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***見習い少年騎士ラン・プノーシン***
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「お父さん、行ってきまぁす」
「気をつけてね、困ったことがあったら先生にすぐに言うんだよ」
「はぁい」
「遅くならないようにね」
「はぁい」
不安そうに見送る博士に人形が元気よく手を振りました。
学校に行かせると決めたものの博士は心の底ではとても心配していました。
見た目はどこからどう見ても人間の愛らしい男の子です。
王立教会に届け出た年齢は十六才です。
十六才にしてはすこし小柄で幼い印象を周囲に与えますが、騎士団長が不測の事態を想定して婚姻が許される年齢にあえてしたのでした。
不測の事態とは王室醜聞です。
もちろん屋敷で働く数少ない使用人たちには箝口令を敷いています。
『ここで目にしたものについては一切外で話してはならない』
前々から厳しく言い渡されているその命令は、出入りをしている王室御用達の業者たちも身の程をきちんとわきまえて死守していました。
ですが、どこからか漏れ出て、年端のいかない未成年を囲っているなどと嘲笑の的にされても困ります。
醜い権力争いをする貴族たちに王の落とし胤が利用される可能性もあるのです。
何かあった際には「は? 性交の許されている年齢ですが?」と反論できるように。
場合によっては「は? そもそもが性愛人形ですが?」と正々堂々と反撃できるように。
騎士団長が予防線を張ったのです。
要するにリスク回避です。
ただ王と騎士団長の中では、しばらくは若き天才博士が人工生命体を見事に作り上げたことは極秘にしておきたいとも考えておりました。
それは他国との軍事バランスを踏まえてでした。
そこで見た目は人間、中身は人工生命体の人形には、ローギィ騎士団長が地方遠征の際にうっかりできちゃった隠し子という偽装工作がされることとなりました。
発案はカルロ王です。
言うまでもなくローギィはしぶりました。
両刀使いのモテ男には実際に若い頃のヤンチャでできた私生児が数人いたからでした。
要するに似たもの主従です。
王の無節操など、そもそもが責められる立場ではなかったのです。
ですが、これ以上痛くなくない腹を探られたくなくても、中間管理職の騎士団長としては従うしかありません。
このようにして、高位貴族である騎士団長の、教育がなされてない田舎の息子という設定で、見習い騎士のラン・プノーシンという少年をお供に付けて人形は学校に通うこととなったのです。
「坊ちゃん、オラはここまでしか入れないですけぇ。従者専用の部屋で待っていますけぇ。どうぞ行ってきてくださいけぇ。こちらがお弁当ですけぇ」
王立学院初等部は貴族や裕福な町民の子供たちが通う学校です。
護衛とはいえ、教室までついていくことはさすがにできません。
燃え盛る炎のような赤毛をしたプノーシンが塔の前で足を止めると言いました。
プノーシンが従者に抜擢されたのは、年齢が近いことと出身地方について誰かに尋ねられた際に説得力を持たせるようにとの思惑からでした。
「うん、プノーシン、ありがとう」
「お帰りの時にここでお待ちしていますけぇ」
「わかった。じゃ、行ってくるね」
そばかすが頬に目立つ家来からお弁当の包みを受け取ると、人形は笑顔で学び舎へと向かいました。
「気をつけてね、困ったことがあったら先生にすぐに言うんだよ」
「はぁい」
「遅くならないようにね」
「はぁい」
不安そうに見送る博士に人形が元気よく手を振りました。
学校に行かせると決めたものの博士は心の底ではとても心配していました。
見た目はどこからどう見ても人間の愛らしい男の子です。
王立教会に届け出た年齢は十六才です。
十六才にしてはすこし小柄で幼い印象を周囲に与えますが、騎士団長が不測の事態を想定して婚姻が許される年齢にあえてしたのでした。
不測の事態とは王室醜聞です。
もちろん屋敷で働く数少ない使用人たちには箝口令を敷いています。
『ここで目にしたものについては一切外で話してはならない』
前々から厳しく言い渡されているその命令は、出入りをしている王室御用達の業者たちも身の程をきちんとわきまえて死守していました。
ですが、どこからか漏れ出て、年端のいかない未成年を囲っているなどと嘲笑の的にされても困ります。
醜い権力争いをする貴族たちに王の落とし胤が利用される可能性もあるのです。
何かあった際には「は? 性交の許されている年齢ですが?」と反論できるように。
場合によっては「は? そもそもが性愛人形ですが?」と正々堂々と反撃できるように。
騎士団長が予防線を張ったのです。
要するにリスク回避です。
ただ王と騎士団長の中では、しばらくは若き天才博士が人工生命体を見事に作り上げたことは極秘にしておきたいとも考えておりました。
それは他国との軍事バランスを踏まえてでした。
そこで見た目は人間、中身は人工生命体の人形には、ローギィ騎士団長が地方遠征の際にうっかりできちゃった隠し子という偽装工作がされることとなりました。
発案はカルロ王です。
言うまでもなくローギィはしぶりました。
両刀使いのモテ男には実際に若い頃のヤンチャでできた私生児が数人いたからでした。
要するに似たもの主従です。
王の無節操など、そもそもが責められる立場ではなかったのです。
ですが、これ以上痛くなくない腹を探られたくなくても、中間管理職の騎士団長としては従うしかありません。
このようにして、高位貴族である騎士団長の、教育がなされてない田舎の息子という設定で、見習い騎士のラン・プノーシンという少年をお供に付けて人形は学校に通うこととなったのです。
「坊ちゃん、オラはここまでしか入れないですけぇ。従者専用の部屋で待っていますけぇ。どうぞ行ってきてくださいけぇ。こちらがお弁当ですけぇ」
王立学院初等部は貴族や裕福な町民の子供たちが通う学校です。
護衛とはいえ、教室までついていくことはさすがにできません。
燃え盛る炎のような赤毛をしたプノーシンが塔の前で足を止めると言いました。
プノーシンが従者に抜擢されたのは、年齢が近いことと出身地方について誰かに尋ねられた際に説得力を持たせるようにとの思惑からでした。
「うん、プノーシン、ありがとう」
「お帰りの時にここでお待ちしていますけぇ」
「わかった。じゃ、行ってくるね」
そばかすが頬に目立つ家来からお弁当の包みを受け取ると、人形は笑顔で学び舎へと向かいました。
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