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今日は4月に入って2回目の木曜日
部屋にある置時計が9時30分を指している
「そろそろ出発しないと遅刻するぞ~」
下の階からお父さんの声が聞こえてくる
今日は入学式が10時からなのでまだ少し余裕はある
「はーい」
それに私は前日に準備を済ませておいたのでそこまで慌てることなく1階へ下りるとタイミングを見計らったかのように丁度チャイムが鳴る
「千陽~行くぞ~」
外から守の声が聞こえる
「それじゃぁ、行ってきます」
私はリビングでゆっくりしているお父さんと食器を洗っているお母さんに手を振ってから家を出る
外では守が自転車に跨って待っていた
「おはよ」
「おはよ~」
お互いに軽く挨拶を済ませてから私は自分の自転車に乗り漕ぎ始める
私たちは学校に着くと自転車を置いてから入学式の会場になっている体育館へ向かった
ガヤガヤガヤガヤ
体育館に入ってみると新入生や保護者、先生たちが並べられたパイプ椅子に腰をかけていた。中には同中なのか親しく話している学生もいれば緊張してガチコチになっている学生もいる
「これは来たもん順で座ってる感じか」
まだクラス発表がされていないのでどこに座っていいか分からなかった私に対して守は直ぐに2つ並んで空いてるパイプ椅子に向かって歩いていった
「早く来いよ千陽」
私は守るの声で我に返り慌てて駆け寄る
「座って待ってようぜ」
「そうだね」
そう言って2人でパイプ椅子に座っていると、私たちより後に来た学生が椅子に座る
「あっ、皇さん。おはよ~」
「おっす皇」
「・・・大空さんに天宮君。おはよう」
隣に座ったのはパッと見は小学生にも見えてしまいそうなスラッガーの皇さんだ
皇さんが来てから5分も経たないうちに式が始まる
特に感動することなく入学式が終わり私たちは掲示板の前に集まっていた
「クラス発表ってワクワクするよね!」
「・・・私はそんなに」
「俺もそんなだなー」
テンションの高い私に対して守と皇さんはそこまでテンションは上がってない
「なんで!?」
「なんでってそりゃ」
守と皇さんは1度目を合わせてから
「「野球の方が大切だし」」
息ぴったりの回答が返ってくる
「あんた達は野球バカかい!」
思わずツッコミを入れてしまう
守は別にいいけど皇さんは華の女子高生だよ!?
「そんなことよりそろそろ見えるんじゃないか?」
そんなことを考えてる私を他所に守は周りの変化に気付く
自分のクラスを確認した生徒が教室へ行き出したので掲示板の周りにいた生徒は結構減っていた
「私C組だ」
「俺はAだな」
「別クラス記録更新だね」
「ほんと、被らないよな」
私と守は小学校に入ってから今まで同じ学校に通いながらも同じクラスになったことが無い。そして今年も別だったので記録を10に伸ばした
「まー、特別クラス抜いても5クラスあるしね。皇さんは何組だった?」
隣では背が低く中々掲示板が見れない皇さんがジャンプをしながら掲示板を見る
5、6回ジャンプをしてからジャンプが止まった
「・・・私もC組」
「ホントに!?ヤッター!」
私はクラスで一人ぼっちにならなかったことに喜びを感じる
「皇もクラスの確認が出来たところでそろそろクラスに向かうか」
「そうだね」
「・・・」コクコク
私たちはこれから3年間お世話になる校舎へと歩き出した
私と皇さんはC組の外に貼られていた座席表を確認する。座席表には6×5で各自名前が書かれている
「流石に席は離れたね」
「・・・そこまで上手くは行かないでしょ」
「ざーんねん」
私と皇さんの名前は少し離れたところに書かれている。席の位置を覚えてから教室に入ってみる。ほとんどの学生が自分の席に座って周りの人達と話していた。私は1番後ろの端っこ(廊下側)の席に荷物を置く。皇さんは3つ隣の列の1番前に座るとスーツを着た先生らしき人物が教室に入ってきた
「みなさん、入学おめでとうございます」
そう言ったのは先ほど入ってきた見た目が30代手前位の中肉中背の男性職員だった
「私はこのクラスの担任になった岡田 光一(おかだ こういち)だ。担当教科は社会でバスケ部の顧問をしている。1年間よろしく」
ハッキリとした口調で自己紹介を終えると名簿1番の学生にも自己紹介をするように話しを振る。話を振られた学生は先頭でも元気に自己紹介を進めていく
