愛の操り人形~サンピーノキオ~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

文字の大きさ
10 / 15

***生粋のワルにそそのかされる人形***

しおりを挟む
 キッツーとニヤンが直ちに背中を向けて「もしかして、こいつは…」とヒソヒソ話を始めます。
 人形の耳がすかさず集音機能の性能を上げました。
 どうやら、あの有名な騎士団長の隠し子が特別入学してくるらしいと。
 耳ざとい父親たちから聞いて転入を知っていたようです。
 どうせ、田舎者だ。
 ノータリンに決まっている。
 金を持っていたら根こそぎもらってやろうと。
 既に心根の腐っていた彼らはほくそ笑みました。
 うまく騎士団長の弱みでも掴めれば、父親に取り入ることもできます。

(どういう意味だろう…?)

 人形が首を傾げました。
 何とはなしに聞き取れてはいますが、いひひだとか、うししだとか。
 独特がすぎる笑い声と隠語の混ざる話は人形の現時点の理解領域を越えていました。
 なによりも人形は悪意といったものに触れたことがなかったのです。

「サンピーノキオさま、あなたみたいな素晴らしい方にお目にかかれて光栄です。ぜひとも、お友達になって下さい」
「私とも、お友達になって下さい、ぜひ」

 途端に手のひらを返したようにキッツーとニヤンが笑顔で話しかけてきました。
  ですが初めての申し出の、友達という魅力的な響きを耳にして、隠された下心など人形にはまだ見抜けるはずがありません。

(お友達…)

 キラキラと無邪気な人形は瞳を輝かせました。
 初日に学校でお友達ができたと報告したら、博士はきっと喜ぶだろうと思ったのです。

「さぁさぁ、私のことはキッツーとお呼び下さい」
「私はニヤンと」
「キッツー、ニヤン…じゃあ、ぼくのことはサンピーノキオと」

 にこやかに返されて、こいつは御しやすいぞとキッツーとニヤンは腹の底で笑い合いました。

「いやいや、ぼくらはサンピーノキオさまと呼ばないと怒られちゃいますからね」
「怒られちゃう?」
「そうですよ、身分をわきまえないと。それよりも、これから一緒に遊びに行きませんか」
「遊びに?」
「そうです、見世物小屋がこの近くで見られるんですよ」
「見世物小屋?」
「知らないですか? 面白いですよ、さぁさぁ、行きましょう、行きましょう」

 ぐいぐいと強引に腕を引っ張られて人形が「あ、でも、プノーシンが待ってるから」と咄嗟に足を踏んばりました。

「プノーシン?」
「うん、ぼくが終わるのを待ってるんだ」
「あぁ…召使いを待たせてるのですか」
「それだったら先に帰るよう、私が伝えてきますよ」

 邪魔者は排除しようとニヤンがすぐさま駆けだします。
 人形が慌てて引き止めました。

「えっ、だめだよ、それは」
「ぼくたちがお屋敷までちゃんと送って差し上げますから、召使いがいなくても心配はいりませんよ」

 騙す側としては知恵のある従者にでも付いてこられては何かと都合が悪いのです。
 キッツーが直ちに間に入りこみました。

「プノーシンは召使いじゃないよ、友達なんだ」

 自分の口で発言しておきながら、そうだよと人形は合点しました。
 ジェペット博士がプノーシンに言っていたのです。
 プノーシンは護衛ではあるけど、ノキオのいいお友達にもなってねと。
 そうなると、プノーシンこそが初めての友達です。
 人形は時間差で学習をしました。

「プノーシンが一緒じゃないと、ぼくは行けないよ」

 今から面白い場所に行くというのなら、大事な友達のプノーシンだけを帰すわけにはいきません。
 人形はきっぱりと告げました。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

処理中です...