騙されて異世界へ

だんご

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17 ようやく一息

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 リックの家を掃除して2週間が経過した。

 虫の残骸を片付け、ヤバい物︵女子に見られたらマズい物︶を始末し終えてから、数回バ○サンを使ってからタバサも参加。
 磨き粉や虫除けもガッツリ使用しながら、頑張ったと思う。
 タバサが住める様に心地良い場所を作るのが最終目標だからな。
 みんな力がこもったよ。
 こっちの世界の掃除に必要な物品の勉強にもなったしな。
 タバサと買い出しに出て、だいたいの金額もわかって来たし。
 異世界始めのチュートリアルと思えば、耐えきれる。

 「よし……これでは終わりだな」

 「やっと終わったかぁ……ありがとう、タバサ、ソブル」

 「2人共、よく頑張ったな」

 その瞬間、後ろから大歓声が聞こえてきた。
 ここ数日で、徐々に見学者が増えてたんだよ。
 暇人の集まりかと思えば、それだけではなさそうだ。

 「あの家をよく掃除しきったな!!」

 「無念を晴らしてくれて、ありがとぉ!!」

 「仲介屋めっ!ザマァ見やがれってんだ!」

 「おめでとうぉ~!!」

 ……歴代の購入者達だったようだ。
 多分、リックと同じ流れで購入させられて、手放して……だと思う。
 見た目、御屋敷かな?って感じの家が、格安で購入できるとなれば買っちゃうよね……
 ただ、イエナイ事情さえクリア出来ればって話。
 
 「おう!お疲れ!」

 「なんだ、ビルまで来てたのかよ……まさかビルも引っ掛かった口か?」

 「それはないが。ギルドの塩漬け案件に協力を願いに来たってだけさ」

 「……いい予感は、しねぇなぁ」

 掃除を完了させて、ヒャッホイ状況に来る依頼。
 しかも、塩漬け依頼と来たもんだ。
 完全にキレイキレイ依頼しかないだろう。

 「私はダメだ。絶対に関わらん!」

 タバサがNOを出した。
 不潔大好き虫が大量にいるとなれば、倒れるだろうな。

 「俺もタバサも、そろそろ討伐依頼に行く予定だったからなっ。腕がなまっちまうからなっ」

 リック……そんな焦って拒否しなくとも。
 いや、わかるぞ?
 掃除オンリーでアレだけ憔悴してればなぁ。
 日々コツコツ掃除する事を神とタバサに誓う位は大変だったもんなぁ。

 「あっ、俺も、」

 「いやぁ、ソブル。お前の腕の見せ所だ。俺への恩、忘れてねぇだろ?」

 「ビルぅ……お前ぇ、そりゃあねぇだろぅ……絶対ぇ厄介なヤツだろぅがよぉ~」

 「まぁ、そう言うな。お前の腕を見込んでだ。町の皆が不安視してたリックの家をここまで磨きあげたんだからな」

 ん?リックとタバサが唖然としてるぞ?

 「なっ……ビル……」

 「まっ……町の……みんな……?」

 なんか小刻みに震えているぞ?
 大丈夫か?

 「まぁ、そうだ。町でも有名な不良物件だからな」

 だろうな。
 イエナイ不良物件だ。
 中心部からさほど遠くなく、庭付きであるにも関わらず手入れしていない。
 しかも手頃な値段で売りに出されてる。
 間違いなく、厄介な家だ。
 みんな警戒してても、おかしくないな。

 「俺……俺達……」

 「全然……知らなかった……」

 「おう。この町以外から来た奴等はまず騙されるな。あと、甘く見てた奴等がな。まっ、それも人生勉強だな」

 「「あぁ……」」

 「っと言う訳だ」

 随分悲惨な勉強方法だな。
 2人共に、膝から崩れ落ちてるよ。

 「その気持ちわかるぞぉ……」

 「俺らもよぉ……」

 「へっ、高い勉強料だったぜ……」

 一緒になって涙ぐんでる集団は、騙された側お仲間か。
 そりゃ、胸に込み上げる何かもあるな。

 「まっ、戦い以外の依頼だから、お前がやってくれりゃあ助かるって話なんだが?」

 「話進めんのかよ……まぁ、ありがたくはあるな。住む場所も金もねぇからな~」

 「だろ?採取依頼だけだと行き詰まっちまうからな?」

 「だな。今からか?」

 「いや、明日以降で構わんさ」
 
 「おう。わかった」

 手を上げ、別れの挨拶を交わすと、ビルは去っていった。
 見学者達も解散し、抜け殻の2人だけが残っている。

 「お~い、2人共。そろそろ戻って来いや」

 「だって……だってよ?」

 「……」

 「タバサがまだどっかに飛んでるな……まぁ、そう言う訳だから、金を稼ぎに行くが……しばらく厄介になっても良いだろうか?」

 「それは構わないぞ?もともと、そのつもりだったし」

 どうやらリックは、かなりのお人好しだった様だ。
 だから騙されるんだぞ?とは言えないな。イエナイ。
 ぷふっ。

 「ありがたいが、ずっとはダメだろ?俺は新婚家庭に居据わる勇気は無いからな」

 「「なっ、なっ?!」」

 「おっ、タバサお帰り。それでだ。蓄えがあれば、少し家に手を加えておいた方がいいぞ?これから長く暮らすんだろ?2人で」

 「「あっ、いや、うっ」」

 「壁や柱、建付け関係と床や水回り、屋根なんかも修理依頼しといた方がいいな。そこは、2人で話し合って行けばいいがな。今のままじゃちょっとな?」

 「「あぁ……」」

 「まぁ、なんだ。頑張れよ?」

 「お、おう!」

 「そんじゃぁ、洗濯物だな」

 「ん?」

 「ん?じゃねぇよ。洗濯して汚れを流しきるんだよ!」

 「……だな。手伝えよ?リック」

 「タバサ……わかったよぉ……」

 これで今日は、良い香りの布団で眠れそうだな。





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