1人目が終わり次に見覚えのある学生が立つ
「(ん?)」
「鵜川中学から来ました一色 葵です。高校では野球部に入りたいと思っています。1年間よろしくお願いします」
そう言うと一色さんは着席する
「(一色さんもこのクラスだったんだ)」
私は自分の席しか確認してなかったので一色さんがいることに気が付かなかった
他にも知っている学生が居ないか見渡すがそれらしき人物は見つからない。そんなことをしているといつの間にか自己紹介の順番が私になっていた
「鳩山中学から来ました大空 千陽です。好きなことは野球で、野球部に入ろうと思います。これからもよろしくお願いします」
私は当たり障りのない自己紹介を終えると着席する。自分の番を終えてしまって手持ち無沙汰になったので廊下越しに見える桜の木をぼーっと見る。壁際の特権で窓を少し開けて心地良い風を受けていると少しウトウトしてくる。周りの自己紹介をBGMにして本格的に眠りそうになっていると急に周りの学生たちがざわつき出したのに気づき目が覚める。目を開け自己紹介をしている人を見る
「皇 凛です。今年の目標は聖宗高校を倒して甲子園優勝することです」
自己紹介を終えて皇さんが座ると同時にクスクスと声には出さないように笑っている音が聞こえてくる。確かに小学生のような生徒が女子高校野球界最強と言われている聖宗高校を倒して優勝すると言っても虚言妄言の類と思われるのは仕方がないのかもしれない
そんな皇さんの自己紹介が終わってからは特に面白い自己紹介がなかったので私は春の風に吹かれながらウトウト仕出した
「明日は学校内にある施設の説明をしたり再来週にあるスポーツ大会のメンバーを決めるので配られたプリントを確認して出たい種目を決めてきて下さい。それではまた明日」
そう言って先生は颯爽と教室を出ていってしまった
先生が出ていくのに合わせて生徒たちも動き出す。その中で席を立ち私の方へ歩いてくる生徒が2人
「大空さんも同じクラスだったんだね」
なかなか会話する機会がなく今日初めて話す一色さんと皇さんだった
「せっかく同じクラスになったんだし千陽って呼んでよ」
「なら私の事も葵って呼んでね」
「いいよ~。皇さんの事も凛って呼んでいい?」
「・・・構わない。・・・それより部活」
「そうだった!早く行こ!」
私は直ぐにプリントをカバンに片付けて席を立つ
「ねぇねぇ、あなた達」
すると私の後ろから声をかけられる
「「???」」
まだ名前を覚えられてない私と凛ちゃんは頭にハテナを浮かべる
「え~っと片山さんだっけ?」
葵ちゃんは相手の名前を覚えていたらしく名前を呼ぶ
片山さんと呼ばれたのは正しく女子高生と言った感じの子で周りには男女合わせて7人ほどクラスの人達が集まっていた
「わぁ~覚えてくれたんだ!」
名前を覚えてくれていたのがそんなに嬉しかったのかやたらとテンションが高い
「そうそう!これから私たちカラオケで懇親会をしようと思ってるんだけど一緒に来ない?」
「あーごめんね。私たちこれから練習なんだ」
申し訳なさそうに断る葵ちゃん
「えー!練習なんてこれからいつでも出来るじゃん!今日くらい遊ぼうよ!」
「そうだぜ。1日くらい遊んだってバチは当たらねーぜ」
「それに野球よりカラオケの方が絶対楽しいよ!」
片山さんに便乗するように後ろの方から声がかかる
「てか野球なんて男子がやるもんでしょ」
「だよねー、男子がやってたらカッコイイけど女子がやってても汗臭いだけだよねー」
女子野球が発展してきても未だにこの手の野球=男子っていうイメージの人が多いのが現状だ
「・・・もういいかしら。私たちは早く練習に行きたいの」
遊びの誘いと偏見にうんざりした凛ちゃんは荷物を持って教室から出ていく
「あいつ自己紹介の時に甲子園優勝するって言ってたヤツだ」
「あーあの(笑)」
集団から人をバカにしたような不愉快な笑い声に耐えられなくなった私と葵ちゃんも教室を出る
「未だにあんな考え方の人いるんだね」
教室で聞いた発言を思い返しながら私は呆れたように言う
「実際男子と比べたらまだまだレベル低いからね」
葵ちゃんが言ったことは悲しくも事実で女子プロ野球リーグが発足して数十年経った今でも男子のレベルに追いつけてはいない
「まーそもそも女子と男子じゃ身体の作りが違うからね」
「・・・笑いたい奴は笑わせればいい。あんな奴らと話してる時間が勿体ない」
