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7球目
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入学式から10日ほど経ち慣れてきた通学路を1人で歩いているといつもと違う校門が見えてくる
「学園祭じゃないのに何でこんなに派手なの?」
デカデカと「新入生歓迎スポーツ大会」という看板が立てかけられている校門に対して呆気に取られる
「そんなとこで何やってんだ?」
ジャージ姿で野球道具を運んでいる守が声をかけてくる
「ちょっと看板を眺めてただけだよ」
「これ凄いよな」
隣に来た守も一緒に看板を眺める
2、3分眺めていると声をかけられる
「おーい、守~そろそろ戻ってこーい」
少し視線を下げ声をかけてきたであろう人を見る
そこには高校1年生にしては少し背が高く細身の生徒がジャージを見にまといこちらを見ていた
「げっ風見君」
彼の名前は風見 直也(かざみ なおや)
一見軽そうに見える彼だが実は守と一緒に世代別代表の選手で全試合1番センターで出場するほどの実力者である
そして私はあまり彼のことが得意ではないのでとる手段は一択!
「じゃ!また後で!」
私は目の前の校門ではなく逆側にある裏門へ向かって走り出した
正門での出来事から10分後、私は無事教室に到達する
「セーフ!」
塁審と同じように手を横に広げながら教室に入ると見慣れたクラスメイトが出迎えてくれる
「遅かったね」
「・・・もうすぐホームルーム」
出迎えてくれたのはチームメイトでスポーツ大会も一緒に野球で出場する葵ちゃんと凛ちゃんだった
「ちょっと遠回りしててねー」
「そうなんだ。でもおかげでアップは十分そうだね」
教室に着いた私は頭から湯気が出るほどではないにしても顔が少し赤みがかっていたらしい
「1回戦からガンガン行けるよ!」
そのセリフと共にホームルームのチャイムが鳴る
「野球大会に出場するチームの代表は集まってくださーい」
その声と共に16人の生徒達が大会実行委員の生徒の元に集まる
ちなみにC組の代表はじゃんけんの結果葵ちゃんとなった
代表が集まっている間暇なので私と凛ちゃんはキャッチボールをして待っていると七瀬さんがこちらに向かって歩いてくる
「2人ともやっほー」
七瀬さんは軽く挨拶をしてくれる
「おはよー。七瀬さんも野球に出るの?」
「そうだよー」
「京極さんは?」
七瀬さんは黙って代表が集まっている方を指す。その動作だけで何が言いたいのか理解出来た
B組(京極さんと七瀬さんのクラス)の代表は京極さんらしい。大体こういう時は経験者が代表になる事が多いため、そこまで驚くことではない
それから少し会話をしていると集まっていた代表が解散し、葵ちゃんと京極さんがこちらに向かって歩いてくるのが見えた
「組み合わせどうだったー!?」
早く組み合わせを知りたかった七瀬さんが待ちきれずに大きな声で聞く
「1回戦は3年C組だ!」
七瀬さん以上の大声で京極さんが返答する
「あちゃー」
七瀬さんさんは右手を額に当てて上をむく
いくら野球部が出場しないからと言って3年男子はかなり厳しい戦いになるかもしれない
「いきなり厳しい所引いてきたね」
「うん、まーでもなんとかなるっしょ」
「俺が打って抑えれば何処だろうと関係ねーな!」
こちらの会話が聞こえるくらいの距離まで近づいていた京極さんが自信満々に応える
「作戦会議でもしに行こっか」
「俺らに当たるまで負けるんじゃねーぞ!」
そう言って2人は他のメンバーの所に行ってしまう
「それで私たちの相手は?」
「私たちの初戦は2年のA組だね」
「いきなり2年生か~。気は抜けないね」
「そうだね。でも千陽ちゃんが投げるなら大丈夫だよ」
「・・・点は取ってあげる」
