13 / 27
神殿が勝手に割れて、俺の名前で講和が結ばれ、気づいたら多種族国家ができていた件
しおりを挟む
王都サンクティアの神殿は、朝から騒がしかった。
怒号。
机を叩く音。
祈りの言葉が途中で途切れる声。
原因は一つ。
「発酵は――異端である!!」
老司祭が叫んだ。
「腐敗を神聖視するなど、秩序への冒涜だ!」
その瞬間、別の司祭が立ち上がる。
「違う!」
「発酵とは、神が“待て”と与えた試練だ!」
「時間と信仰を乗り越えた者に、恵みが熟すのだ!」
「それは納豆の話だろうが!!」
神殿は、真っ二つに割れた。
⸻
片や――
発酵異端断罪派。
「臭い」
「糸を引く」
「見た目が不浄」
片や――
発酵神意解釈派。
「長期保存できる」
「体調が良くなる」
「神の設計が美しい」
議論は三日続き、
四日目に――殴り合いになった。
なお、どちらの派閥も
無職もやし神本人に確認はしていない。
⸻
一方その頃。
「……これ、うまいな」
俺は焚き火の前で、もやし味噌スープを飲んでいた。
知らない間に、世界が荒れている。
⸻
王国側も、当然パニックだった。
会議室。
「神殿が内輪揉め」
「騎士団は撤退済み」
「異種族は団結」
「……誰が悪い」
沈黙。
そして、誰かが言った。
「……無職もやし神」
満場一致だった。
⸻
「だが、殺せない」
「むしろ近づけない」
「下手に触るとまた暴動」
重苦しい空気の中、宰相が言った。
「……隔離しよう」
「隔離?」
「与えてしまえ。土地を」
その案は、即決だった。
⸻
数日後。
俺の前に、王国使者が現れた。
やたら丁寧。
やたら腰が低い。
「無職もやし神殿下」
「殿下!?!?」
「この度、王国より正式に領土を授与いたします」
地図を広げられる。
森。
丘。
川。
見覚えがある。
「……ここ、今いる場所だよな?」
「はい」
「じゃあ、今までと何が違う?」
「国です」
「は?」
⸻
「異種族自治を認め」
「王国干渉は最小限」
「税は免除」
「ただし――」
一拍。
「二度と王都に来ないでください」
あまりに正直だった。
「いや、行かねぇよ!?」
⸻
その瞬間。
周囲で歓声が上がった。
「国だ!!」
「俺たちの国だ!!」
俺は、置いていかれている。
「……誰が王になるんだ?」
全員が、俺を見る。
「……やめろ」
「もやし神様!」
「それしかいない!」
「俺、無職だぞ!」
「象徴でいいです!」
象徴って何だ。
⸻
その日の夜。
勝手に講和文書が作られていた。
《無職もやし神の名において
異種族連合国家の成立を宣言する》
「俺、サインしてない!!」
「大丈夫です! 信仰で補完しました!」
意味が分からない。
⸻
翌朝。
神殿から使者が来た。
発酵神意派だった。
「我々は、あなたを正式な神格として――」
「やめろ!!」
断罪派も来た。
「異端だが、もう触れない」
結果――
両方とも撤退。
⸻
こうして。
王国は問題を“外に出し”
神殿は問題を“見なかったことにし”
異種族は勝手に国家を作り――
俺は、焚き火の前で言った。
「……なんでこうなるんだ」
誰も答えなかった。
ただ、もやしは今日も育つ。
平和に。
無職のまま。
怒号。
机を叩く音。
祈りの言葉が途中で途切れる声。
原因は一つ。
「発酵は――異端である!!」
老司祭が叫んだ。
「腐敗を神聖視するなど、秩序への冒涜だ!」
その瞬間、別の司祭が立ち上がる。
「違う!」
「発酵とは、神が“待て”と与えた試練だ!」
「時間と信仰を乗り越えた者に、恵みが熟すのだ!」
「それは納豆の話だろうが!!」
神殿は、真っ二つに割れた。
⸻
片や――
発酵異端断罪派。
「臭い」
「糸を引く」
「見た目が不浄」
片や――
発酵神意解釈派。
「長期保存できる」
「体調が良くなる」
「神の設計が美しい」
議論は三日続き、
