オメガの戦士はアルファに囚われる~ギリシャ神話オメガバース~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

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10:ハデスの神殿と揺るがない求愛と

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 (いや、どうなんだろうか…)
 
 とすぐさま否定する。実在するのかも、自分と関係があるのかもわからない。そして、わかりようもない。そもそも、自分のことすらわかっていないのだから。

 (オレは一体、どこの誰だったのだろうか・・・)

 ペルセウス――グライアイの老婆たちが自分を見て、叫んだ名前を思い起こす。

 (オレは・・・ペルセウスという男だったのか?)

 あれから何度も考えているが、その男であった記憶はもちろんのこと、自分に関する事は何一つ思い浮かばない。

 そんな中、唯一の手がかりが夢だ。だから、夢は自分の過去と繋がっているような気がしてたまらない。

 (そうだ。多分、おそらく・・・)

 夢の内容に通じる何かしらの過去が自分にはあって、オメガという性に対する嫌悪感や、抱かれることに対する拭いきれない拒絶があるのではないだろうか。

 (あぁ、アトラス…)

 けれども、そんな失われた過去に対する疑念や不安さえも、もはやどうでもいいとすら感じるほどに。

 交互に与えられた気が狂いそうなまでの快感と甘い苦悶の時間は、どうしようもないほどに身にも心にもどっぷりと染みこんでいて。

 思い起こせば起こすほど、身体がジンと熱くなり、欲してしまいそうになる。また、してと。また、抱いてと。また、挿れてと。

 変えられてしまったのだ、完全なまでに。抱かれる身体に、孕まされる側に。開花させられてしまったのだ、虐げられる性のオメガに。

 (あぁ…いやだ。やっぱり、そんなのはいやだ…)

 と首を横に振って、払い落とすようにしてその現実を拒む。

 そんな自分はいやなのだ。やはり、いやなのだ。そうはなりたくないと。自分の根幹には無性に何か引っかかるモノがある。到底、受け入れるわけにはいかない。

 (それに、アトラスだって、わからないじゃないか・・・)

 揺れ動く感情の中、もう一人の自分が心の中で囁いた――二度としないと約束しておいて、結局は無理矢理に抱いた男じゃないかと。

 (アトラスだって、彼らと同じように、オメガのお前を性具のように扱うんじゃないのか。アルファ神族なのだから)

 自分の心の呟きだというのに、その思い浮かんだ言葉にハッとした。

 (そうだ、アルファ神族・・・)

 怖れをなしたミノタウロスがアトラスに向かって口にした言葉だ。今まで、神族の血が入っているとは確信していたが、神族その者だと思ったことはなかった。

 (まさか、アルファ神族なのか・・・?)

 半神半人あたりだろうと思ってはいたが、言われてみれば、あれほどまでに強くて高位なアルケーを呼吸をするかのように易々と扱うのだ。神族だったとしてもなんらおかしくはない。

 (いや、でも・・・)

 アトラスは自分もまた元囚人であると、逆行者だと告げたのだ。

 神族がタルタロスの監獄に収監されるなんて、あるのだろうか。しかも神族の中でも優位の存在が。もちろん、いなくはないだろうがと思ったところで、ふと名前が浮かんだ。

 (プロメテウス・・・)

 先祖種ティターンでありながら、禁断の天の火を人間に与えたことで、オリュンポスの二柱ゼウス、ポセイドン、そしてハデスに縛され、残酷な刑に処されたと聞く神族だ。

 (まさか・・・)

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