「これは頼もしいね~。凛ちゃんのかっこいい発言も聞けたしまずは初戦頑張ってこー!」
「「おー」」
声とともに3人で拳を天に向けて突き上げた
「「「かんぱーい」」」
私たちは1回戦と2回戦を快勝で勝ち上がり無事準決勝にコマを進めることが出来た
準決勝はお昼休み明けの13時からなので昼食を済ませる事にした
「こっちのブロックには経験者っぽい人は居なさそうだね」
私は爆弾おにぎりを頬張りながら話す
「う~ん、即戦力になりそうな人はいなかったね」
可愛くてバランスのいい弁当を食べながら葵ちゃんは先の2試合を思い出す
「凛ちゃんは誰かめぼしい選手見つかった?」
隣で3個目の菓子パンを頬張っている凛ちゃんに話を振ってみるが一言も発さずに首を横に振るだけだった
「だよね~。準決勝で良さそうな人見つけなきゃね~。そう言えば準決勝の相手ってどこだっけ?」
「1年D組だから音無さんの所だね」
「へぇ~、音無さんの所が残ってるなんて意外だね」
私達は試合がない時は守の応援に行っており他の試合を全く見ていない為、D組にどんな選手がいるか全く情報がない
「ここまで勝ち残ってるって事は何か要因があるはずだから気をつけないとね」
「・・・千陽が投げれば大丈夫」
「おっ嬉しいこと言ってくれるねー」
私は凛ちゃんに褒められて素直に喜ぶ
「・・・と言うよりこのレベルで点取られるようじゃお仕置が必要」
そう言って凛ちゃんはバットを持たずにエアーで素振りをする
「お尻が割れちゃうからそれは勘弁」
「冗談はそれくらいにして体動かしに行こっか」
野菜ジュースを飲み切った葵ちゃんがそう言って閉める
「そうだね」
「・・・」コクコク
「プレイボール」
球審を務める体育教師のコールと共に準決勝の1年C組対1年D組の試合が始まった。ちなみに準決勝までは5回までで決勝は7回までしっかりやる予定らしい
先攻はD組。1番はチームメイトの音無さんが右打席に入る
(音無さんって守備は上手いけど打撃はそこまでなんだよね)
目立つ事が嫌いな音無さんはバントやチーム打撃は上手なんだけどフルスイングをしてる所を見たことがない
「(初球はストライクゾーンにストレート)」
葵ちゃんとの取り決めでピンチになるまで基本大まかなサインしか出さない事になっている
シュッ
キンッ
私の投じた1球目を音無さんは綺麗に合わせる。鋭くはない当たりだったが三遊間を抜けヒットになる
「あれま」
まさか初球から打たれるとは思ってなかったので少し驚く
「千陽ちゃん。気にしちゃダメだよ」
すかさず葵ちゃんが声をかけてくれる
私は気を取り直して次の打者をセカンドゴロに打ち取るが2塁でアウトが取れなかったので進塁されたが1つアウトをとることが出来た
(次の打者はっと)
綺麗な黒髪をなびかせながらお嬢様の様な子が右打席に入る
(うわぁ綺麗な子…うちの学校にもあんな子居るんだ)
構えるまでの動作に見蕩れてしまった気を引き締めるために私は首を振り改めてサインを見る
「(アウトコースにストレート)」
いきなりピンチになったのでしっかりとしたサインが送られてくる
シュッ
ズバン
我ながらいい所に行ったボールはそのままストライクゾーンに収まるが
(それにしても今の見送り方やだなぁ~。観察されてるみたい)
素人らしくない見送られ方に少し嫌な感じがする
「(次は低めにカーブ)」
さっきのボールを見てか打者はバッターボックスの1番後ろに立つ
(素人のはずなのに立ち位置まで変えるんだ)
普通未経験者にバッターボックスの立ち位置を変えるなんて出来るとは思えない。さっきの見送り方といいこの子只者じゃないと直感的に感じる
私は今までの遊び感覚から真剣モードに切り替える
(この子は本気で打ち取りに行く)
シュッ
ストライクゾーンからボール1個分外れ、打席の1番後ろに立っていればバットが届くはずのないコースに・・・
キン!
