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第1章
サイキョー現る
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「よし! じゃあ、これからどうする? 依頼をやるか、このまま隠れるか」
「そうだねぇ……経験者の僕から言わせると……隠れた――」
「依頼人を探した方がいいわね」
ゴカイが喋り終わる前に、ウルが遮った。
「え……? いや、ここは――」
「ゴカイ。あんた何回目? ノーマの為にも、あんたの為にも、隠れてるだけじゃ意味無いの。分かる?」
再び、ウルが遮った。ゴカイは、今にも泣きそうな表情を浮かべた。
「いや……それは……そうだけど……」
「それに、このダンボールやら道具に、武器まで持ち込んで、自分の意思で参加してるんでしょ? 尚更じゃない」
ウルの言葉に、納得した。考えてみれば、夜闘に参加しているのに、隠れる為の道具を揃えているし、戦う為ではなく、脅す為に武器を持っている。
「あ、うん……その通りだねぇ……」
ゴカイも、分かってた。いくら参加しても、弱いままじゃ意味が無いけど、今回は付き合う事にした。
「なぁ、ゴカイ。ウルの言う事はもっともだ。だけどお前が決めろ。俺はお前についてく」
「ちょっと、ノーマ!」
「ゴカイは、もう仲間だ。それにお前がダンボール吹き飛ばしたせいで、こいつの隠れ家も壊れちゃったしな」
「それは……! そうだけど……分かったわよ。ゴカイ、そう言う事だから決めて」
「え、……そんな事言われても……僕は……どうすればいい?」
困ったような表情で、尋ねてきたけど、何も言わずにゴカイの答えを待った。
「ねぇ、ノーマってば! 僕には無理だよ……決められないんだよ! 僕は君みたいに強くなんかないから……分かった。僕1人で隠れるよ……僕なら――」
「ダメだ。俺達みんなで、どうしたいか決めろ」
俺の言葉にゴカイは黙り、長い沈黙が流れた。
「分かった……決めたよ。依頼人を探そう。ただ……ちゃんと守ってよねぇ!」
俺は笑顔でウルの方を見ると、ウルも笑顔だった。筈なのに俺の顔を見て、真顔になった。
「なによ?」
「いや、別に! そうと決まれば、早速行くか。ゴカイ、そう言えば天使は? 育成神もまだ視てないし」
「え、天使? いや……ちょっと仲悪いからねぇ……居ない方がいいから」
「…………そう……なら仕方ないな。いや、ちょっと待て……それはいいとして、育成神が視てないって言うか……あれ? お前らなんで目印無いの?」
「ノーマ」
「え、何?」
何故か突然、育成神が割り込んできた。
「ちょっと用事が出来たから、少し目を離すね」
「あぁ、うん。用事? まぁ分かったよ」
「天使も借りていくね。必要なんだ……後で詳しく話すよ」
「え、天使まで? いや、まぁいいけど……ちゃんと教えろよ!」
「あぁ、勿論だよ。では、女神。皆をよろしく、お願いしますね」
「はい。そう――育成神様……お任せ下さい」
「……ではノーマ。またあとで」
「おう! 天使もあとでな! 結果楽しみにしてろよ!」
「うん……分かったぞ……! 頑張るんだぞ!」
天使は応援の言葉を残して、育成神の元へ行き、育成神も、目を離した。
(天使に言った以上、頑張るか!)
