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3章:捕まっちゃいました~呪われたオメガの王さまmeetsカエルの王さま~
二人で過ごす夜
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村人が自分たちで飲むためだけにたまたま細々と作っていただけの緑茶だったというのに。
どれだけの発想力を持っているのか。
そう、実に一を言ったら百を理解するといった域ではないのだ。
さらに上回る的確な提案をもしてくる。
やはりただ者ではない。
「オラーガ村にとっても悪くない話だと思う。
あと、そうだな。
ジセイカ王国では退位した王に公領が与えられるのだが、所定の手続きを取ってタケノコーノ・サト州を公国にしようと思う。
それによって地代の納め先が王ではなく領主、つまり公爵であるオレになるが村の公共事業へと戻すようにするから安心して任せて欲しい」
ポットを持ち上げると茶の濃さが均等になるように交互に注ぎながら。
「ただ、まぁ…今のところはないに等しい収益だがな」
フッと微笑まれてサッと慌てて顔を下に向けた。
「明日の午後、その村全体で行うという新茶摘みの時に茶畑と手もみ製茶法と…確かめて知識を深めてから具体的に詰めるとしよう。
はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございます…ケロ」
静かに差し出されてペコリとお辞儀をして受け取る。
もはや緑茶の創始者ですかとツッコみたくなるほど様になっている。
最後の一滴まで注ぎきった作法は、とてもじゃないが緑茶歴二度目には見えない。
「味はどうだ?」
「とても美味しいです…ケロ」
これこそが偽りのない言葉で。
自分がいれるよりも遙かに風味が出ていて美味だ。
「ん…いいな」
満ち足りたような表情で自身も茶を飲み始めた美貌をこっそりと窺う。
(退位したって…何回か口にしてるけど…)
公領の話よりも何よりも退位という言葉がずっと気になって仕方がない。
この若さで、この頭脳明晰ぶりで譲位しただなんて信じられない。
実にもったいない。
けれども、よほどの重圧だったのだろうか。
それはそれは終始、微塵たりとも未練を感じさせない笑顔なのだが、一体どういうことなのか。
『王さま…やめたらダメです…ダメです…ケロ』
と仰天しながら告げるとすぐさま世紀の名言になるだろう言葉とともに押し切られた。
『どうか偽りのない言葉だと信じて欲しい。
愛する者の助けと支えなしには、己が望むように重責を担い、国王としての義務を果たすことなどできない』
そう退位の意思を強く伝え、効力の付与を希望した退位宣言書を速攻でその場で作成した上に、在位の中で一番勢いよくサインをして宰相に叩き付けてやったのだと。
やたらと誇らしげに語っていたが、本当なのだろうか。
王冠を賭けた恋だったのだとすがすがしいまでの表情で続けて言われて。
(ど、どういうこと…?)
といった疑念が出会ってからずっと尽きることなどない。
「もう一杯飲みたいのだが、ヘケロは?」
「あっ、おいれします…ケロ」
「ヘケロも飲むんだな?
では、いれよう」
「そ、そんな…ダ、ダメです…ケロ」
「いいから」
「あっ…ケロ」
すぐさま元王さまが立ち上がり、当たり前のように空になった器へと鍋から湯を注ぐ。
(いやいやいやいや…どう考えてもおかしい…どう考えても…)
自称ジセイカ王国元国王という、とんでもない貴人だというのに。
従事するべき側はこちらだというのに。
どうしてこんな展開になってしまっているのか。
自分が今日したことと言えば、農作業といつもの古びた鍋に収穫した野菜を入れただけだ。
どれだけの発想力を持っているのか。
そう、実に一を言ったら百を理解するといった域ではないのだ。
さらに上回る的確な提案をもしてくる。
やはりただ者ではない。
「オラーガ村にとっても悪くない話だと思う。
あと、そうだな。
ジセイカ王国では退位した王に公領が与えられるのだが、所定の手続きを取ってタケノコーノ・サト州を公国にしようと思う。
それによって地代の納め先が王ではなく領主、つまり公爵であるオレになるが村の公共事業へと戻すようにするから安心して任せて欲しい」
ポットを持ち上げると茶の濃さが均等になるように交互に注ぎながら。
「ただ、まぁ…今のところはないに等しい収益だがな」
フッと微笑まれてサッと慌てて顔を下に向けた。
「明日の午後、その村全体で行うという新茶摘みの時に茶畑と手もみ製茶法と…確かめて知識を深めてから具体的に詰めるとしよう。
はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございます…ケロ」
静かに差し出されてペコリとお辞儀をして受け取る。
もはや緑茶の創始者ですかとツッコみたくなるほど様になっている。
最後の一滴まで注ぎきった作法は、とてもじゃないが緑茶歴二度目には見えない。
「味はどうだ?」
「とても美味しいです…ケロ」
これこそが偽りのない言葉で。
自分がいれるよりも遙かに風味が出ていて美味だ。
「ん…いいな」
満ち足りたような表情で自身も茶を飲み始めた美貌をこっそりと窺う。
(退位したって…何回か口にしてるけど…)
公領の話よりも何よりも退位という言葉がずっと気になって仕方がない。
この若さで、この頭脳明晰ぶりで譲位しただなんて信じられない。
実にもったいない。
けれども、よほどの重圧だったのだろうか。
それはそれは終始、微塵たりとも未練を感じさせない笑顔なのだが、一体どういうことなのか。
『王さま…やめたらダメです…ダメです…ケロ』
と仰天しながら告げるとすぐさま世紀の名言になるだろう言葉とともに押し切られた。
『どうか偽りのない言葉だと信じて欲しい。
愛する者の助けと支えなしには、己が望むように重責を担い、国王としての義務を果たすことなどできない』
そう退位の意思を強く伝え、効力の付与を希望した退位宣言書を速攻でその場で作成した上に、在位の中で一番勢いよくサインをして宰相に叩き付けてやったのだと。
やたらと誇らしげに語っていたが、本当なのだろうか。
王冠を賭けた恋だったのだとすがすがしいまでの表情で続けて言われて。
(ど、どういうこと…?)
といった疑念が出会ってからずっと尽きることなどない。
「もう一杯飲みたいのだが、ヘケロは?」
「あっ、おいれします…ケロ」
「ヘケロも飲むんだな?
では、いれよう」
「そ、そんな…ダ、ダメです…ケロ」
「いいから」
「あっ…ケロ」
すぐさま元王さまが立ち上がり、当たり前のように空になった器へと鍋から湯を注ぐ。
(いやいやいやいや…どう考えてもおかしい…どう考えても…)
自称ジセイカ王国元国王という、とんでもない貴人だというのに。
従事するべき側はこちらだというのに。
どうしてこんな展開になってしまっているのか。
自分が今日したことと言えば、農作業といつもの古びた鍋に収穫した野菜を入れただけだ。
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