決まるはずだったボールが金属音を響かせサード後方のフェアゾーンに落ちる
(あのコースが打たれた!?)
ボールはをレフトが後逸しボールはフェンスまで転がる。ボールが戻ってきた時にはバッターが三塁に到達した後だった
「タイム!」
タイムをとって葵ちゃんがマウンドに駆け寄ってくる
「あの子は一体…」
打たれると思ってなかった葵ちゃんも動揺が隠せないらしい
「まさか、あのコースの変化球にバットが届くなんて思ってなかった」
「あの子ステップした」
「ステップ?」
「うん。サイドステップみたいに前に移動してカーブがボールになる前に打ったみたい」
「そんな芸当見たことないよ…」
プロの試合でも見たことないような打ち方が出来るなんて
「取り敢えず、動揺もあると思うけどこれ以上失点すると危険だし切り替えていこ」
「そうだね」
タイム後は失点もなく無事チェンジする事が出来た
「さっ、取られた分取り返しに行こっか」
1番打者である葵ちゃんがヘルメットを被り打席に向かう。対する相手投手は先程芸術的なバッティングをした3番の子である。投球フォームを見た感じ日本で指導を受けてないのではと思えるほど自由な投球フォームをしている
「葵ちゃん!行ったれー!」
すると聞こえたのかこちらをチラッを視線をくれる
「アウト」
葵ちゃんは11球粘ったのにセカンドゴロに打ち取られる
「どうだった?」
「多分だけど天然のムービングだね。結構厄介だよ」
ムービングって、ムービングファストボールの事?確かストレートの軌道でボールが曲がるってやつ。知識としては知ってるけど日本じゃあまり馴染みのない変化球だよね
今まであまり対戦のしたことが無い投手なのでワクワクする
「よし来い!」
私は気合いを入れながらバッターボックスに入る
「はぁ~~~」
私はガックリと肩を落としてベンチに座り込む
「落ち込んでないでキャッチボールしよ」
優しく葵ちゃんが声をかけてくれる
「…うん」
私がここまで落ち込んでいるのは見事に三振に取られてしまったからである。しかも見たかったムービングは見れずスライダー、カーブ、シュート、フォークと変化球の見本市のような投球で三振してしまったので尚更である
「あんまり気にしなくていいと思うよ。確かに変化はしてたけどキレも変化量も多くないし結構わかるレベルで投球フォームも変わるし、次は打てるよ。それよりこれ以上失点しない事考えよ。点は凛ちゃんが取ってくれるよ」
「そうだね」
その凛ちゃんは4球目をサードのグラブを弾き飛ばしてヒットにしていた。しかし、その後は続かずC組の攻撃は終わる
その後もランナーは出すものの1点が遠く気づけば最終回になってしまう。こちらも点を与えることなく来たので1点差で負けてしまっている。しかし、打順は9番からの好打順
先頭打者は打ち取られてしまうが、葵ちゃんはカーブを合わせてセンター前、私はスライダーを引っ掛けてしまうが相手のエラーに助けられワンナウト一、二塁のチャンスを作り出す
予想以上の好試合で球場のボルテージが高くなる
「頼んだよ!凛ちゃん!」
「行けー!皇ー!」
「ピッチャーの子頑張れ~!」
それぞれの声援が重なり誰が応援されているのか分からなくなる
アウトコースのストレート、ボール
真ん中低めのフォーク、ボール
インコースのスライダー、ボール
中々ストライクが入らないのかボールが先行し、スリーボールになる
アウトコースのカーブ、ストライク
インコースのストレート、ファール
今度は逆に2球で追い込みフルカウントになるが、どちらの方が優勢なのか表情を見れば明らかである。そして、勝負の6球目。投じられたアウトコース低めにストライクからボールになるはずだったフォークを凛ちゃんは斜め前方にステップをしてレフトスタンドへ叩き込んだ
「学園祭じゃないのに何でこんなに派手なの?」
デカデカと「新入生歓迎スポーツ大会」という看板が立てかけられている校門に対して呆気に取られる
「そんなとこで何やってんだ?」
ジャージ姿で野球道具を運んでいる守が声をかけてくる
「ちょっと看板を眺めてただけだよ」
「これ凄いよな」
隣に来た守も一緒に看板を眺める
2、3分眺めていると声をかけられる
「おーい、守~そろそろ戻ってこーい」
少し視線を下げ声をかけてきたであろう人を見る
そこには高校1年生にしては少し背が高く細身の生徒がジャージを見にまといこちらを見ていた
「げっ風見君」
彼の名前は風見 直也(かざみ なおや)
一見軽そうに見える彼だが実は守と一緒に世代別代表の選手で全試合1番センターで出場するほどの実力者である
そして私はあまり彼のことが得意ではないのでとる手段は一択!
