Children Of The God's

鈴木ヨイチ

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第1章

安息からの衝撃

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 何をしに来たか分からないが、確実に俺の方に向かって来てた。

「ノーマくん~治癒しますね~」
「え、? ちょっと待って、どういう事?」
「それは帰ってからゆ~っくり、自分で聞いてくださいね~」

 そう言って俺の頭の上に、女神がそっと手を置くと、全身の痛みが、嘘のように無くなった。

「では~包帯はご自分で~。着る物は横の棚に入ってるので~。ではさよなら~」

「はい……ありがとうございます!」
「いいえ~仕事ですから~」

「おう、にーちゃん。治って良かったな。これゃまさしくゴッドハンドだな! ハハハハ」

 さっきのじいさんが、戻ってきて、1人で喋って1人で笑っていた。まさしくも何も、そのまんまなのに。

「つまんねーよ。何がおもしれぇんだそれ」
「なんだとー! もう知らん!」

 またさっきと同じように、勢いよくカーテンを閉めて、どこかえ行った。カーテンも閉まり丁度良かったから、包帯を外すと、痛みは当然の事、傷1つ無くなってた。

 棚から服を取り出し、着て、ベッドから降りて歩き出した。カーテンを開けて、枕をぶつけてしまった人に頭を下げ、病室を出た。

「カツッ……カツッ……」

 廊下を歩いていると聞き覚えのある音が、聞こえてきた。

(あれ……? この音……)
「お前さんを助けたのは儂だ! もう少し遅れとったら死んでたわい! ガッハハハ……」

(なんだこのじいさん……俺を助けてくれたって…………今日は、変なじいさんによく会うな……)

 大口を開けて1人で笑ってるじいさんは、杖をついていて、とてもあの状況で俺を助けられたとは、思えなかった。

「ほんとにあんたが俺を? そんな訳ないだろ!」
「ほぉー、如何にしてそのように思うた?」

「いや、如何にしてって……俺より強そうには見えないからだよ!」

「小僧……言いよるな…………別にどっちでもいいわい! だがその弱そうな儂から1つだけ。なんでも決めつけて掛かるるのはおすすめせんな。頭の片隅の片隅にでも捨てといてくれりゃええ! ガッハハハ……」

「なんだそれ! ガッハハハ……」
「おい、お前ら! ここは病院だぞ、静かにせんか!」

 訳も分からず大笑いし合っていたら、またあのじいさんに怒られた。

「すんません……」
「ごめんなさい……」

「早く帰って下さいね~うるさいので~」

 女神の言葉に落ち込み、2人はその後一言も交わさないまま、病院から出た。

「いやー、怒られたのぉ! 久々だったわい!」
「なんで、嬉しそうなんだよ! まぁ…………助けてくれてありがとう。……ほんとならだけど! じゃ行くわ。またな!」
「ちょいちょい、お前さん。これ」

 そう言って、タクシーを指さした。家までここから走っても、20分ぐらいはかかるから、乗せて貰えるのは助かった。

「いいのか? ……走って帰ろうと思ってたからありがてぇ……!」
「そりゃあ大変だのぉ。まぁ、乗って行けぇ」
「ありがとう! じゃ遠慮なく」

 車に乗り込み、運転手に自宅の場所を伝え、走り出した。

「あ、俺ん家からでいいのか?」
「あぁ、構わん、構わん」

「ならよかった。それじゃあさっきの話だけど、俺を助けたってほんと?」

「あぁ、勿論。別に信じなくてもええがの」
「じゃあ、能力者って事?」

「あぁ、勿論。別に信じなくてもええがの」
「ふーん……」
(なんだこのじいさん……全部嘘くせぇけど、俺が生きてたのも事実だしな……)

 少しの間、車内に沈黙が流れた。

「あ! じゃあさ、あいつにどうやって勝った?」
「そりゃあ、儂が行って、ババッとやって、シュッってやったら、逃げて行きよったわい」

「あぁ…………なるほどね……そっか」
(こりゃダメだ……分かんね……)

