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天の声によるお告げ?
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仮にそれが一周まわった結果、再びブームが来たがゆえの温故知新現象の一種だと大変好意的に解釈したとしましてもびっくりしかありません。
そんな、上は海藻、下はどこまでも縦ロールヘアで盛ったモブミがスッとドレスを両手で摘まみ上げて見事な膝折礼をしました。
「キリンオ殿下、ご機嫌麗しゅうございます」
長いまつげをパッサパサ、パッサパサと瞬かせて熱い視線を意中のキリンオに注ぎまくります。
「っ!!」
何事にも動じてはならないはずの王子が本気で動揺した気配をわずかに見せました。
けれども、そこは王族、すぐさまコホンと咳払いをしました。
「これはモブミ王女…本日もお美しく…なによりです」
微笑みながらの偽りを感じさせない返答はさすがです、さすがです、さすがの生粋の貴公子です。
言葉通りに受け取ったモブミもまた満足げに微笑み返します。
「殿下、おそれながらモブミさまは隣国モブデーシ・カナーイ王国の第一王女でいらっしゃいますが、今は聖女さまでもございます」
「聖女さま?」
「はい、つい四日ほど前のことです。
ありがたいことに、ご神託が神殿に降りてきたのです」
「神託が降りてきた? どういうことだ?」
「はい、どうぞ驚かれないでお聞き下さいませ。
先日船上で執り行われた殿下の成人を祝っての夜会、あの未曾有の悪天候に見舞われたにもかかわらず、一人の死者も出さずに全員が生き残れた奇跡、実はあれは海神ポセイドンさまが海の女神を遣わして下さったからだったのです」
(えっ…)
聞こえてきた内容にすぐさまキリンエットが首を傾げました。
海神はどちらかというとノリノリで荒らしまくる方が好きで、海の女神に命じてまで人間を集団で助けるなんて初耳です。
それにあの時、海の女神の気配なんてあったっけなと宙を目で仰ぎながら振り返ります。
「…知っている、生還した者たちから民にそのように広まっているようだな」
「さようでございます。
そしてこの度、それら生き証人たちの発言がただの思いこみなどではなかったことが立証されたのです。
四日前の礼拝の朝、わたくしが神殿で聖なる鏡に映る自分を見つめていた時です。
突然ピカーッと眩しい光に包まれ、天の声が降り注ぎました」
王子が熱弁する神官に冷静に尋ね返しました。
「つまり、それが神託だと?」
「はい、耳にしたこともないような威厳に満ちた声が夜会の嵐の晩、王子と民の命を救ったのは海神ポセイドンが遣わした海の女神アムピトリテでありんすと告げました。
そして、これから訪れるであろう王国の危機を憂い、アムピトリテが自身の想いを託す者が近々現れる予定でありんすとも…その選ばれし方がモブミさまなのです!!」
派手な身振り手振りを付けながら語る様はまさに舞台俳優さながらで、完全なまでに酔い痴れています。
一方で付き合わされている側の気持ちがシーンそしてチーンであることは言うまでもありません。
そんな、上は海藻、下はどこまでも縦ロールヘアで盛ったモブミがスッとドレスを両手で摘まみ上げて見事な膝折礼をしました。
「キリンオ殿下、ご機嫌麗しゅうございます」
長いまつげをパッサパサ、パッサパサと瞬かせて熱い視線を意中のキリンオに注ぎまくります。
「っ!!」
何事にも動じてはならないはずの王子が本気で動揺した気配をわずかに見せました。
けれども、そこは王族、すぐさまコホンと咳払いをしました。
「これはモブミ王女…本日もお美しく…なによりです」
微笑みながらの偽りを感じさせない返答はさすがです、さすがです、さすがの生粋の貴公子です。
言葉通りに受け取ったモブミもまた満足げに微笑み返します。
「殿下、おそれながらモブミさまは隣国モブデーシ・カナーイ王国の第一王女でいらっしゃいますが、今は聖女さまでもございます」
「聖女さま?」
「はい、つい四日ほど前のことです。
ありがたいことに、ご神託が神殿に降りてきたのです」
「神託が降りてきた? どういうことだ?」
「はい、どうぞ驚かれないでお聞き下さいませ。
先日船上で執り行われた殿下の成人を祝っての夜会、あの未曾有の悪天候に見舞われたにもかかわらず、一人の死者も出さずに全員が生き残れた奇跡、実はあれは海神ポセイドンさまが海の女神を遣わして下さったからだったのです」
(えっ…)
聞こえてきた内容にすぐさまキリンエットが首を傾げました。
海神はどちらかというとノリノリで荒らしまくる方が好きで、海の女神に命じてまで人間を集団で助けるなんて初耳です。
それにあの時、海の女神の気配なんてあったっけなと宙を目で仰ぎながら振り返ります。
「…知っている、生還した者たちから民にそのように広まっているようだな」
「さようでございます。
そしてこの度、それら生き証人たちの発言がただの思いこみなどではなかったことが立証されたのです。
四日前の礼拝の朝、わたくしが神殿で聖なる鏡に映る自分を見つめていた時です。
突然ピカーッと眩しい光に包まれ、天の声が降り注ぎました」
王子が熱弁する神官に冷静に尋ね返しました。
「つまり、それが神託だと?」
「はい、耳にしたこともないような威厳に満ちた声が夜会の嵐の晩、王子と民の命を救ったのは海神ポセイドンが遣わした海の女神アムピトリテでありんすと告げました。
そして、これから訪れるであろう王国の危機を憂い、アムピトリテが自身の想いを託す者が近々現れる予定でありんすとも…その選ばれし方がモブミさまなのです!!」
派手な身振り手振りを付けながら語る様はまさに舞台俳優さながらで、完全なまでに酔い痴れています。
一方で付き合わされている側の気持ちがシーンそしてチーンであることは言うまでもありません。
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