Children Of The God's

鈴木ヨイチ

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第1章

成長

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 育成神の話が終わり、俺は、思ったよりも冷静だった。

 ウルとゴカイは、嗚咽を漏らしていたが、ゴカイを見て、疑問が沸いた。

「皆が落ち着くまで、いくらでも待つ。ゆっくりでいいからね」
「そうじゃ。ゆっくりでええ」

 俺は、2人が落ち着くのを待ってから、聞いてみた。

「その話……ゴカイに、なんの関係があるんだ?」
「うん……ヨンカイは、ゴカイくんの父親なんだ」

 それを聞き、言葉を失ってしまったが、そのまま話を続けた。

 育成神の話によると、ヨンカイは罪の意識に耐えきれず自害。母もヨンカイの死に耐えきれず、ゴカイを残して、後を追ったらしい。

 俺が何も言えなかったのは、ゴカイを恨むとかではなく単純に衝撃を受けたからだった。

 それより、真実を知ったゴカイは項垂れ、その様子を見て、ゴカイの事を思うと、いたたまれない気持ちになった。

 なんて声をかけていいか分からず、皆も同じなのか、その場は静まり返った。

「みんな…………」

 最初に口を開いたのは、ゴカイだった。

「本当にごめんねぇ…………僕が謝って済む問題じゃないけど、僕のせいだから…………」

「何言ってんだよ。なんでお前が謝んだよ。お前の親かもしんねぇけど、それだけだろ」

「でも……僕がいなかったらこんな事には……」

「そんな事、絶対言うな。誰のせいとかねぇんだよ、お互い護るもんの為に闘ったんだ。……そんな事考えてたんなら、心配して損したわ」

「僕の心配……?」
「あぁ。今の話聞いて、落ち込んでんなと思ったら、そんな事気にしてたんだからな」

「そんな事って……気にするに決まってるじゃないか」
「気にしてくれた事は、ありがとう。だからもう気にするな。仲間だろ」

「そうよ。あんたが気にする事じゃない。ノーマの言う通り、仲間なんだから。違う?」

「2人とも…………ありがとねぇ……こんな僕を仲間なんて言ってくれて……」

「勘違いすんなよ」
「え……?」

「お前だから仲間なんだよ。お前がお前じゃ無かったら、仲間になんてなってねぇ。……まぁ、お前がどう思ってるか分かんねぇけどな……」

「もう仲間よね? 違うの? 思ってないの?」
「止めろよ……」

「僕は! …………思ってるよ……2人の仲間だって。これまでも、これからもずっと仲間だって」

 ゴカイも、同じように思ってくれてたのは、素直に嬉しかった。

「次からは3人で出れるな」
「えっ?」
「はっ?」

 何気なく言った一言に、ウルとゴカイが、驚いた表情を見せた。

「何? 変な事言ったか?」
「いや……逆になんで、そうなれるの?」
「何が?」

 質問の意味が分からず、戸惑った。

「ウルの言う通りだねぇ……頭大丈夫かい?」
「は? お前また言ったな。これは誤魔化せねぇぞ」

「ほんとに頭大丈夫?」
「な……! お前まで……俺間違ってる?」

 周囲を見回し確認を求めたが、皆何も言わずに、頷いた。ただ1人を除いては。

「何も間違っとらんぞ! それでこそ儂の孫じゃ!」
「ガンジョー……ノーマは死にかけたんだ。今のままでは、繰り返すだけだ」

 やっと理解した。どうやら皆は、俺を心配してくれてるらしい。

「誰がすぐにと言うた? 分かっとるわい」
「どういう事だ?」

「儂の元へ来い。鍛えなおしてやるわい」
「なるほど。それはいい案だ」

 それは有難い事だけど、やっぱりほんとに強いのかが、気になった。

「じいちゃん、弱そうだけどな」
「自分で確かめに来りゃええ」

 病院で言われた事を、思い出した。

「そういやそうだな。じゃあ、頼むわ」
「よかったじゃん! それなら安心だよ」
「うん、そうだねぇ」

「何を言うとる。3人共じゃ」
「だってよ」

「私もいいの? やったぁ!」
「えぇ……なんで喜べるんだい……? 僕には無理だよ……」

