最高天使に恋をして~忘却の河のほとりには~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

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陰謀 出現 そして・・・

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 「やはり、もう少しゆっくりされていかれませんか? お泊まり頂けると思って、狭い部屋にはなりますが、用意もしております。また、たいした物ではないですが、お食事も・・・夜道は夜行性の獣や夜盗にも会ってしまいますし、とても危険ですから・・・」

 そこはアッシーモの地、ルーカが生まれ育った街の教会。ルーカと同様の小柄な身体に、よく似た人の良さそうな顔つきの男があきらめきれずに再度、引き留めた。

 「お心遣い、ありがとうございます。心より感謝申し上げます。ですが、実はこれでも旅慣れておりまして・・・日が暮れる前に、野生動物が苦手とする香草で作った薬を馬車に散布するのです。

 頭絡とうらくに別の匂いを含ませて、馬にはそれを嗅がせながら走らせるのですが、馬車から出る強烈な香りのおかげで、今まで夜盗にも獣にも会ったことがないのです。だから、本当に大丈夫です」

 語っていることはもちろん嘘八百だ。だが、万が一、そういった薬品があるのなら欲しいと言われれば、すぐにでも出すことはできる。

 「旅のお知恵をお持ちなのは大変素晴らしいとは思いますが、でも、それほど急がれなくても・・・」

 相手を立てるようにしながら、控えめにやんわりと異論を伝える姿勢。似ている・・・とラシュレスタが心の内で微笑んだ。

 「それはそうなのですが・・・本当にすみません。火傷でひどい傷を負ってからは、外で泊ったりするよりも、馬車で休みながら移動する方が気楽なものですから・・・

 それに少しでも早く帰って、今回、作って頂いた部品で組み直して、シモーニ修道士や皆さんに聞いてもらいたいという気持ちでいっぱいでして・・・」

 「そうですか・・・私の方はなんだかとても残念な気持ちでいっぱいですが・・・またいらして頂けますか? 本当に素晴らしい演奏でした。心が打ち震える音色の・・・是非とも近い内にまた聞かせて頂きたい。本来ならば、私が出向くべきだとは思うのですが・・・」

 足の不自由な楽器職人。当然、聖職者でもある。祖父から父親に、父親から自分に伝えられたお告げを守り続け、模索を続けながら、天界から下ろされた楽器を地上で今の状態まで作り上げた人物、二コーラ・デザートローズ・シモーニ。

 わかりやすいまでに気落ちした様子のルーカの父親に、荷台の固定の確認を終えたラシュレスタがにこやかな声で応じた。

 「えぇ、もちろんです。まだまだ改良すべき点が多々ありますし、意外と近いこともわかりましたので、今後は度々、来させて下さい。これから長いお付き合いを・・・どうか、ご指南のほどよろしくお願いします」

 「ローズさん・・・」

 二コーラが息子と瓜二つのキラキラと感極まった瞳で見つめて返してきた。

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