「女神ちゃん? さっきおかしくなかった?」
「何がですか? 何もおかしくありませんよ」
「天使ちゃんは、どう思った? おかしかったよね?」
「いえ……女神様は……緊張してたんです……はい……」
「ふーん……あ、そう言う事ね……! あ、そっか! 大丈夫だよ……ノーマには絶対言わないから……!」
「ゴカイ、行くぞ。早くしろ」
「あ、ちょっと待ってよねぇ。ウル達はいいの?」
「あぁ、いいだろ」
コソコソと話してる女子は、放っといて、ゴカイと2人で走り出した。
「ちょっと、ノーマー! なんで先に行くのよ!」
「お、来たか。話してたから先に行った」
「だから、なんで話してたら先に行くのよ! ゴカイも止めなさいよ!」
「え! 僕はいいのか、ちゃんと聞いたよ」
「聞いたんじゃなくて、止めなさいって言ってんの!」
「ご、ごめんねぇ……」
「もう……で、何処行くか、決まってんの?」
実際何も決まって無く、何も言えなかった。
「やっぱりね……とりあえず大通りは避けて、このまま路地の中を探した方がいいかも」
「やっぱりか……俺の考えと同じだ。やるなウル」
「嘘つけ! あ、でさ目印の事聞いて無いの? 育成神から」
「あ、そうだよ! なんで2人は無いんだ?」
「これは、勲章を貯めるか育成神が消すか決めれて、あたしは女神ちゃんに、消してもらったけど、ゴカイは?」
「僕は、勲章を貯めて消したねぇ。リストを持ってるから、今度見せてあげるよ」
「あなた、そのリストは何処で、手に入れましたか?」
女神が、ゴカイの持ってるらしい、リストに食いついた。珍しい物なのか、分からないけど――――(俺は育成神に聞けば良いしな……)――――興味が無かった。
「家に届いたんだよねぇ」
「そうですか……誰かにリストの事言いましたか?」
「いや、今初めてだねぇ。人に言ったのは」
「それなら、いいです。持っているのを知られたら、命が狙われる危険があります。くれぐれも注意してくださいね」
(へぇー、やっぱりレアなんだな)
「詳しい事は、後でゆっくり話します。今は夜闘に集中しましょう」
「そうだよ。今は集中しようぜ!」
「そもそも、あんたが聞いたんでしょ!」
「ちげーよ! そもそもは俺だけど、今はウルから聞いてきたんだろ!」
「あれ? そうだっけ?」
「ウルから、聞いてたねぇ……」
「はい……ウルちゃんからです……」
「そうですね。ウルからですよ」
全員一致でウルからとなり、元気が無くなったウルを見て、少し気の毒に思う。ウルは走るのを止めて、歩き出してしまった。
「ウル……なんかごめん。俺から言った気がしてきたよ」
「気休めの言葉なんか、聞きたくない。皆……あたしからだって……あたしからだよ……ごめん」
「お取り込み中かなぁ」
突然そう聞こえて、進行方向にあったビルの陰から、誰かが姿を現した。緊張感が高まり、一斉に身構えた。
(誰だ……! ウルが止まって無かったら、危なかったな……)
「あんたは……サイ……キョー……」
「え?」
ウルは怯えてなのか、全身が小刻みに震えていて、顔も引きつっていた。
「久しぶりだね……ウル」
「お前が、サイキョー……?」
(思ってたよりでけぇな……)
「誰だろう? 君は。俺の名前を、気安く呼ばないでくれ」
「てめぇーが、ウルと『フルール』さんを傷付けた奴か」
「まったく……穏やかじゃないなぁ。俺は、ウルに用があるんだ。邪魔だよ」
「邪魔なら、退かせよ。俺はお前に用があるんだ」
「…………後悔すんなよ? クソガキ」
(なんだこいつ……急に口調が……それに雰囲気も……でも関係ねぇ……ウルの母ちゃんとウルはこいつに……)
「ノーマ……ダメ……闘わないで……! 死んじゃう……」
「ノーマ。ここは逃げましょう。まだ勝てません」
「そうだよ……ノーマ……逃げた方が……」
