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ヒートしていく聖女対決?
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一国のまともな王女であるのならば、そんな正気でないメイクをするはずがない。
できるわけがない。
従って化粧は抗うことのできない人知を超えた力でなされていることであり、つまりは王女こそが海の女神の代弁者であると。
人を雇ってもっともらしく、あちらこちらで吹聴させているのは既に把握済みです。
賄賂を渡して発言力のある貴族たちを懐柔していることも知っています。
神官も王女も取りまきたちも欲に目が眩むあまりに、とち狂っちゃっているのです。
狙いは王太子妃の座であり、そしてゆくゆくは王国乗っ取りを企んでいるに違いありません。
「感受性のお強い王女がある種の霊的な力に誘われて、海の女神への畏敬をご自身の肉体で正常な状態では到底できないであろう範疇にて示されている…その心意気は大変ご立派なことだと感嘆はするが…」
だからと言って、すなわち海の女神の代弁者であるとは断言できない。
言えるわけがない。
そう、切り捨てて告げたいところをグッと王子が堪えました。
軍事大国である隣国との関係性を踏まえてのことです。
第一王女って思いこみの激しい方だよねぇなどと、雑な終わらせ方はできないのです。
やっかいな理論展開をする奴が権力を持っていることほど面倒くさいものはありません。
「キリンオ殿下、本当に不思議なことに身支度をしているだけだというのに恍惚状態になりますの。
そして気がつけば、このように女神さまに近い姿となっていて。
本当に高次元の存在と繋がっている自分を感じずにはいられません。
わたくし、デ・ナーシ神官や皆様が推して下さる通り、聖女としてがんばります」
いやいやいや、やはり、ものすごく無理がある、ものすごく…と。
キリンオ陣営の心の声がもっともっと一致します。
「そうですか…なにを持ってして聖女というかの定義は人それぞれかと思われますから、モブミ王女には是非とも世のため民のため、今後もご無理のない範囲で平和にご活躍頂きたいものです」
「は、はい…ですから、キリンオ殿下、わたくしは…あの…殿下と…」
距離を詰めてきたモブミからスッと王子が避けるように横へと移動しました。
肩を抱かれていたキリンエットも必然的にヨロヨロと歩かされます。
そんな状態でモブロークへと向き合わされました。
「だが、キリリンを聖女ではないとはどういう意味だろうか、デ・ナーシ神官。
私の婚約者に対していささか不敬ではないか」
「なんと、婚約者ですと!!」
「そうだ、正式にこの後、王と王妃そして皆の前で発表する予定だ」
「そ、それは…お考え直し下さいっ、殿下!!」
どこの馬の骨ともわからない者なんかと。
こちらも言葉にこそ出しませんが、神官側の冷たい視線が一気にキリンエットに注がれます。
そのあまりの圧にゴクリとキリンエットが嚥下しました。
「四日ほど前に神殿に霊的な現象が起こったと言っていたが、ちょうどその頃だ、キリリンが天から私の目の前に降臨したのは。
まさに降って沸いたとばかりになにもない空間から突如として現れた…つまりはキリリンもまた聖女なのだ」
できるわけがない。
従って化粧は抗うことのできない人知を超えた力でなされていることであり、つまりは王女こそが海の女神の代弁者であると。
人を雇ってもっともらしく、あちらこちらで吹聴させているのは既に把握済みです。
賄賂を渡して発言力のある貴族たちを懐柔していることも知っています。
神官も王女も取りまきたちも欲に目が眩むあまりに、とち狂っちゃっているのです。
狙いは王太子妃の座であり、そしてゆくゆくは王国乗っ取りを企んでいるに違いありません。
「感受性のお強い王女がある種の霊的な力に誘われて、海の女神への畏敬をご自身の肉体で正常な状態では到底できないであろう範疇にて示されている…その心意気は大変ご立派なことだと感嘆はするが…」
だからと言って、すなわち海の女神の代弁者であるとは断言できない。
言えるわけがない。
そう、切り捨てて告げたいところをグッと王子が堪えました。
軍事大国である隣国との関係性を踏まえてのことです。
第一王女って思いこみの激しい方だよねぇなどと、雑な終わらせ方はできないのです。
やっかいな理論展開をする奴が権力を持っていることほど面倒くさいものはありません。
「キリンオ殿下、本当に不思議なことに身支度をしているだけだというのに恍惚状態になりますの。
そして気がつけば、このように女神さまに近い姿となっていて。
本当に高次元の存在と繋がっている自分を感じずにはいられません。
わたくし、デ・ナーシ神官や皆様が推して下さる通り、聖女としてがんばります」
いやいやいや、やはり、ものすごく無理がある、ものすごく…と。
キリンオ陣営の心の声がもっともっと一致します。
「そうですか…なにを持ってして聖女というかの定義は人それぞれかと思われますから、モブミ王女には是非とも世のため民のため、今後もご無理のない範囲で平和にご活躍頂きたいものです」
「は、はい…ですから、キリンオ殿下、わたくしは…あの…殿下と…」
距離を詰めてきたモブミからスッと王子が避けるように横へと移動しました。
肩を抱かれていたキリンエットも必然的にヨロヨロと歩かされます。
そんな状態でモブロークへと向き合わされました。
「だが、キリリンを聖女ではないとはどういう意味だろうか、デ・ナーシ神官。
私の婚約者に対していささか不敬ではないか」
「なんと、婚約者ですと!!」
「そうだ、正式にこの後、王と王妃そして皆の前で発表する予定だ」
「そ、それは…お考え直し下さいっ、殿下!!」
どこの馬の骨ともわからない者なんかと。
こちらも言葉にこそ出しませんが、神官側の冷たい視線が一気にキリンエットに注がれます。
そのあまりの圧にゴクリとキリンエットが嚥下しました。
「四日ほど前に神殿に霊的な現象が起こったと言っていたが、ちょうどその頃だ、キリリンが天から私の目の前に降臨したのは。
まさに降って沸いたとばかりになにもない空間から突如として現れた…つまりはキリリンもまた聖女なのだ」
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