愛の操り人形~サンピーノキオ~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

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***大切な博士のために***

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(お父さん…ぼくにもう…飽きてしまったの…?)

 そんな天才科学者の、机に向かって夢中になっている背中に思考の中で問いかけます。
 この場合、人形は性愛玩具としてどうしたらいいのでしょう。
 騎士団長の言葉から何かしらの欠陥があることは否定できません。

(ぼくが未熟だから…)

 そう人形は考えました。
 どうしたらいいのだろうと思案します。
 なんとかして役に立ちたいのです。
 性愛人形としてだめなら、人工生命体としてはどうかと人形は思い至りました。
 人工生命体としてならば、博士のために何ができるのでしょうか。
 わかりません。
 それならば、何をしてはいけないのかに標準を合わせました。
 確か…と知識をたぐり寄せました。
 この世界には、他の誰かに決して無理強いをしてはならないという道徳、つまり戒めがあったはずです。
 だとするならば…と人形は結論を導き出しました。
 今ここで作業を無理矢理中断させて、ぼくに何が足りていないのと。
 どうして抱いてくれないのと。
 博士に強引に問いただすことなど許されるはずがありません。
 博士からの働きかけをただ待つしかないのです。

(お父さんは…もしかして…違う子を作るつもりなのかな…)

 博士が机上に熱中しているのは自分に不満があっての行動だと人形は受け止めていました。
 ぼくに魅力がないから…と。
 けれども実際は。
 ジェペット博士は博士でまた、きっと同じ年頃の話し相手が欲しいに違いないと勘違いしていたのです。
 それというのも、やたらと頻度の多いローギィ騎士団長による押しつけ勉強会。
 どういうわけだか自分に秘密裏にされている内容も気になってはいましたが、終了後のサンピーノキオの笑顔のない様子を見て、ローギィが家庭教師ではうちの子はダメだと博士は感じ取っていました。
 厳格スパルタなうえに最後は何でも騎士道で通す人だったからです。
 博士からも知力の足しにと、ABCの本を与えましたがやはり情操教育には十分ではないでしょう。
 しかし、そうは考えても兄弟を作るのには少し時間がかかりそうでした。
 そこで別の教育機関で学ばせようと博士は考えました。

「ノキオ、試しに学校に行ってみない?」

 突然振り返った黄緑の瞳に尋ねられて。
 人形は思わず「えっ、学校?」と大きな声で聞き返してしまいました。
 もちろん学校がどんな場所であるかは知っています。

「ん、私は研究に没頭してしまうとどうにも周囲が見えなくなって、なかなかかまってあげられないからね…気分転換に外の世界も見ておいで。いやだったらすぐにやめてもいいから」
「いやだったら…やめても…いいの?」

 博士の狙いは一体どこにあるのでしょうか。
 いきなりの提案にドキドキ、ドキドキと。
 人形の左の胸で人工心臓が鼓動を早めました。

「私も途中で学校をやめた身だからね。いやなのに続けろなんて言えないよ…でもノキオだったらお友達もできるだろうし、楽しいと思うよ…この屋敷には大人しかいないからね」
「ほんとに行ってもいいの?」
「そうだよ、ノキオは学校に行きたい?」
「うん、お父さん、ぼく、学校に行ってみたい!!」

 学校では本よりももっと、いろいろな知識が体得できるはずです。
 ローギィ騎士団長との勉強会では成果が得られていない、性愛人形としての心得についてだって何かしらの進展が得られるかもしれません。
 なによりも大好きな博士がすすめてくれたのです。

「お父さん、ぼく、学校に行って勉強して、ふさわしい更新アツプデートをしてみせる!!」

 博士が鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした後に「なんだか変なお返事だね」と笑いました。
 こうして人形は学校に行くことになったのです。
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