転生したら人魚姫いやもといオスなので王子でしたが失礼それはさておき隣国の王女に負けたくないですハピエンになりたいです

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

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ウミーノ・マジョー大佐登場

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 そして、両手を挙げて一度全身を海面の上に立つようにしてギリギリまで縦に長く伸ばすと勢いよく、ザブンッと。
 それこそ水泳の飛びこみ競技であったとすれば、確実に減点となるような大きな波飛沫を立てて垂直方向に潜りました。

バビューンッ……

 もはやそれはドルフィンキックの域なんかではありません。
 チョー気持ちいいも越えた、なんも言えねぇの世界新の領域です。
 時速110㎞を叩き出す、海中の最速王バショウカジキが目を白黒させるほどの高速でキリンエットは目的地まで飛ばしました。

「マジョー大佐、ご無沙汰しております」

 たどり着くとキリンエットはやや緊張した面持ちで目の前の存在に挨拶をしました。

「おぅ、随分と久しぶりだな、元気だったか…っていうか、お前、なんだ、その身体は、相変わらずよわっちろいな!!」
「す、すみません」
「除隊後も鍛えて肉を付けろって、あれほど言っただろ!!」
「は、はい」
「なんだ、その生っちょろい返事は、もっと腹に力を入れろ!!」
「イエッサー!!」

 キリンエットは反射的に敬礼しながら、筋肉がなかなか付かなかった我が身を恥じ入りました。
 確かによく見積もっても細マッチョ程度のキリンエットでは、ただいま授乳中ですかと尋ねたくなるほど豊満な胸筋バストを持つ上官の前では見劣りしてしまいます。
 もちろんウミーノ・マジョー大佐はれっきとしたオスですので、ただいま授乳中ではございません。

「で、どうした? 今日はどういった用件だ」
「は、はい…実は折り入ってお願いがありまして…」
「お願いだと?」

 ギロリと睨まれてキリンエットは震え上がってしまいました。
 あの海世界最強とも称される海神ポセイドン軍から傭兵部隊の司令官として引き抜かれたこともあるマジョー大佐です。
 背中で逆立つ髪と瞳の色は本来ならば海中では圧倒的不利ともされる、クレナイモロトゲエビもしくはエウリセネス・アタカメンシスのような深紅の色をしています。
 つまりはマジョー大佐の存在そのものが、やるなら、オレに向かって全員で死ぬ気で来いッと宣戦布告しているようなものなのです。

「あの…あの…」

 そんな漢の中の漢である大佐を前にしてキリンエットは黙りこんでしまいました。

「どうした、とりあえず言ってみろ」

 けれども続けて促してきた声と瞳は、こちらの並々ならぬ萎縮が伝わったのか、意外な優しさを帯びていて、キリンエットはじわんと胸が熱くなりました。

(マジョー大佐…)

 8010mの深海から海面まで泳ぎきるための筋肉と静水圧の変化に堪えうる精神力、そして人魚界におけるコスモエナジーの燃やし方だけでなく、大技ドルフィンキックをも直に伝授してもらった、心より信頼しているゴールド師匠です。
 少年漫画のような熱い師弟関係なのです。
 ですが、そうは言ってもさすがに人間になりたいですとは、しっかりときっぱりとそれでいてあっさりとなんて打ち明けられませんでした。
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