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第一章 勇者たちの現在と過去
第10話 Extra 滅びの都市 ノクティア
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──事の発端は、5日前の朝のことだった。
==========
【某日・酒場「クオンシア」】
「いい? 今回のクエストは“高難易度・遺跡調査任務”なの。
報酬はなんと、30,000G! 私たちにふさわしい、本格的で華々しい依頼よ!」
シュガーは酒場の掲示板の前で、ふだんよりも声を張りながらそう宣言していた。
掲げられていた依頼票には、
「調査対象:未踏の古代遺跡、推定危険度:A」と記されていた。
「ふん、Aランク程度の依頼なんざ、俺様がいれば余裕だぜ! 腕が鳴るな!」
ローガは拳を鳴らして威勢よく応え、
バルツはどこからともなく風を吹かせながら、黒いマントを翻した。
「……死せる古王の眠る地──闇と氷の双刃が今、封印を断つ……」
「ふふ……皆さんが逝くというのなら、
私も笑顔でご一緒しますわ……地獄まで。うふふふ……」
ベルガモットもにこやかに、しかしどこか別の意味で恐ろしい笑みを浮かべていた。
かくして、ボンクラ四人組は軽やかに“高難易度遺跡調査任務”へと旅立ったのだった。
==========
──そして、今。
「……で? 誰のせいでこうなったのか、説明してもらおうかしらね……?」
薄暗い遺跡の天井から吊られたまま、シュガーは怒りを露わにして叫んだ。
「最初に言っとくけど、あたしじゃないからね!?
わ、私は『レバー触っちゃダメかも』って言ったわよ!?」
「悪かったな! 俺だよ! 俺が引いたんだよッ!」
ローガが胸を張るように叫ぶ。
「だって、見た瞬間、どう見ても“正解レバー”って雰囲気だったじゃねえか!」
「……たったそれだけの理由で引いたのか。で、その結果がこれか……」
バルツが吊られたままうんざりした声で呟く。
「ふふ……皆さん、本当に愉快ですわねぇ……」
ベルガモットは逆さ吊りのまま、どこか他人事のような口調で微笑み続けていた。
「この無様な姿……
まるでうるさいコバエちゃんたちが、蜘蛛の巣にかかったかのようですわ……
うふふふふ……」
そんな言い争いが続く中、
壁に浮かぶホログラムを見上げたローガが、ふと口を開く。
「……なあ。あそこに浮かんでいる光の石板の中になんか書いてあるけど、
分かるか?」
「こんなの分かるわけないでしょ!」
「くっ……! 俺の持つ“魔刻の書”に載っていれば……!」
「ええっと……
『解除条件:5問連続正解。失敗時:致死性ガス発生』……ですって。
あらあら、大変なことになっちゃいましたねえ……うふふふ」
「え!? ベル、読めるのそれ……?」
「はぁい。少しだけ嗜んでおりまして……」
「で、でも今『失敗時、致死性毒ガス発生』って……」
「ふふ……死ぬ前にもう一度、
リズさんの淹れてくれた温かいハーブティーを飲みたかったですわね……」
「誰か……誰か助けてぇ……!」
*
――そのときだった。
「おや……? 何だか賑やかな声が聞こえたと思えば……
これはまた、珍しい状況ですね」
柔らかく落ち着いた声とともに、遺跡の奥からひとりの青年が現れた。
金髪の髪を後ろに流し、整った顔立ちに涼やかな眼差しを浮かべた青年。
身にまとう軍服は、質の高い刺繍が施された調査用の礼装であり、
彼の身分を物語っていた。
「えっ……誰? 助けに来てくれた人? それとも罠の……」
「いえいえ、罠の仕掛け人ではありませんよ。
私はただ、ふとこの遺跡に立ち寄っていただけの者です」
青年は一歩前に進み、微笑を浮かべたまま丁寧に一礼した。
「私はヒューバート=ドランシエル。ドランシエル家遠征調査部隊の隊長です」
「ドランシエル家って……まさか、あの!?」
シュガーが目を見開く。
彼女を含むプロテマイアの冒険者であれば、
プロテマイアの領主──ドランシエル家の名を知らぬ者などいない。
「えっ、えええ!? うそ……って、え?