そう言うと凛ちゃんは歩くペースを上げグランドに向かう
私たちは更衣室でユニホームに着替えてからグランドに到着した時にはもう音無さんが1人でスパイクの土を落としていた。それに習って私たち3人も並んでスパイクの土を落としていると照さんと京極さん、七瀬さんの3人が到着する。全員がグランドに着くと直ぐに照さんから集合がかかる
「今日来てくれたってことはみんな入部してくれるってことで良いのかな?」
照さんの問いかけにみんな頷いて返事をする
「それは良かった。でもこの学校って部活の本入部がスポーツ大会の後なんだよね」
「本入部じゃないと何か不都合でも?」
照さんの言いたい事がイマイチ理解出来ない七瀬さんが質問をする
「仮入部だと練習時間が6時半までで7時前には学校を出ないとダメなの。それに公式戦にも出れないから春の大会には参加出来ないんだよ。決勝リーグまでに本入部出来たら試合に出れるけどうちはエントリーすらしてないから関係ないけどね」
もしエントリーして決勝リーグまで残れたら試合に出れた可能性もあった訳か~
私は少し残念に思いながらも気持ちを切り替える
「あとこの学校、公式戦に参加できる人数集まらないと部活として認定してくれないから気をつけてね」
「え?そうなの?」
「まじかよ」
「へ~」
私を含めて京極さんと七瀬さんは知らなかったので驚くが残りのメンバーは予想通りと言った表情だ
「部活として認定されてないのにグランド使っても大丈夫なんですか?」
ご最もな反応をしたのは葵ちゃんだった
それもそのはず、今使わせてもらってるグランドは野球部にとっては第3グランドのような扱いになっており、今日から新入生が使う予定だったはず(守談)
「男子野球部と交渉して同好会っていう形で火、木、日の週3回使わして貰えるようになってるよ」
「よく野球部の監督は日曜日を使わせてくれましたね」
平日はともかく日曜日まで使わせてくれるとは思ってもいなかった
「これが私の交渉術だよ」
照さんはエッヘンと胸を張って言う
「という訳で時間も日数も少ないのでぱっぱと練習始めようか」
「「「はい!」」」
私たちはハリのある声で返事をしてアップに移った
部屋にある置時計が9時30分を指している
「そろそろ出発しないと遅刻するぞ~」
下の階からお父さんの声が聞こえてくる
今日は入学式が10時からなのでまだ少し余裕はある
「はーい」
それに私は前日に準備を済ませておいたのでそこまで慌てることなく1階へ下りるとタイミングを見計らったかのように丁度チャイムが鳴る
「千陽~行くぞ~」
外から守の声が聞こえる
「それじゃぁ、行ってきます」
私はリビングでゆっくりしているお父さんと食器を洗っているお母さんに手を振ってから家を出る
外では守が自転車に跨って待っていた
「おはよ」
「おはよ~」
お互いに軽く挨拶を済ませてから私は自分の自転車に乗り漕ぎ始める
私たちは学校に着くと自転車を置いてから入学式の会場になっている体育館へ向かった
ガヤガヤガヤガヤ
体育館に入ってみると新入生や保護者、先生たちが並べられたパイプ椅子に腰をかけていた。中には同中なのか親しく話している学生もいれば緊張してガチコチになっている学生もいる
「これは来たもん順で座ってる感じか」
まだクラス発表がされていないのでどこに座っていいか分からなかった私に対して守は直ぐに2つ並んで空いてるパイプ椅子に向かって歩いていった
「早く来いよ千陽」
私は守るの声で我に返り慌てて駆け寄る
「座って待ってようぜ」
「そうだね」
そう言って2人でパイプ椅子に座っていると、私たちより後に来た学生が椅子に座る
「あっ、皇さん。おはよ~」
「おっす皇」
「・・・大空さんに天宮君。おはよう」
隣に座ったのはパッと見は小学生にも見えてしまいそうなスラッガーの皇さんだ
皇さんが来てから5分も経たないうちに式が始まる
特に感動することなく入学式が終わり私たちは掲示板の前に集まっていた
「クラス発表ってワクワクするよね!」
「・・・私はそんなに」
「俺もそんなだなー」
テンションの高い私に対して守と皇さんはそこまでテンションは上がってない
「なんで!?」
「なんでってそりゃ」
守と皇さんは1度目を合わせてから
「「野球の方が大切だし」」
息ぴったりの回答が返ってくる
「あんた達は野球バカかい!」
思わずツッコミを入れてしまう
守は別にいいけど皇さんは華の女子高生だよ!?
