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まさかの羞恥プレイ

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「ここに、その王子とやらの全身を再現してみろ!!」

 メラメラと瞳と髪を燃え上がらせながらバンバンと大佐が大きな手で紙を叩きました。

「あ、いえ…あの…その…」

 一度はそっと返したはずのペンと紙を強く握らされてキリンエットは視線を彷徨わせてしまいます。
 まさかの羞恥プレイです。
 人魚王立学院の十二年間の在学期間中における美術の評価点は最初から最後までイチだったキリンエットです。
 恥ずかしくてできません。
 キリンとして描くにしても、よくてマッチ棒があちらこちらからはみ出ちゃってる、平たい箱になってしまうことは言うまでもありません。
 ましてや人間体など、どれほど悲惨なことになるでしょうか。
 そこで口で説明することにしました。

「大佐…実はですね…我々は…前世はその…人間ではなかったといいますか…キリン…みたいな…といいますか…的な…といいますか……はい、キリンだったのです」
「!!」
「えっと、伝説の神獣の方ではなく哺乳網ほにゅうこう偶蹄目ぐうていもくキリン科の方です」

 知っているだろうかと不安に揺れて、追加説明をしたキリンエットの前でギリリと大佐の目がつり上がりました。

「なんだと…つまりお前は、重心が取りづらいくせにあの首の長さで時速50㎞前後をいとも簡単に叩き出して走り、さらには七つの頸椎が放つ異常なまでのその可動域に、筋肉の付着に変化をもたせることで上は高木の葉っぱから下は地面の水たまりまでの高低差なんて、屁のカッパもしくはお茶の子さいさいにこなしてしまう、あのグレート筋骨ヤローだったというのか!!」

 わぁ、ものすごくよく知っていましたぁ――とびっくりするキリンエットに向かって、さらに唾を飛ばすようにして大佐がまくしたてます。

「それだけじゃない…つまりその相手もまた、全ては独特な骨格と筋肉のおかげなんだと見せかけておきながら実は長さ約2m,重さ約100㎏の首と約30㎏の頭を支える秘密兵器、それはうなじにありの…あのげにもおそろしき柔らかミラクル靱帯ヤローだったというのか!!」

 キリンエットは息をのんでしまいました。
 まさか大佐がここまでキリンの肉体事情に詳しいと思わなかったのです。
 さすがは世界の筋肉雑学の第一人者です。

「は、はい…その通りです」
「なんてことだ…くそっ…」

 大佐はペンと紙をキリンエットから奪い取ると海底へと投げ捨てました。
 その瞳はギラギラギランとした尋常ではない光を発し、キリンという生き物に対して、こりゃ絶対に妬んでるなといった感が満載です。

「キリンエット元一等兵、お前はその栄光の過去世を忘れられずに奴の元で再び筋肉を高め合いたいと望んでいるのか?」
「は、はい…その通りです」
「今回は人間なのにか?」
「は、はい…その通りです」

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