愛の操り人形~サンピーノキオ~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

文字の大きさ
12 / 15

***悪がひそむ遊び島***

しおりを挟む
「わぁ、こんなに広いんだぁ」

 見世物小屋という響きから、こじんまりとした建物を想像していたのです。
 ところが虹色の丸いアーチ橋を渡って行く、その島のなんとも大きいこと大きいこと。
 青く澄んだ池もあれば遊ぶ小舟も浮かんでいます。
 そのうえ思っていたよりも多くの子供たちが集まっていて人形はとてもびっくりしてしまいました。

「この遊び島では子供はケーキやアイスが食べ放題なんですよ」
「えっ、食べ放題!?」
「ちょっとだけ行ってみましょうよ」
「うんうん、行ってみたい。プノーシン、ちょっとだけならいいでしょ?」
「う~ん、ほんの少しだけですけぇ」

 しぶしぶと従う様子を見せながらも、見習い少年騎士もまた長い前髪の間からキョロキョロと物珍しそうに周囲を見渡します。
 こんな場所は初めてでした。
 これで無料で入れて、しかも食べ放題とはどういうことだろう、どうやって利益を取っているのだろうと不思議でたまりません。

「すごい、すごいなぁ」

 かたや、ジジジジ…と。
 人形がもらったアイスを片手に眺める光景は。
 色とりどりのボールを投げては取り、また投げてはジャグリングをする道化師ピエロから大人でも見上げるほどの巨人に。
 笛を吹いて双頭の蛇を操る蛇使いから火炎を勢いよく吹く巨漢など。
 なんて魅力的なのでしょう。

「あそこが見世物小屋だねっ」
「ぼっちゃん、どこに行くですけぇ」

 プノーシンが止めるにも関わらず、手を叩いては走り回り、気がつけば引き寄せられるようにして島の奥へ奥へと入ってしまいました。

「うわぁ、本で見た世界よりも、もっともっとすごいよ」

 キラキラと光る衣装で蝶のように舞って飛ぶ空中ブランコや玉乗り、そして大小の動物たちが見せる曲芸はどれも圧巻です。
 見世物小屋とはサーカスのことだったのかと。
 既に入手インプット済みだった情報とリアルタイムで得る、感動に溢れる実体験とが人形の中でリンクし始めます。
 けれども見世物小屋とはさらに奥にある別の場所のことでした。
 人形と従者が夢中になっている傍らで。
 スッと。
 キッツーとニヤンが離れました。

「キッツーさま、さっき、あのキノコ頭に聞いたんですけど、屋敷が遠くないからって金を持ってきてないようですぜ」
「チッ…なんだよ、使えねぇな」
「どうしますか、今日はこのまま帰して、今度ちゃんと持って来いって言いますか?」
「そうだな。まずは脅しのネタでも作るか」

 なんと言っても親は王直属の騎士団長なのです。
 どうやって金を巻き上げてやろうかと。
 どんな弱みを作ってやろうかと。
 薄暗い幕の後ろでヒソヒソと悪知恵を働かせます。

「でしたら、のぞき穴に連れて行くのはどうですか」
「いいな、それ」

 ニヤンの提案にニヤリとキッツーも悪い笑みを浮かべました。
 王に仕える高位の貴族の子供が、成人しか入ってはいけない禁断の場所から猥褻な室内を眺めていることがバレたら、どうなるでしょう。
 親に怒られるだけでなく、それこそせっかく入った名門校も退学になってしまうかもしれません。
 不名誉なレッテルが貼られることは避けたいはずです。

「ちょっと裏方に写真機カメラを借りてきます」

 ニヤンが手慣れた感じで道具を取りに行きました。
 遊び島は彼らの勝手知ったる悪事の縄張りだったのです。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

処理中です...