転生したのに女神がもやし栽培キットしかくれなかったので、無職即追放されましたが、育ててたら貴重品でした

ワイケー

文字の大きさ
26 / 27

世界もやし問題・第一回非公式緊急会議

しおりを挟む
――誰も理解していない――



会議は、静かに始まった。

場所は中立都市〈ルーメル〉。
神殿の影響も、軍事国家の圧も及びにくい――はずの街。

長い円卓。
各国の代表。
机の上には、水差しと書類と、なぜか鍋。

誰も、それに触れようとしない。



最初に口を開いたのは、王都サンクティアの神殿代表だった。

白いローブ。
疲れ切った顔。
声だけが、かろうじて威厳を保っている。

「……では、議題に入る」

「現在、世界各地で確認されている
 “白く細長い植物”についてだ」

誰も異議を唱えない。
全員、知っているからだ。

「まず、我が国の状況を報告する」

神殿代表は、淡々と読み上げる。

「参拝者数、減少」
「施療所利用、激減」
「異端指定……効果なし」

一拍。

「むしろ、指定後に増えた」

沈黙。

砂漠国家ラハ=シームの代表が、手を挙げた。

「……それは、被害なのか?」

神殿代表は、言葉に詰まった。

「……信仰が、減った」

「だが民は?」

「……元気だ」

「腹は?」

「……満たされている」

砂漠代表は、静かに頷いた。

「では、我が国の報告だ」

「反乱:なし」
「暴動:なし」
「脱水症状:例年比九割減」

「原因は?」

神殿代表が聞く。

「……鍋だ」

会議室に、重たい空気が落ちた。



次に、海洋国家ネレイア。

代表は、妙に明るい。

「船酔いが消えました」

「は?」

「嵐でも吐きません」
「航海日数が伸びています」
「兵も漁師も、やたら元気です」

「原因は」

「……干した白いやつです」

神殿代表が頭を抱える。



山岳国家グラン=ドゥル。

武人の代表が、腕を組んで言った。

「兵が、折れません」

「精神的に?」

「肉体的に」

「……それは、問題か?」

武人は少し考えてから答えた。

「……訓練が終わらん」

別の意味で地獄だった。



最後に、神殿国家エル=サンクト。

代表は、青ざめている。

「……教義が、通じません」

「なぜだ」

「民が……」

言い淀む。

「祈る前に、湯を沸かします」

その瞬間、誰かが咳き込んだ。

神殿代表が低く唸る。

「……つまり」

「どの国も、被害はない」

「だが、制御できない」

全員が、ゆっくりと頷いた。



議題が変わる。

「では、この現象の“中心”は誰だ」

沈黙。

誰かが言った。

「……無職もやし神」

全員が顔をしかめた。

「名前が、ふざけている」

「だが、定着している」

「本人は?」

「否定している」

「……否定しているのに?」

「だから、信じられているそうです」

机を叩く音。

「意味が分からん!」

砂漠代表が、冷静に言った。

「意味が分からないから、流行るのだ」

会議室が静まった。

否定できなかった。



結論を出す時間になった。

神殿代表が、震える声で言う。

「異端指定は……逆効果だった」

「軍事介入は?」

「敵がいない」

「交易制限は?」

「鍋が増えただけだ」

全員、疲れ切った顔でうなだれる。

そして――

「……静観しよう」

誰かが言った。

「刺激しない」
「関わらない」
「名付けない」
「定義しない」

正式文書に記される。

《白芽事案・静観フェーズ》

それはつまり――

「放置」である。



会議は解散した。

誰も勝っていない。
誰も負けていない。

ただ、理解できないまま帰る。



その頃。

当の本人。

俺は、紫に光るもやしを鍋から引き上げていた。

「……跳びすぎだろ」

天井に、頭をぶつける。

もやし二号が、新しい札を立てる。

《紫紋跳躍もやし(食用可/天井注意)》

「注意ってそういう意味かよ!!」

外では世界が徹夜会議。
中では俺が茹でている。

どちらが正しいかは、誰にも分からない。

だが一つだけ確かなことがある。

――俺が鍋を火にかける限り、
世界は勝手に混乱を続ける。

そしてたぶん。

次も、俺は何も知らない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

処理中です...