でも、なんか……この人の顔……どこかで見たような……」
シュガーが困惑したように眉をひそめる。
(この顔……確か……あれ? 酒場クオンシアで見たような……
いや、でもこんな優しそうな目している人は酒場にはいなかったはずだし……)
記憶の奥底に引っかかりを覚えるが、名前まで思い出すには至らなかった。
ヒューバートはふとホログラムに目を向け、内容を確認する。
「ふむ、なるほど。古代文字……これは少々複雑な暗号化がなされていますね」
彼は手袋を整え、冷静に続ける。
「王都のアカデミーで古代言語を修めておりまして、ある程度の読解は可能です。
おそらくこの表示は、五問連続で正解すれば罠が解除される形式……
失敗すれば──致死性のガス、というわけですね」
「うぉ……さっきベルが言っていたのと同じだ……
本当に読めちゃうんですね?」
「ふふ。伝説の≪探求の勇者≫ほどではないですが、
探求と分析こそ私の本分ですので」
ヒューバートは軽く笑い、装置のホログラムに手をかけた。
──その瞬間、浮かび上がる3択の設問。
「ふむ……これは単なる古代語の翻訳ではありませんね。
文法構造が《リューク語系統》……
いや、時代的には《ヴェル=シェン文化圏》の再構築符号でしょう」
彼は流れるように選択肢を分析し、次々と正解していく。
その様子を、吊られたままの4人が口をぽかんと開けて見守っていた。
「す、すげぇ……」
「な、なんか知性が溢れてるぅ……」
「かっ、カッコいい……ッ!」
「わたくしの“尊敬する殿方ランキング”が書き換えられましたわぁ。うふふふふ……」
最終問題にも難なく正解し、天井の装置がガコンと音を立てて開放される。
4人は順に床に転がり落ち、自由を取り戻した。
「いたた……た、助かったぁぁぁ!」
「し、死ぬかと思った……」
「お優しいヒューバート様……感謝いたしますぅ……」
「いえ、とんでもない。皆さん、ご無事で何よりでした。
……それでは、私はこれにて」
そう言って、ヒューバートは部下の待つ方向へと歩き出す。
その背中は涼やかで、風が通るように整っていた。
──このときはまだ、誰も気づいていなかった。
彼の探求の先に、“世界の秘密”が潜んでいることに。
* * *
【数時間後・都市ノクティア跡】
──1年前に“消滅”した都市、ノクティア。
かつて交易と歓楽の中心として賑わい、
中規模の世界樹“ノクティオス”を擁していたこの都市は、今や廃墟と化している。
その中心地に立つヒューバートは、腐り落ちた世界樹の根元に視線を落とす。
地面は黒ずみ、わずかに残る木片からは魔力の焼け焦げたような臭いが漂っていた。
広がる瓦礫、焼け焦げた建物、そして根元から朽ちた世界樹の残骸。
周囲には魔力汚染が充満しており、
調査隊員たちは全員、防護服とマスクを着用して作業を行っている。
「……まるで、十年前にプロテマイアを襲った“大厄災”の痕跡のようだ」
彼はマスク越しに呟いた。
「当時は勇者クオンシアがいたからこそ、プロテマイアは救われた。
だが──この都市には、あの時のような“奇跡”は起きなかったようだな」
同行していた隊員の一人が、手にした魔力計測器を確認しながら声を上げる。
「中心部から放射状に汚染が拡がっています。
世界樹の核だった部分から、強烈な“魔力の吸い痕”が見受けられます。
……まるで、生きたものに根こそぎ喰らわれたかのようです」
「その、魔力を根こそぎ喰ったと思われる生き物は何か分かりますか?」
「いえ、それが……
不思議なことに、その生き物の毛や体液のような残留物は何一つ存在しておらず、
特定する事ができません。所々に残っている爪痕や足跡から察するに、
相当巨大な生物であることは確かなのですが……」
