最高天使に恋をして~忘却の河のほとりには~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

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淫欲に堕ちた妖精王子

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 ザシュッ!!

 それは、もはや見るまでもない、確認するまでもない聞き慣れた音。

 (またか・・・)

 まったくもってしてマゾか―――吐き捨てるような気持ちになりながらも、冷ややかな表情でラシュレスタが王座の前で跪いている。

 おまけに計算もできないのか―――人間界の年月にして三百年は回復にかかるなどとほざいていた割には、百五十年も早くに戻ってきて、もうろくか・・・と厄介な相手への不満が止まらない。

 結果、魔界では二十三日足らずの不在だったに過ぎない。

 「おぉぅ!! 痛いではないかぁ~ もっと優しく拭かぬかぁ~ ん~? あ~ こやつぅ~ わざとだなぁ~? この孔にお仕置きするぞぉ~ ん~?」

 黄金の草冠から垂れ落ちる体液。慣れた手つきで拭いていたインが、ぷりぷりと小さな尻をムニムニと親指を入れられる勢いで揉まれる。やぁん!! と身をくねらせた。

 その傍らには手鏡を持って跪いているサツ。二体とも薄布で局所を気持ち程度に隠している服装へと戻っている。

 「・・・ご用件は?」

 今や、魔王妃の呪をいい加減に解けとは言わない。無駄だからだ。復活と同時に自動解除のはずだった約束はまたしても踏み倒されている。

 そして、くだらない目の前の茶番に心捕らわれるほどヒマでもない。

 「おぉう、おぉう・・・・なんとも、せっかちな奴よのぉ・・・・ん~? なんだか気が立っているようだが・・・どうされたのやら~? フフフ・・・・・・おぉ・・・ちょうどサツが鏡を持っておる・・・せっかくだから、ご機嫌斜めの我が魔王妃に面白いモノを見せてやろぅ~」

 きっぱりと辞退する前に、魔王の動きの方が素早かった。手鏡をサツの手から取り上げると自慢げに見せてきた。

 「どうだぁ、これよ~ 我の新しい魔鏡よ・・・そなたがアブラハムを我から取り上げたからのぅ・・・おかげさまで魔獄谷で静養しながら、趣味の魔鏡育てにいそしむことになったがのぅ~ まだまだこのサイズ・・・ほんとに・・・我ながら太っ腹すぎたのぅ・・・」

 顔周りを映す程度の大きさに取っ手のついた手鏡。やや分厚め。アブラハムと同様に脇から紫色の両手が、にゅっと生えている。

 「魔獄谷一万魔族よぉ~ さぁ、例のほれ、アレを我が魔王妃に見せてみろぉ~」

 「へっへぇ!!」

 なんだ、その名称は? と疑問を持つも束の間、手鏡にしては幅広な上部がパカンッと開いた。

 黄土色の金属でできた人形が下からスーッと上がって現れる。大股を開いて仰向けとなっている淫魔らしき姿に、その両膝に手を置いている姿勢の・・・こちらも淫魔。

 覆い被さっている淫魔の背中から出ている巻き鍵を、紫色の手がキリリ、キリリと回す。軽快な音楽が流れ始めた。

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