「そう言えば、俺タクシー乗るの初めてなんだよ! いつも、どっか行く時は走るように言われてたからさ。こんなに、楽なんだな……でもこればっか乗ってたら体鈍っちゃうよな。じいさんもたまには歩いた方がいいぞ?」
「……………………」

 返事が無く、じいさんの方を見ると寝ていた。呆れて前方に目をやると、家が見えてきて、そこで止まるように、指さした。


「こちらで宜しいですか?」
「あぁ! ありがとう! おい、じいさん起きろ! 着いたぞ!」
「おお……着いたか……金……金っと…………あれ?」

「いや金じゃなくて1回退いてくれ! じいさんはまだ乗ってくんだろ!」
「いや、儂も降りるわい。お前さん金貸してくれんか」

「は……? 持ってねーよ」
「代金はもう頂いておりますから、結構ですよ」

「え……?」
「あ! そうだった、そうだった、忘れておったわい。歳はとりたくないのぉ……」

「なんだよ……よかったぁ……」
「ご乗車、ありがとうございました」

 じいさんも、何故か同じ場所で降り、一緒にタクシーを見送った。

「じいさん、なんで降りたんだ? 家このへん?」
「いや、お前さん家に用があってのぉ」

「俺ん家に? なんで?」
「ガチャ」
「待っていたよ、ノーマ。それに『ガンジョウ』」

 玄関が開き、ファジーが出てきた。

「あ、じいさんと知り合いなの?」
「あぁ、そうだよ。何より無事に帰って来てくれてよかったよ、ノーマ。それに、ありがとう、ガンジョウ」

「まぁ、気にするでない。当然の事をしたまでだからのぉ……」
「あれって、ほんとだったのか……? マジで助けてくれたんだ……」

「とりあえず、中で話そうか」
「疲れたしのぉ。茶ぁ出してくれ」

 家に入り、見慣れた玄関が新鮮に感じて、何故か安心出来た。少し佇んでると、ふと夜闘の事思い出した。

 帰って来られた嬉しさと、ウルとゴカイへの申し訳ない気持ちで、いっぱいになった。

(あの2人は無事だったのか……? 俺だけ帰って来てる、なんて事はないよな…………)

「邪魔ぁするぞい」
「ほら、ノーマも早く来るんだ」

 ファジーに促され、廊下を進みリビングに向かった。

「ただいま……」
「おかえりなさい…………ノーマ……!」

「ノーマ…………おかえり……!」
「よかったねぇ……おかえり!」

「おかえりだぞ! ノーマ!」
「おかえりなさい……ノーマくん……」

「帰って来ましたね……今回はお説教はなしです。おかえりなさい、本当に」
「改めて、おかえり。ノーマ」

 リビングに入ると、皆が居た。マーザにウル、ゴカイ、天使達に女神。皆が待っててくれた。

 マーザとウルが泣いていて、ゴカイの安心したような顔、天使達の嬉しそうな顔、女神の心無しか震えた声、ファジーも目にうっすら涙を浮かべ、その光景に思わず感極まって、涙が溢れてきた。

「恵まれとるのぉ。流石は儂の孫だわい! そう思わんか育成神よ」
「それは、ちょっとまだ……」

「あ…………やってもうたわい! 歳はとりたくないのぉ! ガッハハハ……」

 その言葉を、誰も聞き逃さなかった。一斉に全員の視線がじいさんに集まり、静まり返った部屋に、じいさんの笑い声だけが響いた。

「じいさんの孫……? …………俺が……?」

 さっきまでが嘘のように、その場に俺を含めて泣いてる者は、いなくなった。

「どちらにしろ、話そうと思っていた事だ。ノーマとウルちゃん、それに、ゴカイくんにもね。」

 ファジーから話があるらしく、ウルと俺とゴカイの3人は、並んでソファーに座った。
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