「ふむ……やはり“あの事件”と状況が似ていますね」
ヒューバートはマスク越しに静かに頷くと、
防護服の胸ポケットから防護仕様のメモパッドを取り出し、開いた。
その一頁に、以前の調査で見つかった未解決事件の記録が書かれていた。
『南部山脈のふもとにある小村≪召喚士の里≫にて、
11年前に発生した村全域の消失事件。
小規模の世界樹が枯れ、村が謎の巨大生物に襲われ壊滅状態に。
未解決、証拠不十分、巨大生物の特定不能。魔力汚染の痕跡あり』
ヒューバートはその一文をじっと見つめ、重く口を開いた。
「……11年前、というとプロテマイアを襲った大厄災の1年前になりますね。
そのとき、同じように“世界樹が枯れ、巨大生物に襲われ、
魔力汚染が広がった村”があった。
だがあの事件は、結局真相が明らかにならないまま、時の流れに埋もれていた」
「それって……」
「ええ。記録が正しければ、事件が起きた村の名前は“ファルシア”──
召喚士の村です」
彼はパッドを閉じ、静かに空を仰ぐ。
「このノクティアと何か関係があるかもしれない。
次の調査地点は、そこに定めましょう」
「了解しました、隊長!」
そのとき、もう一人の隊員が世界樹の根元を探っていた手を止め、声を上げた。
「隊長、こちら……根の奥に、魔力反応があります。
……これは、“魔核”と思われます!」
ヒューバートの目が鋭く細まる。
「魔核……生きた世界樹の中心に存在する、魔力の結晶構造体か。
枯死後も魔力の痕跡をわずかに保持し、“霊脈異常”や過去の出来事を
記録しているとされる……」
彼は静かに命じた。
「慎重に掘り出して保管してください。
……素手での接触は避けて、専用の隔離容器を使用するように」
「了解!」
黒く光る球体が慎重に掘り出され、魔力封印容器に収められていく。
ヒューバートは魔核を一瞥し、ポツリと呟いた。
「……この都市が、なぜ滅んだのか。
そして、その痕跡が召喚士の村にも残されているのだとしたら──
必ず、私が読み解いてみせる」
風が廃墟を駆け抜け、残響のように瓦礫を揺らした。
ヒューバートの探求の旅は、
過去の“もう一つの災厄”へと向かって歩みを進めるのだった――
──────────────
この物語は、交差する視点と静かな変化の積み重ねで進んでいきます。
もし続きを見届けていただけたら、「お気に入り」など残していただけると嬉しいです。
更新:月・水・金・土曜 夜21時予定
==========
【某日・酒場「クオンシア」】
「いい? 今回のクエストは“高難易度・遺跡調査任務”なの。
報酬はなんと、30,000G! 私たちにふさわしい、本格的で華々しい依頼よ!」
シュガーは酒場の掲示板の前で、ふだんよりも声を張りながらそう宣言していた。
掲げられていた依頼票には、
「調査対象:未踏の古代遺跡、推定危険度:A」と記されていた。
「ふん、Aランク程度の依頼なんざ、俺様がいれば余裕だぜ! 腕が鳴るな!」
ローガは拳を鳴らして威勢よく応え、
バルツはどこからともなく風を吹かせながら、黒いマントを翻した。
「……死せる古王の眠る地──闇と氷の双刃が今、封印を断つ……」
「ふふ……皆さんが逝くというのなら、
私も笑顔でご一緒しますわ……地獄まで。うふふふ……」
ベルガモットもにこやかに、しかしどこか別の意味で恐ろしい笑みを浮かべていた。
かくして、ボンクラ四人組は軽やかに“高難易度遺跡調査任務”へと旅立ったのだった。
==========
──そして、今。
「……で? 誰のせいでこうなったのか、説明してもらおうかしらね……?」
薄暗い遺跡の天井から吊られたまま、シュガーは怒りを露わにして叫んだ。
「最初に言っとくけど、あたしじゃないからね!?
