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1章:恋に落ちちゃいました~呪われたオメガの王カール・オージー・サンデス・メイ・ジセイカ~
火花バチバチの園遊会へ
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「おそらくは言語に絶するほどの、言ってしまえば神がかっているとも言える無言劇への感服から体温が上昇し、その結果、生理活性物質を大量に放出なさったかと存じます」
確認し終わったと思ったのだろう。
静かに手を下げると内ポケットに時計をしまった。
「ですが、強力な呪符を身に着けてお仕えしている私めですら、この状態でございます。
陛下がいま外に出られましたら、どれほどの者が倒れることか」
なんと、そうきたか。
そうか、そうなのか。
跪いているのは立てなかったからなのか。
そう察した目の前で宰相魂に火がついたのか、ガクガクと膝が笑うような状態でありながらも「ふんぬっ」と老僕が立ち上がった。
さすがだ、乾布摩擦で毎日鍛えているだけある。
「陛下におかれましては例のモノを付けて頂かない限りは外に出るのはお控え頂きたく…」
(例のモノ…)
あぁ、アレかと。
極力身に着けたくない物体を思い起こし、フゥと溜め息をついた。
「だが、オレ…いや、我はあの者に賛辞を贈りたいのだ」
うっかり素で応じそうになった身を律し、トテトテトテ…と坂道を下り始めている姿をあ~ぁと残念この上ない気持ちで見送る。
「今までそのようなことをなさったことがございませんが」
「…今まであれほどまでの自分自慢を目にしたことがあるか?
いやあれはもはや自分自慢の範疇ではない。
滅私の域に達した農耕賛美だ、賞賛に値する」
ともっともらしく口にしつつも、頼むから自由にさせてくれよと心の中で叫ぶ。
今すぐ仲良くなりたいんだよ、本当に。
「陛下、でしたら、なおさら従来通りに明日の園遊会にお招きしては」
(園遊会…か)
そう胸の中で復唱しながらも。
正直なところ、その提案にはなんとまどろこしいことかと思う。
既に自分の中では本命も本命、大本命の運命の番なのだ。
だが、確かにいつもならその流れだ。
王の婚活にみんなしてかこつけて、国内の需要喚起事業も兼ねてスタートしたゴートゥキャッスルキャンペーン。
『元々が特別なオンリーワンの貴方にだって王妃のチャンス!! さぁ、笑顔で行こう、ゴゥートゥーキャッスルキャンペーン!!』
となんとも王室の伝統はどこへ行ったんだ、いつ捨てたんだ、いつだ、いつと詰め寄りたくなる、軽いとしか言いようのない謳い文句を掲げて。
しかも報告を受けた時には既に国民には告知済みで、当の自分にはキャンペーン始めましたって、夏の冷えた麺類じゃないんだぞ。
いくら自分たちで決められることは評議会で決めろと伝えてあったとはいえ、王の承認を何だと思っているのだ。
だが、それに対して国民もわかりやすかった。
もしかしたら自分にも可能性がという実に薄くて淡い、ないに等しいシンデレラドリームを抱く――というよりは現実をしっかりと見極めた上で、王都に安くいけるわぁと心の底から物見遊山でしかない感覚で、するわ、するわ、参加するわのノリの良さよ。
その中から毎回、存在感をより示せた者の数名が園遊会という名の翌日の慰安会に招かれる。
率直に言うのなら、場をよく盛り上げただの、企画が単純に楽しかっただのでそれほどまでレベルが高くない。
だが王直々の記念品で授与者は鼓舞され、送り出した出身地方もその話題で活性化され、次に繋がる。
だから、それはそれでいいのだ。
ところが同時にその祝宴には王妃になることを決して諦めない、権力やら財力やらを遺憾なく発揮した海外からの来賓が合流し、毎度毎度華やかでかつバチバチッと火花を散らした社交場へと発展するのだ。
確認し終わったと思ったのだろう。
静かに手を下げると内ポケットに時計をしまった。
「ですが、強力な呪符を身に着けてお仕えしている私めですら、この状態でございます。
陛下がいま外に出られましたら、どれほどの者が倒れることか」
なんと、そうきたか。
そうか、そうなのか。
跪いているのは立てなかったからなのか。
そう察した目の前で宰相魂に火がついたのか、ガクガクと膝が笑うような状態でありながらも「ふんぬっ」と老僕が立ち上がった。
さすがだ、乾布摩擦で毎日鍛えているだけある。
「陛下におかれましては例のモノを付けて頂かない限りは外に出るのはお控え頂きたく…」
(例のモノ…)
あぁ、アレかと。
極力身に着けたくない物体を思い起こし、フゥと溜め息をついた。
「だが、オレ…いや、我はあの者に賛辞を贈りたいのだ」
うっかり素で応じそうになった身を律し、トテトテトテ…と坂道を下り始めている姿をあ~ぁと残念この上ない気持ちで見送る。
「今までそのようなことをなさったことがございませんが」
「…今まであれほどまでの自分自慢を目にしたことがあるか?
いやあれはもはや自分自慢の範疇ではない。
滅私の域に達した農耕賛美だ、賞賛に値する」
ともっともらしく口にしつつも、頼むから自由にさせてくれよと心の中で叫ぶ。
今すぐ仲良くなりたいんだよ、本当に。
「陛下、でしたら、なおさら従来通りに明日の園遊会にお招きしては」
(園遊会…か)
そう胸の中で復唱しながらも。
正直なところ、その提案にはなんとまどろこしいことかと思う。
既に自分の中では本命も本命、大本命の運命の番なのだ。
だが、確かにいつもならその流れだ。
王の婚活にみんなしてかこつけて、国内の需要喚起事業も兼ねてスタートしたゴートゥキャッスルキャンペーン。
『元々が特別なオンリーワンの貴方にだって王妃のチャンス!! さぁ、笑顔で行こう、ゴゥートゥーキャッスルキャンペーン!!』
となんとも王室の伝統はどこへ行ったんだ、いつ捨てたんだ、いつだ、いつと詰め寄りたくなる、軽いとしか言いようのない謳い文句を掲げて。
しかも報告を受けた時には既に国民には告知済みで、当の自分にはキャンペーン始めましたって、夏の冷えた麺類じゃないんだぞ。
いくら自分たちで決められることは評議会で決めろと伝えてあったとはいえ、王の承認を何だと思っているのだ。
だが、それに対して国民もわかりやすかった。
もしかしたら自分にも可能性がという実に薄くて淡い、ないに等しいシンデレラドリームを抱く――というよりは現実をしっかりと見極めた上で、王都に安くいけるわぁと心の底から物見遊山でしかない感覚で、するわ、するわ、参加するわのノリの良さよ。
その中から毎回、存在感をより示せた者の数名が園遊会という名の翌日の慰安会に招かれる。
率直に言うのなら、場をよく盛り上げただの、企画が単純に楽しかっただのでそれほどまでレベルが高くない。
だが王直々の記念品で授与者は鼓舞され、送り出した出身地方もその話題で活性化され、次に繋がる。
だから、それはそれでいいのだ。
ところが同時にその祝宴には王妃になることを決して諦めない、権力やら財力やらを遺憾なく発揮した海外からの来賓が合流し、毎度毎度華やかでかつバチバチッと火花を散らした社交場へと発展するのだ。
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