「そんなことよりそろそろ見えるんじゃないか?」
そんなことを考えてる私を他所に守は周りの変化に気付く
自分のクラスを確認した生徒が教室へ行き出したので掲示板の周りにいた生徒は結構減っていた
「私C組だ」
「俺はAだな」
「別クラス記録更新だね」
「ほんと、被らないよな」
私と守は小学校に入ってから今まで同じ学校に通いながらも同じクラスになったことが無い。そして今年も別だったので記録を10に伸ばした
「まー、特別クラス抜いても5クラスあるしね。皇さんは何組だった?」
隣では背が低く中々掲示板が見れない皇さんがジャンプをしながら掲示板を見る
5、6回ジャンプをしてからジャンプが止まった
「・・・私もC組」
「ホントに!?ヤッター!」
私はクラスで一人ぼっちにならなかったことに喜びを感じる
「皇もクラスの確認が出来たところでそろそろクラスに向かうか」
「そうだね」
「・・・」コクコク
私たちはこれから3年間お世話になる校舎へと歩き出した
私と皇さんはC組の外に貼られていた座席表を確認する。座席表には6×5で各自名前が書かれている
「流石に席は離れたね」
「・・・そこまで上手くは行かないでしょ」
「ざーんねん」
私と皇さんの名前は少し離れたところに書かれている。席の位置を覚えてから教室に入ってみる。ほとんどの学生が自分の席に座って周りの人達と話していた。私は1番後ろの端っこ(廊下側)の席に荷物を置く。皇さんは3つ隣の列の1番前に座るとスーツを着た先生らしき人物が教室に入ってきた
「みなさん、入学おめでとうございます」
そう言ったのは先ほど入ってきた見た目が30代手前位の中肉中背の男性職員だった
「私はこのクラスの担任になった岡田 光一(おかだ こういち)だ。担当教科は社会でバスケ部の顧問をしている。1年間よろしく」
ハッキリとした口調で自己紹介を終えると名簿1番の学生にも自己紹介をするように話しを振る。話を振られた学生は先頭でも元気に自己紹介を進めていく
1人目が終わり次に見覚えのある学生が立つ
「(ん?)」
「鵜川中学から来ました一色 葵です。高校では野球部に入りたいと思っています。1年間よろしくお願いします」
そう言うと一色さんは着席する
「(一色さんもこのクラスだったんだ)」
私は自分の席しか確認してなかったので一色さんがいることに気が付かなかった
他にも知っている学生が居ないか見渡すがそれらしき人物は見つからない。そんなことをしているといつの間にか自己紹介の順番が私になっていた
「鳩山中学から来ました大空 千陽です。好きなことは野球で、野球部に入ろうと思います。これからもよろしくお願いします」
私は当たり障りのない自己紹介を終えると着席する。自分の番を終えてしまって手持ち無沙汰になったので廊下越しに見える桜の木をぼーっと見る。壁際の特権で窓を少し開けて心地良い風を受けていると少しウトウトしてくる。周りの自己紹介をBGMにして本格的に眠りそうになっていると急に周りの学生たちがざわつき出したのに気づき目が覚める。目を開け自己紹介をしている人を見る
「皇 凛です。今年の目標は聖宗高校を倒して甲子園優勝することです」
自己紹介を終えて皇さんが座ると同時にクスクスと声には出さないように笑っている音が聞こえてくる。確かに小学生のような生徒が女子高校野球界最強と言われている聖宗高校を倒して優勝すると言っても虚言妄言の類と思われるのは仕方がないのかもしれない
そんな皇さんの自己紹介が終わってからは特に面白い自己紹介がなかったので私は春の風に吹かれながらウトウト仕出した
「明日は学校内にある施設の説明をしたり再来週にあるスポーツ大会のメンバーを決めるので配られたプリントを確認して出たい種目を決めてきて下さい。それではまた明日」
そう言って先生は颯爽と教室を出ていってしまった
先生が出ていくのに合わせて生徒たちも動き出す。その中で席を立ち私の方へ歩いてくる生徒が2人
「大空さんも同じクラスだったんだね」
なかなか会話する機会がなく今日初めて話す一色さんと皇さんだった
「せっかく同じクラスになったんだし千陽って呼んでよ」
「なら私の事も葵って呼んでね」
「いいよ~。皇さんの事も凛って呼んでいい?」
「・・・構わない。・・・それより部活」
「そうだった!早く行こ!」