「じゃ!また後で!」
私は目の前の校門ではなく逆側にある裏門へ向かって走り出した
正門での出来事から10分後、私は無事教室に到達する
「セーフ!」
塁審と同じように手を横に広げながら教室に入ると見慣れたクラスメイトが出迎えてくれる
「遅かったね」
「・・・もうすぐホームルーム」
出迎えてくれたのはチームメイトでスポーツ大会も一緒に野球で出場する葵ちゃんと凛ちゃんだった
「ちょっと遠回りしててねー」
「そうなんだ。でもおかげでアップは十分そうだね」
教室に着いた私は頭から湯気が出るほどではないにしても顔が少し赤みがかっていたらしい
「1回戦からガンガン行けるよ!」
そのセリフと共にホームルームのチャイムが鳴る
「野球大会に出場するチームの代表は集まってくださーい」
その声と共に16人の生徒達が大会実行委員の生徒の元に集まる
ちなみにC組の代表はじゃんけんの結果葵ちゃんとなった
代表が集まっている間暇なので私と凛ちゃんはキャッチボールをして待っていると七瀬さんがこちらに向かって歩いてくる
「2人ともやっほー」
七瀬さんは軽く挨拶をしてくれる
「おはよー。七瀬さんも野球に出るの?」
「そうだよー」
「京極さんは?」
七瀬さんは黙って代表が集まっている方を指す。その動作だけで何が言いたいのか理解出来た
B組(京極さんと七瀬さんのクラス)の代表は京極さんらしい。大体こういう時は経験者が代表になる事が多いため、そこまで驚くことではない
それから少し会話をしていると集まっていた代表が解散し、葵ちゃんと京極さんがこちらに向かって歩いてくるのが見えた
「組み合わせどうだったー!?」
早く組み合わせを知りたかった七瀬さんが待ちきれずに大きな声で聞く
「1回戦は3年C組だ!」
七瀬さん以上の大声で京極さんが返答する
「あちゃー」
七瀬さんさんは右手を額に当てて上をむく
いくら野球部が出場しないからと言って3年男子はかなり厳しい戦いになるかもしれない
「いきなり厳しい所引いてきたね」
「うん、まーでもなんとかなるっしょ」
「俺が打って抑えれば何処だろうと関係ねーな!」
こちらの会話が聞こえるくらいの距離まで近づいていた京極さんが自信満々に応える
「作戦会議でもしに行こっか」
「俺らに当たるまで負けるんじゃねーぞ!」
そう言って2人は他のメンバーの所に行ってしまう
「それで私たちの相手は?」
「私たちの初戦は2年のA組だね」
「いきなり2年生か~。気は抜けないね」
「そうだね。でも千陽ちゃんが投げるなら大丈夫だよ」
「・・・点は取ってあげる」
「これは頼もしいね~。凛ちゃんのかっこいい発言も聞けたしまずは初戦頑張ってこー!」
「「おー」」
声とともに3人で拳を天に向けて突き上げた
「「「かんぱーい」」」
私たちは1回戦と2回戦を快勝で勝ち上がり無事準決勝にコマを進めることが出来た
準決勝はお昼休み明けの13時からなので昼食を済ませる事にした
「こっちのブロックには経験者っぽい人は居なさそうだね」
私は爆弾おにぎりを頬張りながら話す
「う~ん、即戦力になりそうな人はいなかったね」
可愛くてバランスのいい弁当を食べながら葵ちゃんは先の2試合を思い出す
「凛ちゃんは誰かめぼしい選手見つかった?」
