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君はまさにオレの聖女

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「殿下、おそれながら…女神の化身とお呼びするよりも聖女さまがよろしいのではないでしょうか?」
「聖女さまだと? どういう意味だ、モブーニ」
「はい、殿下、その件につきましてはお手数をおかけしますが、こちらにいらして頂きたく。
 衛兵、モブイッチー医師を一度控え室へとお連れし、お茶を出して差し上げろ」
「ははっ」

 王子の幼馴染みでもあり右腕でもある騎士団長が医師を外へと出し、あるじをバルコニーへと通じる大きな窓へと誘導します。
 ヒソヒソとなにやら内緒の話をし始めました。
 なんだって、冗談じゃないぞと憤るような王子の声も時々漏れ聞こえてきます。

(な、なんだろう…)

 ドキドキとしながらその様子を目でひたすら追います。
 唐突に言われた、聖女さまという響きも謎です。
 なによりもオスなのに聖女なんですかというツッコミがここでも生じます。
 しばらくすると王子が小走りで戻ってきました。

「あぁ、キリリン、君はまさにオレの聖女だ、降臨してくれてありがとう」

 意味不明な言葉とともに、ぎゅっと抱きしめられ、チュッと額に口づけられました。

「喉の他につらいところはないか?」

 いたわるような視線で問いかけられて、首を横に振りかけて、ハッと気がつきました。
 囲いこむようにされている王子の腕を退けると傍らにあるキリン柄のストールを握りしめます。
 そして前を隠しながらそっと床に両足を下ろしてみました。

(あっ…)

 初めての二本足による、初めての地面の感覚にグラリと大きく身体が揺れてしまいました。

「おっと…」

 けれども、すぐさま頼もしい腕が支えてくれました。

「あり…ゥッ…ハッ…が…フッ」

 王子の腕の中で礼を口にしつつも、ガクガクと脚が震えてしまいます。
 思っていたよりも苦痛はありませんが二本の足で立つことに難を覚えます。

「立つのも、ままならないのか?」

 人間の足ってなんて難しいんだろうと。
 小刻みに揺れる肉体が強く支えられ、またしてもひょいと横向きに抱えられました。

「大丈夫だ、徐々に徐々に体調を整えていこう。
 無理をしてはいけない」

 そのまま寝具へとあっという間に戻されて、またもや大きな枕へともたれるように上半身を押されます。
 王子が家来に命じました。

「軽食を運ばせろ。
 何が好きなのかわからないから、一通り持ってこさせろ」
「はっ」
「それからモブサンローランを衣装部屋に呼んでおけ」
「はっ」

 テキパキとした指示にパタパタと周囲が動き始めます。

「あっ…フッ…やっ…ハッ…」

 従者がいなくなるや否や、直ちに仰向けにされて、あちらこちらが口づけられます。
 蜂蜜の飲み物もお湯もとっくに届けられているというのに。
 全くお構いなしに舌を這わせてくる王子に、アッ、アッ、アッと喘がされていると扉のすぐ向こうから家来の声がしました。

「キリンオ殿下に申し上げます、お食事をお持ちしました!!」

 またしても、チッという舌打ちとともに身を起こした王子にキリンエットは安堵感すら覚えてしまいました。
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