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***悪がひそむ遊び島***
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「わぁ、こんなに広いんだぁ」
見世物小屋という響きから、こじんまりとした建物を想像していたのです。
ところが虹色の丸いアーチ橋を渡って行く、その島のなんとも大きいこと大きいこと。
青く澄んだ池もあれば遊ぶ小舟も浮かんでいます。
そのうえ思っていたよりも多くの子供たちが集まっていて人形はとてもびっくりしてしまいました。
「この遊び島では子供はケーキやアイスが食べ放題なんですよ」
「えっ、食べ放題!?」
「ちょっとだけ行ってみましょうよ」
「うんうん、行ってみたい。プノーシン、ちょっとだけならいいでしょ?」
「う~ん、ほんの少しだけですけぇ」
しぶしぶと従う様子を見せながらも、見習い少年騎士もまた長い前髪の間からキョロキョロと物珍しそうに周囲を見渡します。
こんな場所は初めてでした。
これで無料で入れて、しかも食べ放題とはどういうことだろう、どうやって利益を取っているのだろうと不思議でたまりません。
「すごい、すごいなぁ」
かたや、ジジジジ…と。
人形がもらったアイスを片手に眺める光景は。
色とりどりのボールを投げては取り、また投げてはジャグリングをする道化師から大人でも見上げるほどの巨人に。
笛を吹いて双頭の蛇を操る蛇使いから火炎を勢いよく吹く巨漢など。
なんて魅力的なのでしょう。
「あそこが見世物小屋だねっ」
「ぼっちゃん、どこに行くですけぇ」
プノーシンが止めるにも関わらず、手を叩いては走り回り、気がつけば引き寄せられるようにして島の奥へ奥へと入ってしまいました。
「うわぁ、本で見た世界よりも、もっともっとすごいよ」
キラキラと光る衣装で蝶のように舞って飛ぶ空中ブランコや玉乗り、そして大小の動物たちが見せる曲芸はどれも圧巻です。
見世物小屋とはサーカスのことだったのかと。
既に入手済みだった情報とリアルタイムで得る、感動に溢れる実体験とが人形の中でリンクし始めます。
けれども見世物小屋とはさらに奥にある別の場所のことでした。
人形と従者が夢中になっている傍らで。
スッと。
キッツーとニヤンが離れました。
「キッツーさま、さっき、あのキノコ頭に聞いたんですけど、屋敷が遠くないからって金を持ってきてないようですぜ」
「チッ…なんだよ、使えねぇな」
「どうしますか、今日はこのまま帰して、今度ちゃんと持って来いって言いますか?」
「そうだな。まずは脅しのネタでも作るか」
なんと言っても親は王直属の騎士団長なのです。
どうやって金を巻き上げてやろうかと。
どんな弱みを作ってやろうかと。
薄暗い幕の後ろでヒソヒソと悪知恵を働かせます。
「でしたら、のぞき穴に連れて行くのはどうですか」
「いいな、それ」
ニヤンの提案にニヤリとキッツーも悪い笑みを浮かべました。
王に仕える高位の貴族の子供が、成人しか入ってはいけない禁断の場所から猥褻な室内を眺めていることがバレたら、どうなるでしょう。
親に怒られるだけでなく、それこそせっかく入った名門校も退学になってしまうかもしれません。
不名誉なレッテルが貼られることは避けたいはずです。
「ちょっと裏方に写真機を借りてきます」
ニヤンが手慣れた感じで道具を取りに行きました。
遊び島は彼らの勝手知ったる悪事の縄張りだったのです。
見世物小屋という響きから、こじんまりとした建物を想像していたのです。
ところが虹色の丸いアーチ橋を渡って行く、その島のなんとも大きいこと大きいこと。
青く澄んだ池もあれば遊ぶ小舟も浮かんでいます。
そのうえ思っていたよりも多くの子供たちが集まっていて人形はとてもびっくりしてしまいました。
「この遊び島では子供はケーキやアイスが食べ放題なんですよ」
「えっ、食べ放題!?」
「ちょっとだけ行ってみましょうよ」
「うんうん、行ってみたい。プノーシン、ちょっとだけならいいでしょ?」
「う~ん、ほんの少しだけですけぇ」
しぶしぶと従う様子を見せながらも、見習い少年騎士もまた長い前髪の間からキョロキョロと物珍しそうに周囲を見渡します。
こんな場所は初めてでした。
これで無料で入れて、しかも食べ放題とはどういうことだろう、どうやって利益を取っているのだろうと不思議でたまりません。
「すごい、すごいなぁ」
かたや、ジジジジ…と。
人形がもらったアイスを片手に眺める光景は。
色とりどりのボールを投げては取り、また投げてはジャグリングをする道化師から大人でも見上げるほどの巨人に。
笛を吹いて双頭の蛇を操る蛇使いから火炎を勢いよく吹く巨漢など。
なんて魅力的なのでしょう。
「あそこが見世物小屋だねっ」
「ぼっちゃん、どこに行くですけぇ」
プノーシンが止めるにも関わらず、手を叩いては走り回り、気がつけば引き寄せられるようにして島の奥へ奥へと入ってしまいました。
「うわぁ、本で見た世界よりも、もっともっとすごいよ」
キラキラと光る衣装で蝶のように舞って飛ぶ空中ブランコや玉乗り、そして大小の動物たちが見せる曲芸はどれも圧巻です。
見世物小屋とはサーカスのことだったのかと。
既に入手済みだった情報とリアルタイムで得る、感動に溢れる実体験とが人形の中でリンクし始めます。
けれども見世物小屋とはさらに奥にある別の場所のことでした。
人形と従者が夢中になっている傍らで。
スッと。
キッツーとニヤンが離れました。
「キッツーさま、さっき、あのキノコ頭に聞いたんですけど、屋敷が遠くないからって金を持ってきてないようですぜ」
「チッ…なんだよ、使えねぇな」
「どうしますか、今日はこのまま帰して、今度ちゃんと持って来いって言いますか?」
「そうだな。まずは脅しのネタでも作るか」
なんと言っても親は王直属の騎士団長なのです。
どうやって金を巻き上げてやろうかと。
どんな弱みを作ってやろうかと。
薄暗い幕の後ろでヒソヒソと悪知恵を働かせます。
「でしたら、のぞき穴に連れて行くのはどうですか」
「いいな、それ」
ニヤンの提案にニヤリとキッツーも悪い笑みを浮かべました。
王に仕える高位の貴族の子供が、成人しか入ってはいけない禁断の場所から猥褻な室内を眺めていることがバレたら、どうなるでしょう。
親に怒られるだけでなく、それこそせっかく入った名門校も退学になってしまうかもしれません。
不名誉なレッテルが貼られることは避けたいはずです。
「ちょっと裏方に写真機を借りてきます」
ニヤンが手慣れた感じで道具を取りに行きました。
遊び島は彼らの勝手知ったる悪事の縄張りだったのです。
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