隣で3個目の菓子パンを頬張っている凛ちゃんに話を振ってみるが一言も発さずに首を横に振るだけだった
「だよね~。準決勝で良さそうな人見つけなきゃね~。そう言えば準決勝の相手ってどこだっけ?」
「1年D組だから音無さんの所だね」
「へぇ~、音無さんの所が残ってるなんて意外だね」
私達は試合がない時は守の応援に行っており他の試合を全く見ていない為、D組にどんな選手がいるか全く情報がない
「ここまで勝ち残ってるって事は何か要因があるはずだから気をつけないとね」
「・・・千陽が投げれば大丈夫」
「おっ嬉しいこと言ってくれるねー」
私は凛ちゃんに褒められて素直に喜ぶ
「・・・と言うよりこのレベルで点取られるようじゃお仕置が必要」
そう言って凛ちゃんはバットを持たずにエアーで素振りをする
「お尻が割れちゃうからそれは勘弁」
「冗談はそれくらいにして体動かしに行こっか」
野菜ジュースを飲み切った葵ちゃんがそう言って閉める
「そうだね」
「・・・」コクコク
「プレイボール」
球審を務める体育教師のコールと共に準決勝の1年C組対1年D組の試合が始まった。ちなみに準決勝までは5回までで決勝は7回までしっかりやる予定らしい
先攻はD組。1番はチームメイトの音無さんが右打席に入る
(音無さんって守備は上手いけど打撃はそこまでなんだよね)
目立つ事が嫌いな音無さんはバントやチーム打撃は上手なんだけどフルスイングをしてる所を見たことがない
「(初球はストライクゾーンにストレート)」
葵ちゃんとの取り決めでピンチになるまで基本大まかなサインしか出さない事になっている
シュッ
キンッ
私の投じた1球目を音無さんは綺麗に合わせる。鋭くはない当たりだったが三遊間を抜けヒットになる
「あれま」
まさか初球から打たれるとは思ってなかったので少し驚く
「千陽ちゃん。気にしちゃダメだよ」
すかさず葵ちゃんが声をかけてくれる
私は気を取り直して次の打者をセカンドゴロに打ち取るが2塁でアウトが取れなかったので進塁されたが1つアウトをとることが出来た
(次の打者はっと)
綺麗な黒髪をなびかせながらお嬢様の様な子が右打席に入る
(うわぁ綺麗な子…うちの学校にもあんな子居るんだ)
構えるまでの動作に見蕩れてしまった気を引き締めるために私は首を振り改めてサインを見る
「(アウトコースにストレート)」
いきなりピンチになったのでしっかりとしたサインが送られてくる
シュッ
ズバン
我ながらいい所に行ったボールはそのままストライクゾーンに収まるが
(それにしても今の見送り方やだなぁ~。観察されてるみたい)
素人らしくない見送られ方に少し嫌な感じがする
「(次は低めにカーブ)」
さっきのボールを見てか打者はバッターボックスの1番後ろに立つ
(素人のはずなのに立ち位置まで変えるんだ)
普通未経験者にバッターボックスの立ち位置を変えるなんて出来るとは思えない。さっきの見送り方といいこの子只者じゃないと直感的に感じる
私は今までの遊び感覚から真剣モードに切り替える
(この子は本気で打ち取りに行く)
シュッ
ストライクゾーンからボール1個分外れ、打席の1番後ろに立っていればバットが届くはずのないコースに・・・
キン!
