Children Of The God's

鈴木ヨイチ

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第1章

リタイア

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 女神と天使の言葉、それにウルとゴカイ、皆の為、何より俺の為に、必ず生きて戻ると、心に誓った。

「待たせたな。サイキョー」
「遅せぇーんだよ。すぐにくたばんじゃねーぞ、クソガキ」

「あぁ」

 俺は能力を使った。俺の能力は、10秒先が見える。その力で見た光景は、既にやられていた。

 (嘘だろ……何があった? 考えろ。いや……考えちゃダメだ!)

 考えても分かる訳がなく、考えるのを止めた。

 まず能力を知るために、相手の元に走り出したその時、相手は不気味な笑みを浮かべ、右の掌を俺に向けた。

 たったそれだけの筈だったが、その瞬間、後ろに吹き飛ばされていた。

「ヴッ! なんでだよ…………グハッ! …………チッ……」

 何故かなんて考える間もなく、体は背中から、路上に打ちつけられた。訳が分からずイラついたが、あまり痛みは無かった。

 すぐに立ち上がって、能力を使い、間髪入れずに相手の元に走った。

(さっき見た未来は、確か壁にもたれかかってた筈……って事は、この攻撃を凌げば、届く……!)

「何回やっても無駄なんだよ。クソガキ」
 そう言うと、再び右の掌を向けてきた。

「何回でも受けてやるよ」
 向けられた掌の延長線上から、外れる為に左に跳んだ。
(ここか……どっちに飛ばされる……?)

 相手は、俺の飛んだ方向に合わせて、腕を振る。その腕の動きに合わせて、再び吹き飛んだ。
「くっそ…………ガハッ……!」

 飛ばされるのが分かっていても、身動きが取れず受け身は取れなかった。ただ、壁との距離が近かったからか1回目より、衝撃は弱かった気がして、すぐさま体勢を整える事が出来た。

(ちょっと待て……あいつ今左腕だった……! なんでだ? なんで、腕を変えた……? ……あぁーっもうわっかんねーよ! とりあえず、分かるまで行くしかねーな……)

「クソが。やりにきーんだよ、てめぇ」

 ずっと、不気味な笑みを浮かべてたサイキョーが、初めて、イラついた様な表情を浮かべた。
 それを見て、めげずに突っ込む。

(未来の通りなら……きっと届く筈だ)

 相手は初めに、俺を目掛け右の掌を出す。それを今度は跳ばずに右に躱し、すると左の掌を出し、腕を俺の動きに合わせて振る。

 さっきの事から学び跳んでない為、咄嗟にしゃがんでみた。その行動によって、飛ばされずに済んだ。

(これか! でも左右の掌の意味が分かんねーな……)

 避けられない訳じゃ無いと分かり、少し余裕が生まれた。そのまま前方に転がり、壁伝いに走る。

「ヘッ! どうしたよ。当たんなくなってきたな」
「いい気になってんじゃねーよ、クソガキ」

 壁伝いに相手の横まで行き、一気に転回して、突っ込む。明らかにさっきよりも増して、怒ったような表情で、殺気が伝わってきた。

(行けるか……ほんとに届くのか…………)
 相手との距離、約2mの所で右腕を上げ掌を向けられる――――(一旦避けるか……いや、もう分かんねーけどここに掛ける……!)――――よりも早く、拳を突き出し、能力で見た光景通りになった。

「フンッ……いい気になるなって言ったろ」

 鼻で笑い、再び不敵な笑みを浮かべ、さっきまでの雰囲気が嘘のように冷静に、そう言い放った。

 だが拳は確実に顔面を捉えた。手応えを感じた。当たった筈だった。

「バシンッ!」

 その音と共に、顔面に衝撃を受けたのは俺の方だった。

 状況が分からず、意識が飛びかけた刹那に、ウルの悲しそうな顔が思い浮かび、なんとか保てた。

 朦朧とする意識の中、気付くともう、壁まで飛ばされ、とてつもない痛みを、全身に感じた。

「いっっってぇな……クソ! 意味が分かんねーよ」
(それに、視界も定まんねーし……最悪だな……)