私は直ぐにプリントをカバンに片付けて席を立つ
「ねぇねぇ、あなた達」
すると私の後ろから声をかけられる
「「???」」
まだ名前を覚えられてない私と凛ちゃんは頭にハテナを浮かべる
「え~っと片山さんだっけ?」
葵ちゃんは相手の名前を覚えていたらしく名前を呼ぶ
片山さんと呼ばれたのは正しく女子高生と言った感じの子で周りには男女合わせて7人ほどクラスの人達が集まっていた
「わぁ~覚えてくれたんだ!」
名前を覚えてくれていたのがそんなに嬉しかったのかやたらとテンションが高い
「そうそう!これから私たちカラオケで懇親会をしようと思ってるんだけど一緒に来ない?」
「あーごめんね。私たちこれから練習なんだ」
申し訳なさそうに断る葵ちゃん
「えー!練習なんてこれからいつでも出来るじゃん!今日くらい遊ぼうよ!」
「そうだぜ。1日くらい遊んだってバチは当たらねーぜ」
「それに野球よりカラオケの方が絶対楽しいよ!」
片山さんに便乗するように後ろの方から声がかかる
「てか野球なんて男子がやるもんでしょ」
「だよねー、男子がやってたらカッコイイけど女子がやってても汗臭いだけだよねー」
女子野球が発展してきても未だにこの手の野球=男子っていうイメージの人が多いのが現状だ
「・・・もういいかしら。私たちは早く練習に行きたいの」
遊びの誘いと偏見にうんざりした凛ちゃんは荷物を持って教室から出ていく
「あいつ自己紹介の時に甲子園優勝するって言ってたヤツだ」
「あーあの(笑)」
集団から人をバカにしたような不愉快な笑い声に耐えられなくなった私と葵ちゃんも教室を出る
「未だにあんな考え方の人いるんだね」
教室で聞いた発言を思い返しながら私は呆れたように言う
「実際男子と比べたらまだまだレベル低いからね」
葵ちゃんが言ったことは悲しくも事実で女子プロ野球リーグが発足して数十年経った今でも男子のレベルに追いつけてはいない
「まーそもそも女子と男子じゃ身体の作りが違うからね」
「・・・笑いたい奴は笑わせればいい。あんな奴らと話してる時間が勿体ない」
そう言うと凛ちゃんは歩くペースを上げグランドに向かう
私たちは更衣室でユニホームに着替えてからグランドに到着した時にはもう音無さんが1人でスパイクの土を落としていた。それに習って私たち3人も並んでスパイクの土を落としていると照さんと京極さん、七瀬さんの3人が到着する。全員がグランドに着くと直ぐに照さんから集合がかかる
「今日来てくれたってことはみんな入部してくれるってことで良いのかな?」
照さんの問いかけにみんな頷いて返事をする
「それは良かった。でもこの学校って部活の本入部がスポーツ大会の後なんだよね」
「本入部じゃないと何か不都合でも?」
照さんの言いたい事がイマイチ理解出来ない七瀬さんが質問をする
「仮入部だと練習時間が6時半までで7時前には学校を出ないとダメなの。それに公式戦にも出れないから春の大会には参加出来ないんだよ。決勝リーグまでに本入部出来たら試合に出れるけどうちはエントリーすらしてないから関係ないけどね」
もしエントリーして決勝リーグまで残れたら試合に出れた可能性もあった訳か~
私は少し残念に思いながらも気持ちを切り替える
「あとこの学校、公式戦に参加できる人数集まらないと部活として認定してくれないから気をつけてね」
「え?そうなの?」
「まじかよ」
「へ~」
私を含めて京極さんと七瀬さんは知らなかったので驚くが残りのメンバーは予想通りと言った表情だ
「部活として認定されてないのにグランド使っても大丈夫なんですか?」
ご最もな反応をしたのは葵ちゃんだった
それもそのはず、今使わせてもらってるグランドは野球部にとっては第3グランドのような扱いになっており、今日から新入生が使う予定だったはず(守談)
「男子野球部と交渉して同好会っていう形で火、木、日の週3回使わして貰えるようになってるよ」
「よく野球部の監督は日曜日を使わせてくれましたね」
平日はともかく日曜日まで使わせてくれるとは思ってもいなかった
「これが私の交渉術だよ」
照さんはエッヘンと胸を張って言う
「という訳で時間も日数も少ないのでぱっぱと練習始めようか」
「「「はい!」」」
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