決まるはずだったボールが金属音を響かせサード後方のフェアゾーンに落ちる
(あのコースが打たれた!?)
ボールはをレフトが後逸しボールはフェンスまで転がる。ボールが戻ってきた時にはバッターが三塁に到達した後だった
「タイム!」
タイムをとって葵ちゃんがマウンドに駆け寄ってくる
「あの子は一体…」
打たれると思ってなかった葵ちゃんも動揺が隠せないらしい
「まさか、あのコースの変化球にバットが届くなんて思ってなかった」
「あの子ステップした」
「ステップ?」
「うん。サイドステップみたいに前に移動してカーブがボールになる前に打ったみたい」
「そんな芸当見たことないよ…」
プロの試合でも見たことないような打ち方が出来るなんて
「取り敢えず、動揺もあると思うけどこれ以上失点すると危険だし切り替えていこ」
「そうだね」
タイム後は失点もなく無事チェンジする事が出来た
「さっ、取られた分取り返しに行こっか」
1番打者である葵ちゃんがヘルメットを被り打席に向かう。対する相手投手は先程芸術的なバッティングをした3番の子である。投球フォームを見た感じ日本で指導を受けてないのではと思えるほど自由な投球フォームをしている
「葵ちゃん!行ったれー!」
すると聞こえたのかこちらをチラッを視線をくれる
「アウト」
葵ちゃんは11球粘ったのにセカンドゴロに打ち取られる
「どうだった?」
「多分だけど天然のムービングだね。結構厄介だよ」
ムービングって、ムービングファストボールの事?確かストレートの軌道でボールが曲がるってやつ。知識としては知ってるけど日本じゃあまり馴染みのない変化球だよね
今まであまり対戦のしたことが無い投手なのでワクワクする
「よし来い!」
私は気合いを入れながらバッターボックスに入る
「はぁ~~~」
私はガックリと肩を落としてベンチに座り込む
「落ち込んでないでキャッチボールしよ」
優しく葵ちゃんが声をかけてくれる
「…うん」
私がここまで落ち込んでいるのは見事に三振に取られてしまったからである。しかも見たかったムービングは見れずスライダー、カーブ、シュート、フォークと変化球の見本市のような投球で三振してしまったので尚更である
「あんまり気にしなくていいと思うよ。確かに変化はしてたけどキレも変化量も多くないし結構わかるレベルで投球フォームも変わるし、次は打てるよ。それよりこれ以上失点しない事考えよ。点は凛ちゃんが取ってくれるよ」
「そうだね」
その凛ちゃんは4球目をサードのグラブを弾き飛ばしてヒットにしていた。しかし、その後は続かずC組の攻撃は終わる
その後もランナーは出すものの1点が遠く気づけば最終回になってしまう。こちらも点を与えることなく来たので1点差で負けてしまっている。しかし、打順は9番からの好打順
先頭打者は打ち取られてしまうが、葵ちゃんはカーブを合わせてセンター前、私はスライダーを引っ掛けてしまうが相手のエラーに助けられワンナウト一、二塁のチャンスを作り出す
予想以上の好試合で球場のボルテージが高くなる
「頼んだよ!凛ちゃん!」
「行けー!皇ー!」
「ピッチャーの子頑張れ~!」
それぞれの声援が重なり誰が応援されているのか分からなくなる
アウトコースのストレート、ボール
真ん中低めのフォーク、ボール
インコースのスライダー、ボール
中々ストライクが入らないのかボールが先行し、スリーボールになる
アウトコースのカーブ、ストライク
インコースのストレート、ファール
今度は逆に2球で追い込みフルカウントになるが、どちらの方が優勢なのか表情を見れば明らかである。そして、勝負の6球目。投じられたアウトコース低めにストライクからボールになるはずだったフォークを凛ちゃんは斜め前方にステップをしてレフトスタンドへ叩き込んだ
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