わ、私は『レバー触っちゃダメかも』って言ったわよ!?」
「悪かったな! 俺だよ! 俺が引いたんだよッ!」
ローガが胸を張るように叫ぶ。
「だって、見た瞬間、どう見ても“正解レバー”って雰囲気だったじゃねえか!」
「……たったそれだけの理由で引いたのか。で、その結果がこれか……」
バルツが吊られたままうんざりした声で呟く。
「ふふ……皆さん、本当に愉快ですわねぇ……」
ベルガモットは逆さ吊りのまま、どこか他人事のような口調で微笑み続けていた。
「この無様な姿……
まるでうるさいコバエちゃんたちが、蜘蛛の巣にかかったかのようですわ……
うふふふふ……」
そんな言い争いが続く中、
壁に浮かぶホログラムを見上げたローガが、ふと口を開く。
「……なあ。あそこに浮かんでいる光の石板の中になんか書いてあるけど、
分かるか?」
「こんなの分かるわけないでしょ!」
「くっ……! 俺の持つ“魔刻の書”に載っていれば……!」
「ええっと……
『解除条件:5問連続正解。失敗時:致死性ガス発生』……ですって。
あらあら、大変なことになっちゃいましたねえ……うふふふ」
「え!? ベル、読めるのそれ……?」
「はぁい。少しだけ嗜んでおりまして……」
「で、でも今『失敗時、致死性毒ガス発生』って……」
「ふふ……死ぬ前にもう一度、
リズさんの淹れてくれた温かいハーブティーを飲みたかったですわね……」
「誰か……誰か助けてぇ……!」
*
――そのときだった。
「おや……? 何だか賑やかな声が聞こえたと思えば……
これはまた、珍しい状況ですね」
柔らかく落ち着いた声とともに、遺跡の奥からひとりの青年が現れた。
金髪の髪を後ろに流し、整った顔立ちに涼やかな眼差しを浮かべた青年。
身にまとう軍服は、質の高い刺繍が施された調査用の礼装であり、
彼の身分を物語っていた。
「えっ……誰? 助けに来てくれた人? それとも罠の……」
「いえいえ、罠の仕掛け人ではありませんよ。
私はただ、ふとこの遺跡に立ち寄っていただけの者です」
青年は一歩前に進み、微笑を浮かべたまま丁寧に一礼した。
「私はヒューバート=ドランシエル。ドランシエル家遠征調査部隊の隊長です」
「ドランシエル家って……まさか、あの!?」
シュガーが目を見開く。
彼女を含むプロテマイアの冒険者であれば、
プロテマイアの領主──ドランシエル家の名を知らぬ者などいない。
「えっ、えええ!? うそ……って、え?
でも、なんか……この人の顔……どこかで見たような……」
シュガーが困惑したように眉をひそめる。
(この顔……確か……あれ? 酒場クオンシアで見たような……
いや、でもこんな優しそうな目している人は酒場にはいなかったはずだし……)
記憶の奥底に引っかかりを覚えるが、名前まで思い出すには至らなかった。
ヒューバートはふとホログラムに目を向け、内容を確認する。
「ふむ、なるほど。古代文字……これは少々複雑な暗号化がなされていますね」
彼は手袋を整え、冷静に続ける。
「王都のアカデミーで古代言語を修めておりまして、ある程度の読解は可能です。
おそらくこの表示は、五問連続で正解すれば罠が解除される形式……
失敗すれば──致死性のガス、というわけですね」
「うぉ……さっきベルが言っていたのと同じだ……
本当に読めちゃうんですね?」
「ふふ。伝説の≪探求の勇者≫ほどではないですが、
探求と分析こそ私の本分ですので」
ヒューバートは軽く笑い、装置のホログラムに手をかけた。
──その瞬間、浮かび上がる3択の設問。
「ふむ……これは単なる古代語の翻訳ではありませんね。
文法構造が《リューク語系統》……
いや、時代的には《ヴェル=シェン文化圏》の再構築符号でしょう」
彼は流れるように選択肢を分析し、次々と正解していく。
その様子を、吊られたままの4人が口をぽかんと開けて見守っていた。
「す、すげぇ……」
「な、なんか知性が溢れてるぅ……」
「かっ、カッコいい……ッ!」
「わたくしの“尊敬する殿方ランキング”が書き換えられましたわぁ。うふふふふ……」
最終問題にも難なく正解し、天井の装置がガコンと音を立てて開放される。
4人は順に床に転がり落ち、自由を取り戻した。
「いたた……た、助かったぁぁぁ!」
「し、死ぬかと思った……」
「お優しいヒューバート様……感謝いたしますぅ……」
