教育的指導。
 
 玄関ホール?には、左右の部屋へ行くドアと直進するドア、二階へ続く階段がある。
 現在はドアも全開なので、中が見えるはずなのだが、物が積み重なっていて全く見えない。
 昨日はここから2階までしか【清浄】かけてなかったから、知らんかったわ。
 これでも一晩中やってたのにな。
 1階はリックに【清浄】任せてたんだが……イエナイがいたにしても、酷い有様だな。
 さて……手当たり次第に回収して、空間を空けなきゃな。

 ……リックのヤツ、玄関ホールで生活してたんじゃなかろうか。
 瓶や屋台の串やゴミ、水筒的皮袋……ゴミ系がわんさか出て来てからの手ぬぐいやらなんやら……
 マジかよ……ゴミ系は後でまとめて焼いてしまおう。
 粗方地面が現れたら、ほうきを手にし、階段上から順番にはき落とす。
 下に着いたら、今度は部屋の奥から玄関ドアに向けてはき進むが……ちょっと進んだ位ですぐに小山ができるんだが。
 右隣りの部屋に、積み重なっている空樽をゴミ箱にし、ザクザク掃除していく。

 「ソブル、分け終わった~」

 「んじゃ、奥から丁寧に【清浄】かけて来てくれ。階段もな」

 「おう!」

 俺がほうきをかけて、リックが仕上げる。
 調度いい分担作業になったな。
 ……てか、デカい樽がそろそろいっぱいになるんだが?
 これ、燃やしたらダメなヤツじゃないのか?
 爆発とかしそう……主に埃で。
 しかも、埃に【鑑定】引っ掛かってるんだよな。
 名もない不快害虫って……恐ろしい数。
 即効、シャットアウト。
 
 時間をかけて掃除し、ようやく床が見えてきたよ……
 これ、完全にデッキブラシで磨き上げないと、床本来の色がわからないってヤツだ。
 玄関ホールだけで大層苦労したが……
 他の部屋までやるとしたら、どんだけ苦労するやら。
 かなり気が重い。
 異世界来て、生き延びれるか不安だったが、リックの家が、生活できる様になるかどうかの方が難しく思うのは、何故だろうか……

 グッタリと座り込んでいる恩人に、複雑な視線を送ってしまうのは、仕方ないよな……?


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