オメガの戦士はアルファに囚われる~ギリシャ神話オメガバース~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

文字の大きさ
122 / 169
11:メデューサの岩窟とペガサスと

8

しおりを挟む
 ヒラリと獣車クーペから降り立って、光る枝葉の後に続く。

 『河の流れは岩窟を通り抜けて、テーバイの地、ピキオン山に通じています。つまり、スフィンクスはこちらの入り口ではなく、手下を引き連れて裏側から入ってきました』

 「中は、行き止まりじゃないのか?」

 『はい。ですので、待ち伏せしていても意味はありません。奥まで進みませんと』

 ペガサスの説明を耳にしながら足場の悪い川岸をさらに歩み、洞窟へとたどり着けば――

 おそらくは天井が崩落したのだろう。大小様々な岩石がゴロゴロと転がり、ゴツゴツと鋭く尖って出っ張った石壁に、陰湿で暗い苔の生えている通路が待ち受けている。

 ヒュォォォォーーーッ・・・・・・

 と邪気のこもった風が、侵入者に忠告でもするかのように吹きつけてきた。

 その、魔物の牙のように長く垂れ下がった鍾乳石しょうにゅうせきの、ピチョーン、ピチョーンと。水滴を落とす暗路を、ペガサスの光とケールの魔炎を頼りに慎重に進んで行く。

 「間に合うかな・・・棺のある場所は遠いのか?」

 『まだ大丈夫でしょう。向こう側の出入り口からの路は入り組んでおり、仮にその迷路を越えたところで、メデューサの財宝の山が目くらましとなっていて、探し出せていない可能性もあります。もし、見つけていたとしても運び出すのに時間がかかるはずです』

 「そうか・・・うわぁっ!!」

 つい焦ったためか、ぬるりと。片足を取られて、バランスを崩す。叫んだ声が、うゎん、うゎん、うゎん・・・と洞窟内に反響する中、立て直して、なんとか転ばずに済む。

 「あぁ・・・危なかった」

 「クゥゥ・・・」

 あまりにも心もとない様子に。すぐさま、ケールが肩から地面に降りて、ボワンッと魔炎を大きく燃え上がらせた。ジュッ、ジュッ、ジュッと小さな前足で、地面の苔と水気を除去する。

 「ウゥゥ・・・」

 自分の後ろを歩けとばかりに見上げると、先を歩み始めた。

 「ありがとう、ケール・・・」

 『大丈夫ですか? お気を付け下さい。ですが、もう少し先に行くと神殿に入りますから、足下も落ち着くかと・・・』

 「神殿? 神殿があるのか、この先に? なぜ、洞窟の中に神殿なんかが・・・」

 確かに想像していたよりも。足を踏み入れてみれば、上下左右ともに広々とした岩穴ではある。だが、神殿があるとは到底、信じられない。

 『はい。先ほどの入り口はメデューサによって後から破壊されましたが、本来は搬入物を中へと運び入れる整備された路でした。かつて、メデューサは近くの村々を急襲しては人々を脅し、神殿をここに作らせたのです』

 (神殿を作らせた・・・?)

 一体、何のためにと疑問を口にする前に、その光景は眼前に広がった。

 (あっ・・・)

 『三つある洞窟の中でも、メデューサが最も気に入っている場所がここになります』

 突如として開けた空間はまさに地下にある神殿だ。大理石が敷き詰められた床に、天井まで届く、中央が丸みを帯びた円柱が並ぶ。

 その様子は左右が非対称であるだけでなく、まるで間を縫って先に進めとばかりに、通路の真ん中にも配置されていて。

 そして、それらの柱の要所要所に焚かれた松明の入れ物には、フクロウの彫刻が施されている。さらに壁面には、全身を武装した女戦士が勇ましく戦っている絵が描かれていてと。

 (アテナ・・・か?)

 とすぐさま、その名が思い浮かんだ。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

流れる星は海に還る

藤間留彦
BL
若頭兄×現組長の実子の弟の血の繋がらない兄弟BL。 組長の命で弟・流星をカタギとして育てた兄・一海。組長が倒れ、跡目争いが勃発。実子の存在が知れ、流星がその渦中に巻き込まれることになり──。 <登場人物> 辻倉一海(つじくらかずみ) 37歳。身長188cm。 若い頃は垂れ目で優しい印象を持たれがちだったため、長年サングラスを掛けている。 組内では硬派で厳しいが、弟の流星には甘々のブラコン。 中村流星(なかむらりゅうせい) 23歳。身長177cm。 ストリートロックファッション、両耳ピアス。育ててくれた兄には甘えん坊だが、兄以外の前では──。 表紙イラストは座頭狂様に描いて頂きました✨ ありがとうございます☺️

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。

山法師
BL
 南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。  彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。  そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。 「そーちゃん、キスさせて」  その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。

ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果

SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。  そこで雪政がひらめいたのは 「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」  アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈  ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ! ※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

【完結】エデンの住処

社菘
BL
親の再婚で義兄弟になった弟と、ある日二人で過ちを犯した。 それ以来逃げるように実家を出た椿由利は実家や弟との接触を避けて8年が経ち、モデルとして自立した道を進んでいた。 ある雑誌の専属モデルに抜擢された由利は今をときめく若手の売れっ子カメラマン・YURIと出会い、最悪な過去が蘇る。 『彼』と出会ったことで由利の楽園は脅かされ、地獄へと変わると思ったのだが……。 「兄さん、僕のオメガになって」 由利とYURI、義兄と義弟。 重すぎる義弟の愛に振り回される由利の運命の行く末は―― 執着系義弟α×不憫系義兄α 義弟の愛は、楽園にも似た俺の住処になるのだろうか? ◎表紙は装丁cafe様より︎︎𓂃⟡.·

アルファな彼とオメガな僕。

スメラギ
BL
  ヒエラルキー最上位である特別なアルファの運命であるオメガとそのアルファのお話。  

処理中です...