「いえ、とんでもない。皆さん、ご無事で何よりでした。
……それでは、私はこれにて」
そう言って、ヒューバートは部下の待つ方向へと歩き出す。
その背中は涼やかで、風が通るように整っていた。
──このときはまだ、誰も気づいていなかった。
彼の探求の先に、“世界の秘密”が潜んでいることに。
* * *
【数時間後・都市ノクティア跡】
──1年前に“消滅”した都市、ノクティア。
かつて交易と歓楽の中心として賑わい、
中規模の世界樹“ノクティオス”を擁していたこの都市は、今や廃墟と化している。
その中心地に立つヒューバートは、腐り落ちた世界樹の根元に視線を落とす。
地面は黒ずみ、わずかに残る木片からは魔力の焼け焦げたような臭いが漂っていた。
広がる瓦礫、焼け焦げた建物、そして根元から朽ちた世界樹の残骸。
周囲には魔力汚染が充満しており、
調査隊員たちは全員、防護服とマスクを着用して作業を行っている。
「……まるで、十年前にプロテマイアを襲った“大厄災”の痕跡のようだ」
彼はマスク越しに呟いた。
「当時は勇者クオンシアがいたからこそ、プロテマイアは救われた。
だが──この都市には、あの時のような“奇跡”は起きなかったようだな」
同行していた隊員の一人が、手にした魔力計測器を確認しながら声を上げる。
「中心部から放射状に汚染が拡がっています。
世界樹の核だった部分から、強烈な“魔力の吸い痕”が見受けられます。
……まるで、生きたものに根こそぎ喰らわれたかのようです」
「その、魔力を根こそぎ喰ったと思われる生き物は何か分かりますか?」
「いえ、それが……
不思議なことに、その生き物の毛や体液のような残留物は何一つ存在しておらず、
特定する事ができません。所々に残っている爪痕や足跡から察するに、
相当巨大な生物であることは確かなのですが……」
「ふむ……やはり“あの事件”と状況が似ていますね」
ヒューバートはマスク越しに静かに頷くと、
防護服の胸ポケットから防護仕様のメモパッドを取り出し、開いた。
その一頁に、以前の調査で見つかった未解決事件の記録が書かれていた。
『南部山脈のふもとにある小村≪召喚士の里≫にて、
11年前に発生した村全域の消失事件。
小規模の世界樹が枯れ、村が謎の巨大生物に襲われ壊滅状態に。
未解決、証拠不十分、巨大生物の特定不能。魔力汚染の痕跡あり』
ヒューバートはその一文をじっと見つめ、重く口を開いた。
「……11年前、というとプロテマイアを襲った大厄災の1年前になりますね。
そのとき、同じように“世界樹が枯れ、巨大生物に襲われ、
魔力汚染が広がった村”があった。
だがあの事件は、結局真相が明らかにならないまま、時の流れに埋もれていた」
「それって……」
「ええ。記録が正しければ、事件が起きた村の名前は“ファルシア”──
召喚士の村です」
彼はパッドを閉じ、静かに空を仰ぐ。
「このノクティアと何か関係があるかもしれない。
次の調査地点は、そこに定めましょう」
「了解しました、隊長!」
そのとき、もう一人の隊員が世界樹の根元を探っていた手を止め、声を上げた。
「隊長、こちら……根の奥に、魔力反応があります。
……これは、“魔核”と思われます!」
ヒューバートの目が鋭く細まる。
「魔核……生きた世界樹の中心に存在する、魔力の結晶構造体か。
枯死後も魔力の痕跡をわずかに保持し、“霊脈異常”や過去の出来事を
記録しているとされる……」
彼は静かに命じた。
「慎重に掘り出して保管してください。
……素手での接触は避けて、専用の隔離容器を使用するように」
「了解!」
黒く光る球体が慎重に掘り出され、魔力封印容器に収められていく。
ヒューバートは魔核を一瞥し、ポツリと呟いた。
「……この都市が、なぜ滅んだのか。
そして、その痕跡が召喚士の村にも残されているのだとしたら──
必ず、私が読み解いてみせる」
風が廃墟を駆け抜け、残響のように瓦礫を揺らした。
ヒューバートの探求の旅は、
過去の“もう一つの災厄”へと向かって歩みを進めるのだった――
──────────────
この物語は、交差する視点と静かな変化の積み重ねで進んでいきます。
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