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11:メデューサの岩窟とペガサスと
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ヒラリと獣車から降り立って、光る枝葉の後に続く。
『河の流れは岩窟を通り抜けて、テーバイの地、ピキオン山に通じています。つまり、スフィンクスはこちらの入り口ではなく、手下を引き連れて裏側から入ってきました』
「中は、行き止まりじゃないのか?」
『はい。ですので、待ち伏せしていても意味はありません。奥まで進みませんと』
ペガサスの説明を耳にしながら足場の悪い川岸をさらに歩み、洞窟へとたどり着けば――
おそらくは天井が崩落したのだろう。大小様々な岩石がゴロゴロと転がり、ゴツゴツと鋭く尖って出っ張った石壁に、陰湿で暗い苔の生えている通路が待ち受けている。
ヒュォォォォーーーッ・・・・・・
と邪気のこもった風が、侵入者に忠告でもするかのように吹きつけてきた。
その、魔物の牙のように長く垂れ下がった鍾乳石の、ピチョーン、ピチョーンと。水滴を落とす暗路を、ペガサスの光とケールの魔炎を頼りに慎重に進んで行く。
「間に合うかな・・・棺のある場所は遠いのか?」
『まだ大丈夫でしょう。向こう側の出入り口からの路は入り組んでおり、仮にその迷路を越えたところで、メデューサの財宝の山が目くらましとなっていて、探し出せていない可能性もあります。もし、見つけていたとしても運び出すのに時間がかかるはずです』
「そうか・・・うわぁっ!!」
つい焦ったためか、ぬるりと。片足を取られて、バランスを崩す。叫んだ声が、うゎん、うゎん、うゎん・・・と洞窟内に反響する中、立て直して、なんとか転ばずに済む。
「あぁ・・・危なかった」
「クゥゥ・・・」
あまりにも心もとない様子に。すぐさま、ケールが肩から地面に降りて、ボワンッと魔炎を大きく燃え上がらせた。ジュッ、ジュッ、ジュッと小さな前足で、地面の苔と水気を除去する。
「ウゥゥ・・・」
自分の後ろを歩けとばかりに見上げると、先を歩み始めた。
「ありがとう、ケール・・・」
『大丈夫ですか? お気を付け下さい。ですが、もう少し先に行くと神殿に入りますから、足下も落ち着くかと・・・』
「神殿? 神殿があるのか、この先に? なぜ、洞窟の中に神殿なんかが・・・」
確かに想像していたよりも。足を踏み入れてみれば、上下左右ともに広々とした岩穴ではある。だが、神殿があるとは到底、信じられない。
『はい。先ほどの入り口はメデューサによって後から破壊されましたが、本来は搬入物を中へと運び入れる整備された路でした。かつて、メデューサは近くの村々を急襲しては人々を脅し、神殿をここに作らせたのです』
(神殿を作らせた・・・?)
一体、何のためにと疑問を口にする前に、その光景は眼前に広がった。
(あっ・・・)
『三つある洞窟の中でも、メデューサが最も気に入っている場所がここになります』
突如として開けた空間はまさに地下にある神殿だ。大理石が敷き詰められた床に、天井まで届く、中央が丸みを帯びた円柱が並ぶ。
その様子は左右が非対称であるだけでなく、まるで間を縫って先に進めとばかりに、通路の真ん中にも配置されていて。
そして、それらの柱の要所要所に焚かれた松明の入れ物には、フクロウの彫刻が施されている。さらに壁面には、全身を武装した女戦士が勇ましく戦っている絵が描かれていてと。
(アテナ・・・か?)
とすぐさま、その名が思い浮かんだ。
『河の流れは岩窟を通り抜けて、テーバイの地、ピキオン山に通じています。つまり、スフィンクスはこちらの入り口ではなく、手下を引き連れて裏側から入ってきました』
「中は、行き止まりじゃないのか?」
『はい。ですので、待ち伏せしていても意味はありません。奥まで進みませんと』
ペガサスの説明を耳にしながら足場の悪い川岸をさらに歩み、洞窟へとたどり着けば――
おそらくは天井が崩落したのだろう。大小様々な岩石がゴロゴロと転がり、ゴツゴツと鋭く尖って出っ張った石壁に、陰湿で暗い苔の生えている通路が待ち受けている。
ヒュォォォォーーーッ・・・・・・
と邪気のこもった風が、侵入者に忠告でもするかのように吹きつけてきた。
その、魔物の牙のように長く垂れ下がった鍾乳石の、ピチョーン、ピチョーンと。水滴を落とす暗路を、ペガサスの光とケールの魔炎を頼りに慎重に進んで行く。
「間に合うかな・・・棺のある場所は遠いのか?」
『まだ大丈夫でしょう。向こう側の出入り口からの路は入り組んでおり、仮にその迷路を越えたところで、メデューサの財宝の山が目くらましとなっていて、探し出せていない可能性もあります。もし、見つけていたとしても運び出すのに時間がかかるはずです』
「そうか・・・うわぁっ!!」
つい焦ったためか、ぬるりと。片足を取られて、バランスを崩す。叫んだ声が、うゎん、うゎん、うゎん・・・と洞窟内に反響する中、立て直して、なんとか転ばずに済む。
「あぁ・・・危なかった」
「クゥゥ・・・」
あまりにも心もとない様子に。すぐさま、ケールが肩から地面に降りて、ボワンッと魔炎を大きく燃え上がらせた。ジュッ、ジュッ、ジュッと小さな前足で、地面の苔と水気を除去する。
「ウゥゥ・・・」
自分の後ろを歩けとばかりに見上げると、先を歩み始めた。
「ありがとう、ケール・・・」
『大丈夫ですか? お気を付け下さい。ですが、もう少し先に行くと神殿に入りますから、足下も落ち着くかと・・・』
「神殿? 神殿があるのか、この先に? なぜ、洞窟の中に神殿なんかが・・・」
確かに想像していたよりも。足を踏み入れてみれば、上下左右ともに広々とした岩穴ではある。だが、神殿があるとは到底、信じられない。
『はい。先ほどの入り口はメデューサによって後から破壊されましたが、本来は搬入物を中へと運び入れる整備された路でした。かつて、メデューサは近くの村々を急襲しては人々を脅し、神殿をここに作らせたのです』
(神殿を作らせた・・・?)
一体、何のためにと疑問を口にする前に、その光景は眼前に広がった。
(あっ・・・)
『三つある洞窟の中でも、メデューサが最も気に入っている場所がここになります』
突如として開けた空間はまさに地下にある神殿だ。大理石が敷き詰められた床に、天井まで届く、中央が丸みを帯びた円柱が並ぶ。
その様子は左右が非対称であるだけでなく、まるで間を縫って先に進めとばかりに、通路の真ん中にも配置されていて。
そして、それらの柱の要所要所に焚かれた松明の入れ物には、フクロウの彫刻が施されている。さらに壁面には、全身を武装した女戦士が勇ましく戦っている絵が描かれていてと。
(アテナ・・・か?)
とすぐさま、その名が思い浮かんだ。
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