「先に逃げてくれ。ゴカイ、ウルを頼む」
「おい。ダラダラやってんじゃねぇーぞクソガキども。さっさと掛かって来いよ」
「ちょっと待ってろよ、今相手してやんからよ」
「ゴカイ、行ってくれ。お前の隠れ家で会おう」
「分かったよ……ウル、行くよ」
「ダメ……ノーマ……一緒に逃げて……お願い……!」
「大丈夫だ、俺を信じろ。まだ死ぬ気はねーから。ゴカイ、無理やりでも連れてってくれ」
「うん……ウル、ノーマを信じよう」
「ノーマァー!」
ウルは泣き叫んでいた。ゴカイは気持ちを汲んでくれて、無理やりウルを連れ逃げてくれた。今振り返ってウルの顔を見たら、離れたく無くなる気がして、振り返れなかった。
「ノーマ。後で覚えておきなさい、お説教です。…………だから必ず生きて戻る事。いいですね」
「ノーマくん……死んじゃダメです……」
「おう! 必ず行くよ」
「そうだねぇ……経験者の僕から言わせると……隠れた――」
「依頼人を探した方がいいわね」
ゴカイが喋り終わる前に、ウルが遮った。
「え……? いや、ここは――」
「ゴカイ。あんた何回目? ノーマの為にも、あんたの為にも、隠れてるだけじゃ意味無いの。分かる?」
再び、ウルが遮った。ゴカイは、今にも泣きそうな表情を浮かべた。
「いや……それは……そうだけど……」
「それに、このダンボールやら道具に、武器まで持ち込んで、自分の意思で参加してるんでしょ? 尚更じゃない」
ウルの言葉に、納得した。考えてみれば、夜闘に参加しているのに、隠れる為の道具を揃えているし、戦う為ではなく、脅す為に武器を持っている。
「あ、うん……その通りだねぇ……」
ゴカイも、分かってた。いくら参加しても、弱いままじゃ意味が無いけど、今回は付き合う事にした。
「なぁ、ゴカイ。ウルの言う事はもっともだ。だけどお前が決めろ。俺はお前についてく」
「ちょっと、ノーマ!」
「ゴカイは、もう仲間だ。それにお前がダンボール吹き飛ばしたせいで、こいつの隠れ家も壊れちゃったしな」
「それは……! そうだけど……分かったわよ。ゴカイ、そう言う事だから決めて」
「え、……そんな事言われても……僕は……どうすればいい?」
困ったような表情で、尋ねてきたけど、何も言わずにゴカイの答えを待った。
「ねぇ、ノーマってば! 僕には無理だよ……決められないんだよ! 僕は君みたいに強くなんかないから……分かった。僕1人で隠れるよ……僕なら――」
「ダメだ。俺達みんなで、どうしたいか決めろ」
俺の言葉にゴカイは黙り、長い沈黙が流れた。
「分かった……決めたよ。依頼人を探そう。ただ……ちゃんと守ってよねぇ!」
俺は笑顔でウルの方を見ると、ウルも笑顔だった。筈なのに俺の顔を見て、真顔になった。
「なによ?」
「いや、別に! そうと決まれば、早速行くか。ゴカイ、そう言えば天使は? 育成神もまだ視てないし」
「え、天使? いや……ちょっと仲悪いからねぇ……居ない方がいいから」
「…………そう……なら仕方ないな。いや、ちょっと待て……それはいいとして、育成神が視てないって言うか……あれ? お前らなんで目印無いの?」
「ノーマ」
「え、何?」
何故か突然、育成神が割り込んできた。
「ちょっと用事が出来たから、少し目を離すね」
「あぁ、うん。用事? まぁ分かったよ」
「天使も借りていくね。必要なんだ……後で詳しく話すよ」
「え、天使まで? いや、まぁいいけど……ちゃんと教えろよ!」
「あぁ、勿論だよ。では、女神。皆をよろしく、お願いしますね」
「はい。そう――育成神様……お任せ下さい」
「……ではノーマ。またあとで」
「おう! 天使もあとでな! 結果楽しみにしてろよ!」
「うん……分かったぞ……! 頑張るんだぞ!」
天使は応援の言葉を残して、育成神の元へ行き、育成神も、目を離した。
(天使に言った以上、頑張るか!)