「ブッハハハハ! ざまぁねぇなー! ようクソガキ」
「ふんっ……まだ終わってもねぇのに……勝った気かよ……」

 サイキョーは、俺を嘲笑い、俺も強がったけど、状況が絶望的なのは、分かってた。

「この状況でまだ諦めねぇのか? パァン!」
「ガハッ! ウゥッ……ゴホッゴホッ……アァ…………ハァ……ハァ」


 サイキョーが左右の掌を、勢いよく合わせると、腹部に衝撃が走り、苦しみと、痛みに――――(やっぱり……俺には、無理だったんだ…………逃げときゃよかった…………)――――後悔した。

 もう逃げるだけの力も、闘う気力も無くなり、ただ死を待つしか出来なかった。

「パァン…………パァン…………」

 サイキョーの表情は確認出来ないが、笑うでも無く、怒るでも無く、ただ無言でひたすらと、手を鳴らしていた。

(……………………いつまで……………………)
「もう、止めんかぁー!」

 誰か分からないが、怒号が聞こえてきて意識が途切れた。

――――






「カツッ……カツッ……カツッ……カツッ……」

 目を覚ますと、誰かに担がれていた。心地の良い、足音のような音だけが聞こえて、再び眠ってしまった。

――――






(ん、ここは…………俺は死んだのか……? 死なねーって言ったのにな…………はぁ……)

 ふと、目が覚めた。真っ白な光に包まれた場所で、ベッドの上に寝ていて、天国だと思った。

 何も考えずただ、ぼーっとしていると、全身が包帯だらけな事に気付いて、起き上がった。

「なんで………………なんで、死んでんのに痛てぇーんだよ! ふざけんな!」

「おい、若者! ここは病院だぞ、静かにせんか!」
「え……? 病院…………? じゃあ、生きてんのかよ!」
「だからうるさいと言っておるだろーが!」
「あ、ごめんなさい」 

 どうやら生きてたらしく、仕切りの向こうから、同じ病室の誰かに怒られた。

(生きてたのか…………ウルとゴカイは無事かな…………それにしてもあいつだけは、許さねぇ。次会ったら覚えてやがれ、クソ野郎!)

「入りますね~」

 その声と同時に、仕切られていたカーテンが開き、まだ見た目の若い、看護師と思しき普通の女性が入ってきた。

「具合はど~ですか~」
「あの、痛いです。凄く痛い。女神を呼んで下さい!」

「私が~女神ですよ~」
「え、女神? なんで痛いんですか? 育成神から女神が治療してくれるって聞いてたのに!」

「他の患者もいるので~静かにしてくださいね~」

 話し方もゆっくりで、終始笑顔で優しそうだったけど、いや、この時も笑顔のままだが、何故か怖かった。目が開いてないのに、目の奥が笑っていない気がした。

「はい……!」
「女神は~治療はしますけど~、治癒は出来ないんですよ~、決まりなので~」

「あ、そうなんですね。分かりました。また何かあったら呼ぶんで、よろしくお願いします」
「そうですか~では~」

 何故か分からないけど、怖くて、早く行ってほしかったから、行ってくれてよかった。

「おい、にーちゃん。さっきは怒鳴って悪かったな……そんな重傷だって、知らなくてな……」
「え、? あんたかー! 俺に怒鳴ったのー!」
「うるさいわ! 心配して損したわ!」

 知らないじいさんは、謝ったくせに再び怒鳴って、勢いよくカーテンを閉めて、どこかへ行った。

「くっそ……あのじいさん、なんなんだよ……!」
「痛て! 何すんだよ!」

 そこにあった枕を、じいさんの居た方に投げると、違う所に飛んでいき、隣の誰かにぶつかって、怒らせた。

「あ、やべ…………」
「おい! お前!」

 勢いよくカーテンを開けて、俺を見るなり黙った。怒るに怒れなかった筈だ。全身グルグル包帯巻きだから。

「…………いや、気をつけろよ……」
「はい……ごめんなさい……」
(これは……使えるな……!)

 そう思っていると、再びあの女神が戻ってきた。
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