 ウルが喜ぶのは、意外だったけど、ゴカイは想像通りの反応をした。

「仲間だろ。ゴカイ」
「そうよ、仲間でしょ。ゴカイ」

「うー……もう! 分かったよ……それはずるいよねぇ……」

 案外簡単に説得出来た。

「じゃあ決まりだ!」
「そうね!」
「そうだねぇ……」

「そう来なくてはのぉ。そういう事でよいな? 育成神よ」
「あぁ。3人が良いなら私は構わないよ」

 こうして、じいちゃんの元で、鍛えてもらう事が決まった。

「その前に、ゴカイくんに話がある」
「僕に……? なにかな……」

「私で良ければ、君の育成神になろうと思うんだ」
「え……いや、僕には……」

 これは、俺もなんとなく分かってた。ゴカイが夜闘の時に、天使と言っても来ない事に、違和感を感じたから。

「もう隠さなくていいぞ」

「ノーマは、何故この事を?」
「いや、なんとなくだよ。夜闘の時に気になっただけ」

「なるほど。ヨンカイは育成神がいなかったから、君にも当然いない。このままで良いなら、それでも構わないよ」

「うん…………ノーマは、いいのかい?」

 ゴカイは俺に尋ねてきたけど、ダメな理由が無い。

「俺? なんで? お前が良いならいいだろ」
「じゃあ…………お願いします」
「決まりだね」

「ねぇ。育成神と言えばさ、なんであたしにはノーマのお母さんの女神ちゃんが?」

 確かに、少し気になった。

「そういえばそうだな」
「それは、私が引き継いだからですよ」

 女神の話によると、フルールさんは、俺の母ちゃんを刺してしまった事で、能力の剥奪と、女神は育成権の剥奪をされた。

 でも、俺の母ちゃんが育成神に伝えた事で、裁判神が例外として、引き継ぐ事を許したから、俺の母ちゃんの女神が、ウルを引き継いだ。

 だから女神は、全部知ってたけど、今日まで黙ってたらしい。

「そういう事だったんだ」
「はい」

「ありがとね。あたしを視てくれて」
「いいえ。こちらこそ視させてくれて、ありがとう」

「あ、じゃあさ。お母さんが夜闘にいたのはなんで?」

 ウルが気になってるのは、ウルが初めての夜闘の時に、入院してる筈のフルールさんが居て、そこでサイキョーからフルールさんを守りながら闘って負けた時の事。

「ごめんなさい! 私のせいなの……」
「マーザさんの?」

「そう……私は行かないように、見張ってたんだけど、気付いたらいなくて……」

「マーザさんのせいじゃないじゃん。そういう事なら、あたしが弱かったからだよ……」

 ウルが弱かったら、俺はどんだけ弱いんだと思った。

「ウル、お前は弱くなんかねぇよ。俺を探しに来てくれただろ。だから、今度は俺がもっと強くなって、お前も皆も守ってやるからよ」

 ウルは、きっと感動した。

「ノーマ…………それは大丈夫。ノーマよりは、私の方が強いから」
「その通りよ。これからも、この子をよろしくね。ウルちゃん」

「うん、任せて!」

 マーザもウルも、バカだった。今はウルの方が強いのは分かってるから、強くなってって言ったのに、理解出来ないみたいだ。

「お互いがんばろうねぇ。ノーマ」
「ゴカイ…………お前は俺より弱いだろ。誰よりも頑張って、強くなれ」

 何も悪くない筈のゴカイに、何故か腹が立って言ってしまった。

「うん。まず心が貧弱なのよね」
「確かに、ゴカイくんはまだ弱いね」
「弱いぞ!」
「弱いです……」

「その通りです。弱すぎます」
「弱そうじゃの」
「確かに弱そうだけど……可哀想じゃない」

「えぇ…………僕……グスッ……」

 全員に苛められ、ゴカイは泣いた。

「安心せい。儂が強くしてやるわい。早速明日から始めるかのぉ」

「よし! 強くなんぞ!」
「私はもっと強くなる!」
「僕は…………僕は、2人よりも強くなるんだからねぇ!」

「よく言ったぞ、ゴカイ!」
「そうね、負けてられないわ!」

「決まりじゃな」
 ゴカイは強い奴だから、油断出来ないけど、俺も強いから、心配はしてない。
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