Children Of The God's

鈴木ヨイチ

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第1章

ささやかな幸せ

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「紹介するよ。ゴエンだ」
「初めまして、ゴエンです。今日の朝からゴカイの天使になりました」

「おう……よろしくな、ゴエン」

 天使が来る事は分かってたから、それよりも、ノーテンと歳は変わらない筈なのに、この落ち着き様に驚いた。

「はい、よろしくお願いします。それで用件はなんですか?」
「ただ、ノーマに紹介したかっただけだよ」

「そうですか。では僕は失礼します」
「うん、ありがとねぇ」

 すぐに天界に帰って行った。でもゴカイの天使がしっかり者で、少し安心した。

「お前には勿体ない天使だな」
「そうかなぁ、でもちゃんとしてるし良い奴だよ」

「だから言ってんだけど……もういいや……」

 ゴカイは、何を勘違いしたのか笑顔でいるけど、相手をするのに疲れた。

 タイミングよく家に着いて、助かったと思いながら、玄関の鍵を開けて中に入った。

「ただいまぁー」

「おかえり」
「おかえりなさい」

 リビングのドアの向こうから、ファジーとマーザの声が聞こえた。靴を脱いで廊下に上がると、ゴカイは俯いて立ち尽くしたままだった。

「どうした? 早く入れよ」
「うん……なんか緊張するねぇ……」

「今更何言ってんだよ」
「どうしたの?」

 全然入って来ないのを心配してか、マーザがリビングから出てきた。

「なんでもないよ」
「そう? 早くおいでよ。ゴカイくんもほら」

「はい……お邪魔します……」
「ただいまだろ。もうお前ん家でもあるんだからさ」

「うん、そうだねぇ……ただいま」
「おかえりなさい! 2人ともご飯出来てるわよ」

 笑顔でそう言うマーザを見て、もう食べられないとは言えず、とりあえずリビングに入った。

「おかえり、2人とも」

 ファジーも何故か微笑みながら、こっちを見てきた。

「ただいま……」
「ただいま……」

 ゴカイも一緒なのが、嬉しいのか分かんないけど、ずっと微笑んでて、少し不気味にさえ思えた。

「とりあえず食べなさい。お腹空いてるでしょ」

 ゴカイと顔を見合わせて、言葉を交わさず覚悟を決めた。せっかく作ってくれたのに、食べないのは申し訳無いとも思ったから。

 席に着いて、改めて料理を見ると、結構な量があった。

「いただきまーす」
「いただきますねぇ」

「召し上がれっ。おかわりもあるからね」

 カレーライスに、ミートソースのパスタ、サラダに唐揚げまであるから、夢中で食べて聞かなかった事にした。

 でもマーザの料理はやっぱり美味くて、ゴカイも同じなのか、すぐに完食した。

「はいっ、どうぞ」

 すかさず次の料理が出されたけど、2人ともおかしくなってるのか、おかわりもすぐに完食した。

「お腹空いてたんだねっ。まだ食べる? もう作らなくちゃ無いけど」

「いや、もう大丈夫。ごちそうさま」
「ごちそうさまでした……」

 俺は大丈夫だけど、ゴカイは苦しそうな表情を浮かべて、無理をしてたのが見て取れた。

「ゴカイくん、大丈夫? ちょっと横になりな」
「うん……そうさせてもらおうかな……」

「じゃあ、ノーマは先にお風呂入っちゃいなさい。もう沸いてるから」

「うん、分かった」

 ゴカイはソファで横になって、俺は風呂に向かった。

 いつもはシャワーで済ましてるけど、今日は疲れたからと思って、久々に湯船に浸かってみた。

 そしたら、体が溶けていくような感覚になって、幸せな気持ちになった。

(あぁ……一生ここに居れるなぁ……)

「ノーマ……」

 微かに声が聞こえてきて、寝てた事に気付いた。

「ノーマ」
「何?」

「まだ出ないの? のぼせちゃうよ」
「もう出るよ」

 どれくらい入ってたか分かんないけど、マーザが呼びに来てくれてなかったら、いつまでも寝てた気がする。

 頭と体を洗って風呂を出ると、服が要らない程全身がポカポカしてた。

 でも、冷めたら風邪ひくのは分かってたから、寝間着をちゃんと着て、しっかり髪を乾かして、リビングに戻った。

「大分入ってたね。疲れてるのかな」

 ファジーに言われて時計を見ると、23時を回ってて、風呂に入ったのが22時過ぎだから、約1時間ぐらい入ってた事になる。

 普段は10分ぐらいで出るから、俺にしては珍しく長風呂だった。

「多分そうかも。寝ちゃってたし」
「ゴカイくんも入って来ちゃいなさい。疲れ取れるわよ」

「うん、じゃあ行ってきますねぇ」

 ゴカイは風呂に行って、マーザは洗い物をしにキッチンへ行き、リビングに俺とファジーだけになった。

「ゴカイと話したよ」
「何を?」

「お金を出すと言っていたけど、ノーマも出していないから、いらないと言っておいた」

「そっか。あいつが出すなら、出そうと思ってたけどね」
「それなら、出してもらおうかな」

 そんな事思って無かった。まさか、いきなりその話しをするとも思ってないし、何も考えて無かったから、咄嗟に余計な事を言ってしまった。

「え、出す? まぁ俺はいいけど、ゴカイにいらないって言ったんでしょ?」

 引くに引けない状況になった、と言うよりしてしまった。 

「冗談だよ。ゴカイが言っていたんだ。ノーマは今まで通りで、自分は出すから言わないでとね」

「そっか……あいつやっぱり良い奴だな」
「そうだね。この話は聞かなかった事にしといてね」

「うん、分かったよ」
「そうだっ、甘いものあるわよ」

 マーザが、チョコケーキを持って来てくれた。

「ゴカイが出てきたら、一緒に食べるよ」
「それがいいわね。まだしまっておくね」

「ありがとう」

 ケーキをしまってくれたタイミングで、ちょうどゴカイがリビングに入ってきた。

「いやぁ、疲れが取れますねぇ」
「だよな。お前浸かるのいつぶり?」

「前に浸かったのが、思い出せないぐらいぶりだよ」
「そりゃやばいな」

「ちょうどよかった、ケーキどうぞ」
「あ、ありがとう」

 2人でケーキを食べて、今日はもう寝る事にした。
 洗面所に行き、歯を磨き終わると、1回リビングに戻って、ファジーとマーザに挨拶をして、2階に上がった。

「あ、そういや部屋の事なんか言われた?」
「ううん、聞いてないよ」

「とりあえず、部屋入るか」

 廊下に居ても仕方ないから、俺の部屋に入ってもらった。

「まぁ、座れよ」
「うん。なんか想像してたよりも綺麗だねぇ」

「勘違いしない方がいいぞ。マーザが片付けてくれたんだよ」

「そんな事分かってるよ」
「なんだよその言い方、なんかムカつくな」

 ふと時計を見ると、もう24時を過ぎてた。

「明日学校だしもう寝るか」
「僕はここでいいの?」

「うん、いいよ」

 その時、ドアがノックされてマーザが入ってきた。

「ごめんね、今日は2人で寝てもらっていいかしら?」

「そのつもりだったよ」
「そう? じゃあよかった。片付けるまでよろしくね」

「分かった」
「僕はこのままでいいよ」

「部屋があるんだから、そっち行けよ」
「いいじゃない、2人の方が楽しいよ」

 確かに楽しいかもしれないけど、これから同じ家に住むんだから、部屋ぐらい別でもいいと思った。

「ゴカイも遠慮してるだけだろ? 片付いたらそっち行きたいよな?」

「僕はほんとに、このままで良いと思ってるよ」
「なんでだよっ、別がいいって言えよっ」

「昔から1人だったから、嬉しいんだよねぇ」

 ゴカイは、自分の過去話を始めた。
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