Children Of The God's

鈴木ヨイチ

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第1章

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「ところで、何がいいのかな」
「分からないねぇ……」

「皆で食べられる物が無難だけど、安全面を考えると止めた方がいいかもね」

「じゃあ、やっぱり金?」
「それなら間違いないねぇ」

「うーん……ありかも」

 何かしらの物を買って行く予定だったけど、施設の皆が自分達で好きな物を買えるように、お金を渡す事になった。

「じゃあそこのショップで、入れ物だけ買いましょう」
「そうだな」

 3人でショップに入って、色々見てると、ウルが竜の形をした、貯金箱を持って来た。

「めっちゃかっこいいじゃん」
「これはいいねぇ」

「でしょ? これにしようよ」

 入店してから3分も経たない内に、全員が納得して、竜の貯金箱に決まった。

 理由は、お金を入れて渡せるし、使ってもまた皆で貯めれるし、何より金色で格好良いから。

 ゴカイがそれを3000シンで購入して、残りの手持ち、47,000シンを全部入れた。

 そんなに大きな貯金箱じゃないから、コインでほぼ満杯になって、それを持って施設に向かった。

「これ貰ったら嬉しいだろうな。かっこいいし」
「あたしもそう思う。かっこいいもん」
「うん。かっこいいからねぇ」

 そして施設の前まで来て、門のチャイムを俺が鳴らした。

「あ、待ってよ!」
「え、なんで?」

 ゴカイが慌てた様子で、止めてきたけど、もう鳴らしたから遅い。

「心の準備が……」
「そんなん待ってたら、一生行けないだろ」

「男でしょっ、しっかりしなさい」
「どちら様でしょうか?」

 施設の職員らしき、女の人が出てきてくれた。

「あ、どうも。ちょっと用があって。来いよゴカイ」

 俺とウルの後ろで、隠れてたゴカイを呼んで、自分で説明させた。

 緊張してるのか、何を言ってるか分からない、ゴカイの説明を、女の人はちゃんと聞いてくれて、説明が終わると快く迎えてくれた。

「行こうぜ」
「あたし達はダメでしょ」

「大丈夫ですよ。さぁ、どうぞ」

「な? ありがとう」
「ありがとうございます」

 俺とウルも、ゴカイの後に続いて、門の中に入った。

 中は遊具とかがある庭、というかほぼ公園で、その奥に、アパートみたいな横長の建物があって、そこに案内された。

 玄関は真ん中に1つしかなくて、入ると、廊下が端から端までずっと繋がってた。

「施設ってこんな感じなんだな」
「凄い広いね」

 ゴカイは俺たちに構わず、慣れた様子で中へ進んで行くから、後をついて行った。

 玄関を上がって左の方に歩いてると、突き当たりの部屋に通された。

「こちらで少しお待ち下さい。今お茶をお持ちしますね」

 この部屋にあるキッチンで、温かいお茶と食べ物を、用意してくれてるのが見えた。

「ここは、客用の部屋なんだ」
「へぇ、それでここの人達は?」

「多分だけど、皆で街に行ってるんじゃないかな」
「あぁ、言ってたやつか」

「どうぞ。よかったら、これも食べて下さい」

 お茶と食べ物を持って来てくれたから、遠慮なく頂いた。

「16時なので、もう戻る筈ですから」
「あ、来たぞ」

 窓の外に目をやると、門から人が入って来るのが見えた。

「ちょっと行って来ますね」

 そう言うと、職員の人は小走りで、多分だけど説明をしに行ってくれた。

 窓の外を見てると、職員の人に話しを聞いたのか、偉い人らしきおばさんが、こっちに向かって会釈をしてくれたから、返した。

 皆が中に入って来て、子供達は全員、そのまま2階に上がるのが見えて、職員の人だけこっちに来た。

「初めまして、この施設長の『ココロ』です。待たせてしまって、ごめんなさいね」

「どうも」
「おじゃましてます」

 俺とウルが挨拶してるのに、肝心のゴカイは俯いて、黙ったままでいた。

「ゴカイくん、おかえりなさい。元気にしてるの?」

「うん……」
「そう! それなら一安心ね」

「あ、これごちそうさま。ウル、行くぞ」