四日目に――殴り合いになった。
なお、どちらの派閥も
無職もやし神本人に確認はしていない。
⸻
一方その頃。
「……これ、うまいな」
俺は焚き火の前で、もやし味噌スープを飲んでいた。
知らない間に、世界が荒れている。
⸻
王国側も、当然パニックだった。
会議室。
「神殿が内輪揉め」
「騎士団は撤退済み」
「異種族は団結」
「……誰が悪い」
沈黙。
そして、誰かが言った。
「……無職もやし神」
満場一致だった。
⸻
「だが、殺せない」
「むしろ近づけない」
「下手に触るとまた暴動」
重苦しい空気の中、宰相が言った。
「……隔離しよう」
「隔離?」
「与えてしまえ。土地を」
その案は、即決だった。
⸻
数日後。
俺の前に、王国使者が現れた。
やたら丁寧。
やたら腰が低い。
「無職もやし神殿下」
「殿下!?!?」
「この度、王国より正式に領土を授与いたします」
地図を広げられる。
森。
丘。
川。
見覚えがある。
「……ここ、今いる場所だよな?」
「はい」
「じゃあ、今までと何が違う?」
「国です」
「は?」
⸻
「異種族自治を認め」
「王国干渉は最小限」
「税は免除」
「ただし――」
一拍。
「二度と王都に来ないでください」
あまりに正直だった。
「いや、行かねぇよ!?」
⸻
その瞬間。
周囲で歓声が上がった。
「国だ!!」
「俺たちの国だ!!」
俺は、置いていかれている。
「……誰が王になるんだ?」
全員が、俺を見る。
「……やめろ」
「もやし神様!」
「それしかいない!」
「俺、無職だぞ!」
「象徴でいいです!」
象徴って何だ。
⸻
その日の夜。
勝手に講和文書が作られていた。
《無職もやし神の名において
異種族連合国家の成立を宣言する》
「俺、サインしてない!!」
「大丈夫です! 信仰で補完しました!」
意味が分からない。
⸻
翌朝。
神殿から使者が来た。
発酵神意派だった。
「我々は、あなたを正式な神格として――」
「やめろ!!」
断罪派も来た。
「異端だが、もう触れない」
結果――
両方とも撤退。
⸻
こうして。
王国は問題を“外に出し”
神殿は問題を“見なかったことにし”
異種族は勝手に国家を作り――
俺は、焚き火の前で言った。
「……なんでこうなるんだ」
誰も答えなかった。
ただ、もやしは今日も育つ。
平和に。
無職のまま。
0
あなたにおすすめの小説
社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ
のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。
目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
無能と追放された鑑定士の俺、実は未来まで見通す超チートスキル持ちでした。のんびりスローライフのはずが、気づけば伝説の英雄に!?
黒崎隼人
ファンタジー
Sランクパーティの鑑定士アルノは、地味なスキルを理由にリーダーの勇者から追放宣告を受ける。
古代迷宮の深層に置き去りにされ、絶望的な状況――しかし、それは彼にとって新たな人生の始まりだった。
これまでパーティのために抑制していたスキル【万物鑑定】。
その真の力は、あらゆるものの真価、未来、最適解までも見抜く神の眼だった。
隠された脱出路、道端の石に眠る価値、呪われたエルフの少女を救う方法。
彼は、追放をきっかけに手に入れた自由と力で、心優しい仲間たちと共に、誰もが笑って暮らせる理想郷『アルカディア』を創り上げていく。
一方、アルノを失った勇者パーティは、坂道を転がるように凋落していき……。
痛快な逆転成り上がりファンタジーが、ここに開幕する。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる