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1章:恋に落ちちゃいました~呪われたオメガの王カール・オージー・サンデス・メイ・ジセイカ~
どんな刑に処してやろうか
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と宰相が告げた途端にザッと。
事前に打ち合わせでもしていたかのように若手の宰相全員が立ち上がり、バタバタバタバタと失神者やら負傷者を担架で運んでくる。
「陛下はこの悲惨な状況をどうお考えですか」
それはそれは手際よく次から次へと。
運ばれてきては痛いよ、腰をひねったよ、ものすごくぎっくり腰だよと呻く姿に無言にならざるを得ない。
「陛下、実に痛ましい、この被害者たちをどうお考えですか…えぇ、みなが陛下の犠牲者なのです!!」
そう来たか。
くっそ~、ぐうの音も出ないではないか。
「これもそれも天下の賢王と名高い陛下がお気に入りの者が見当たらずに感情が高ぶったが故にです。
そんな、どうしたことだかやってしまいましたねの陛下が…そのようなお心の状態のまま外に出られたらどうなるのでしょうか。
えぇ、えぇ、そうです、無防備で無邪気な民の間にどれほどの甚大な被害をもたらすでしょうか!!」
老練がこれ見よがしに両手を大きく広げ、首を大げさに横に振る。
「ですが、わたくしがこれほどまでに真摯にお伝えしても、これほどまでに御身と民を思ってご助言申し上げても。
それこそ確か陛下は前例もお持ちでしたよね、お忘れでしたかと確認をいたしましても。
なにがなんでもどうしても行きたいんだとおっしゃるのでしたら、この有能なわたくしでももはや為す術はございません。
それならば、せめてアレを。
そう、せめてアレを着けてご出発なさる…いやでも、やはりここは斥候に任せるべきなのではないでしょうか」
と見事に着地を決められた。
「宰相…理解はした」
そう冷ややかに応じながらも。
心の中はくっそ~、くっそ~の嵐だ。
「おそれながら…」
と見かねたのか、黒い甲冑姿の巨体が言葉を発した。
「なんだ」
「我ら、王の忠実なる狂犬と称される黒の稲妻騎士団、どのような相手が敵であろうとも必ずや陛下の想い人ヘケロさまを救い出し、お連れいたします。
ですので、玉座で今しばらくお待ち頂きたく」
「……」
「そうです、それが君主たる者のあるべき姿です。
斥候には斥候の仕事をさせ、王は玉座です」
王直属部隊をあくまでも斥候と言い張る宰相に辟易しながらも静かに頷く。
理論で負けたのだ。
前科もある。
分が悪い。
「いいだろう。
では、ユラーク…任せるぞ。
ケガがないことをひたすら祈るが、いかなる手段を用いても迅速に見つけ、的確に救い出し、我の元へとできる限り早く連れてきてくれ」
「はっ」
なんということだ。
今すぐにでもこの手で探しに行きたいというのに、他人に託さなければいけないとは。
万能でありながらも不自由なこの身が呪わしい。
「イーソを連れて行け。
我から連絡をする時はジーンを使う」
「はっ」
「いいな、あまり待たせるな。
我の大切なヘケロを強奪した罪人も早急に確保し、我の元へ」
「御意」
巨岩のような大きさの割りにはビュォンッという音だけを残して、あっという間に姿を消した勇ましい団長に渋々想いを託す。
(無事でいてくれ…)
ヘケロの身に一体何があったのか。
どれほどの下衆な輩のどれほどの卑劣な行いの犠牲となったのか。
昨日のあの感動溢れる心技一体の無言劇を見て、狙いを付けたに違いない。
目的は何なのか、営利目的なのか。
はたまた個人所有の道化師にでもしようと思ったのか。
いずれにしてもどうにも許しがたい。
まさか運命の番とせっかく出会えたというのに早々に奪い取られるとは。
絶対に捕まえてやる。
どんな刑に処してやろか。
「では、陛下。
園遊会の後片付けはお任せ下さい。
今後予定が不規則となる可能性を踏まえ、本日は通常政務へと戻りましょう」
と懐中時計を手にした空気が読めない宰相の鬼のような発言だけが響き渡った。
事前に打ち合わせでもしていたかのように若手の宰相全員が立ち上がり、バタバタバタバタと失神者やら負傷者を担架で運んでくる。
「陛下はこの悲惨な状況をどうお考えですか」
それはそれは手際よく次から次へと。
運ばれてきては痛いよ、腰をひねったよ、ものすごくぎっくり腰だよと呻く姿に無言にならざるを得ない。
「陛下、実に痛ましい、この被害者たちをどうお考えですか…えぇ、みなが陛下の犠牲者なのです!!」
そう来たか。
くっそ~、ぐうの音も出ないではないか。
「これもそれも天下の賢王と名高い陛下がお気に入りの者が見当たらずに感情が高ぶったが故にです。
そんな、どうしたことだかやってしまいましたねの陛下が…そのようなお心の状態のまま外に出られたらどうなるのでしょうか。
えぇ、えぇ、そうです、無防備で無邪気な民の間にどれほどの甚大な被害をもたらすでしょうか!!」
老練がこれ見よがしに両手を大きく広げ、首を大げさに横に振る。
「ですが、わたくしがこれほどまでに真摯にお伝えしても、これほどまでに御身と民を思ってご助言申し上げても。
それこそ確か陛下は前例もお持ちでしたよね、お忘れでしたかと確認をいたしましても。
なにがなんでもどうしても行きたいんだとおっしゃるのでしたら、この有能なわたくしでももはや為す術はございません。
それならば、せめてアレを。
そう、せめてアレを着けてご出発なさる…いやでも、やはりここは斥候に任せるべきなのではないでしょうか」
と見事に着地を決められた。
「宰相…理解はした」
そう冷ややかに応じながらも。
心の中はくっそ~、くっそ~の嵐だ。
「おそれながら…」
と見かねたのか、黒い甲冑姿の巨体が言葉を発した。
「なんだ」
「我ら、王の忠実なる狂犬と称される黒の稲妻騎士団、どのような相手が敵であろうとも必ずや陛下の想い人ヘケロさまを救い出し、お連れいたします。
ですので、玉座で今しばらくお待ち頂きたく」
「……」
「そうです、それが君主たる者のあるべき姿です。
斥候には斥候の仕事をさせ、王は玉座です」
王直属部隊をあくまでも斥候と言い張る宰相に辟易しながらも静かに頷く。
理論で負けたのだ。
前科もある。
分が悪い。
「いいだろう。
では、ユラーク…任せるぞ。
ケガがないことをひたすら祈るが、いかなる手段を用いても迅速に見つけ、的確に救い出し、我の元へとできる限り早く連れてきてくれ」
「はっ」
なんということだ。
今すぐにでもこの手で探しに行きたいというのに、他人に託さなければいけないとは。
万能でありながらも不自由なこの身が呪わしい。
「イーソを連れて行け。
我から連絡をする時はジーンを使う」
「はっ」
「いいな、あまり待たせるな。
我の大切なヘケロを強奪した罪人も早急に確保し、我の元へ」
「御意」
巨岩のような大きさの割りにはビュォンッという音だけを残して、あっという間に姿を消した勇ましい団長に渋々想いを託す。
(無事でいてくれ…)
ヘケロの身に一体何があったのか。
どれほどの下衆な輩のどれほどの卑劣な行いの犠牲となったのか。
昨日のあの感動溢れる心技一体の無言劇を見て、狙いを付けたに違いない。
目的は何なのか、営利目的なのか。
はたまた個人所有の道化師にでもしようと思ったのか。
いずれにしてもどうにも許しがたい。
まさか運命の番とせっかく出会えたというのに早々に奪い取られるとは。
絶対に捕まえてやる。
どんな刑に処してやろか。
「では、陛下。
園遊会の後片付けはお任せ下さい。
今後予定が不規則となる可能性を踏まえ、本日は通常政務へと戻りましょう」
と懐中時計を手にした空気が読めない宰相の鬼のような発言だけが響き渡った。
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