「女神ちゃん? さっきおかしくなかった?」
「何がですか? 何もおかしくありませんよ」
「天使ちゃんは、どう思った? おかしかったよね?」
「いえ……女神様は……緊張してたんです……はい……」
「ふーん……あ、そう言う事ね……! あ、そっか! 大丈夫だよ……ノーマには絶対言わないから……!」
「ゴカイ、行くぞ。早くしろ」
「あ、ちょっと待ってよねぇ。ウル達はいいの?」
「あぁ、いいだろ」
コソコソと話してる女子は、放っといて、ゴカイと2人で走り出した。
「ちょっと、ノーマー! なんで先に行くのよ!」
「お、来たか。話してたから先に行った」
「だから、なんで話してたら先に行くのよ! ゴカイも止めなさいよ!」
「え! 僕はいいのか、ちゃんと聞いたよ」
「聞いたんじゃなくて、止めなさいって言ってんの!」
「ご、ごめんねぇ……」
「もう……で、何処行くか、決まってんの?」
実際何も決まって無く、何も言えなかった。
「やっぱりね……とりあえず大通りは避けて、このまま路地の中を探した方がいいかも」
「やっぱりか……俺の考えと同じだ。やるなウル」
「嘘つけ! あ、でさ目印の事聞いて無いの? 育成神から」
「あ、そうだよ! なんで2人は無いんだ?」
「これは、勲章を貯めるか育成神が消すか決めれて、あたしは女神ちゃんに、消してもらったけど、ゴカイは?」
「僕は、勲章を貯めて消したねぇ。リストを持ってるから、今度見せてあげるよ」
「あなた、そのリストは何処で、手に入れましたか?」
女神が、ゴカイの持ってるらしい、リストに食いついた。珍しい物なのか、分からないけど――――(俺は育成神に聞けば良いしな……)――――興味が無かった。
「家に届いたんだよねぇ」
「そうですか……誰かにリストの事言いましたか?」
「いや、今初めてだねぇ。人に言ったのは」
「それなら、いいです。持っているのを知られたら、命が狙われる危険があります。くれぐれも注意してくださいね」
(へぇー、やっぱりレアなんだな)
「詳しい事は、後でゆっくり話します。今は夜闘に集中しましょう」
「そうだよ。今は集中しようぜ!」
「そもそも、あんたが聞いたんでしょ!」
「ちげーよ! そもそもは俺だけど、今はウルから聞いてきたんだろ!」
「あれ? そうだっけ?」
「ウルから、聞いてたねぇ……」
「はい……ウルちゃんからです……」
「そうですね。ウルからですよ」
全員一致でウルからとなり、元気が無くなったウルを見て、少し気の毒に思う。ウルは走るのを止めて、歩き出してしまった。
「ウル……なんかごめん。俺から言った気がしてきたよ」
「気休めの言葉なんか、聞きたくない。皆……あたしからだって……あたしからだよ……ごめん」
「お取り込み中かなぁ」
突然そう聞こえて、進行方向にあったビルの陰から、誰かが姿を現した。緊張感が高まり、一斉に身構えた。
(誰だ……! ウルが止まって無かったら、危なかったな……)
「あんたは……サイ……キョー……」
「え?」
ウルは怯えてなのか、全身が小刻みに震えていて、顔も引きつっていた。
「久しぶりだね……ウル」
「お前が、サイキョー……?」
(思ってたよりでけぇな……)
「誰だろう? 君は。俺の名前を、気安く呼ばないでくれ」
「てめぇーが、ウルと『フルール』さんを傷付けた奴か」
「まったく……穏やかじゃないなぁ。俺は、ウルに用があるんだ。邪魔だよ」
「邪魔なら、退かせよ。俺はお前に用があるんだ」
「…………後悔すんなよ? クソガキ」
(なんだこいつ……急に口調が……それに雰囲気も……でも関係ねぇ……ウルの母ちゃんとウルはこいつに……)
「ノーマ……ダメ……闘わないで……! 死んじゃう……」
「ノーマ。ここは逃げましょう。まだ勝てません」
「そうだよ……ノーマ……逃げた方が……」
「先に逃げてくれ。ゴカイ、ウルを頼む」
「おい。ダラダラやってんじゃねぇーぞクソガキども。さっさと掛かって来いよ」
「ちょっと待ってろよ、今相手してやんからよ」
「ゴカイ、行ってくれ。お前の隠れ家で会おう」
「分かったよ……ウル、行くよ」
「ダメ……ノーマ……一緒に逃げて……お願い……!」
「大丈夫だ、俺を信じろ。まだ死ぬ気はねーから。ゴカイ、無理やりでも連れてってくれ」
「うん……ウル、ノーマを信じよう」
「ノーマァー!」
ウルは泣き叫んでいた。ゴカイは気持ちを汲んでくれて、無理やりウルを連れ逃げてくれた。今振り返ってウルの顔を見たら、離れたく無くなる気がして、振り返れなかった。
「ノーマ。後で覚えておきなさい、お説教です。…………だから必ず生きて戻る事。いいですね」
「ノーマくん……死んじゃダメです……」
「おう! 必ず行くよ」
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