「え、急に? あの、ごちそうさまでした」

 俺たちは邪魔な気がしたから、ウルを連れて外で待ってようと思った。

「あら、もう行っちゃうの?」

「まだ行かないよ、俺達は外にいるだけだから」 
「そうなの? またゆっくり来てね」

「ありがとう」
「ありがとうございます」

 2人で先に施設から出て、門の外で待つ事にした。

「ゴカイ1人にして、大丈夫?」
「平気だろ。気になるならそこから見てれば?」

「うん。結構見えるね」

 ウルは段差に乗って、施設の中を見てたけど、2人して見てたら、完全に不審者だと思って、俺は段差に腰掛けた。

「進展無しですね」
「そうか」

 ウルが報告をしてくれるから、見なくても状況は分かった。

「あ、子供達が来ましたね」
「渡すのかな」

「渡し………………ました!」
「そっか。喜んでる?」

「子供達は、大喜びだよ」
「それなら良かったよ」

 俺は関係ないのに、皆が喜んでるようで嬉しかったし、安心した。

「ゴカイの表情が見えないのが、残念な所ね」
「きっと、笑ってるよ」

「なんか泣けてくるね」
「なんでお前が泣くんだよ」

 本当に泣いてるのかと思って、ウルの方に顔を上げると、塀に乗り上げて見てたから、パンツが見えた。

「黒か……」
「え、なんか言った?」

 思わず色が口から出てきて、こっちを見てきたウルと、目が合った。

 そのまま見つめ合ってると、真顔のまま塀から降りて、俺の前に来た。

 立ち上がろうとしたけど、目の前に立たれてるから無理で、地面を見る事しか出来なかった。

 ウルは何も言わず、動こうともしないから、恐る恐る顔を上げて見たら、笑顔で見下ろしてた。

「あ、怒ってなかったのか。ごめんな」
「何が?」

 笑顔で聞いてきたから、気付いて無いのかと思った。

「見えちゃったんだよ。パンツが」

 と言い終えたその刹那、響く音と共に、左の頬に衝撃が走った。

 俺は、それを瞬時に理解した。見られたのに気付いてた事、ここに留まるのはまずい事を。

「ちょっと待って。人に見られてるよ」
「は? 関係ないんだけど」

 そうは言いながら、周囲を確認した隙に、ウルの視線とは反対の方向に、飛び出した。

 筈なのに、気付いたらさっきよりも、地面が近くにあった。

「昔っからずっとそれ。騙される訳ないでしょ」
「悪かったよ……許してくれ……」

「絶対誰にも喋らないって誓える? それなら許す」
「何を?」

「は?」
「あ、そういう事ね、うん、誓うよ」

 何とか許して貰えたようだから、誓いは必ず守ろうと思った。

「待たせて、ごめんねぇ。2人共どうしたの?」
「おう、来たか。何でもねーよ」

 タイミング悪く、ゴカイが戻って来て、施設の人達も見送りに来てくれてるし、何でも無くなかった。

 倒れてる俺の背中に、ウルが座ってた所を見られるなんて、最悪だけど、平静を装って立ち上がった。

「大分待たせちゃったわね。嬉しくてつい、ごめんなさいね」

「それなら良かった。待った甲斐があるよ」
「そうですね。見てて伝わってきましたもん」

「やっと来てくれたのは、2人のおかげね」

「俺達はなんもしてないけど、知ってたの?」
「どういう事?」

 ウルは、ゴカイの話を聞いてなくて、分かって無いから、説明してあげた。

 施設の人達はずっと前から、ゴカイが近くまで来ては、帰って行くのを見かけてたらしい。

「見られてたなんて、恥ずかしいよねぇ」

 ゴカイは、照れくさそうに笑いながら、そう言った。

「それは恥ずいな。俺だったら来れないね」
「あたしもー」

 そんなゴカイを、冗談のつもりで少しからかったら、何も言わずに真顔になった。

「そろそろ帰るか、ウルん家にも行くし」
「施設の人にも迷惑だしね」

「私達は迷惑なんて思わないわよ。またいつでも3人で遊びに来てちょうだいね」

 ゴカイは、大人達にも見放されたって言ってたけど、そんなんじゃなくて、ゴカイを思っての事なんだと、話してみて分かった。

 それをゴカイ自身も、今になって気づいたから、来ようとしてた訳だけど。

「また来るよ」
「次来たら、子供達と遊ばせて下さい」

「是非そうしてちょうだい、待ってるわね」

「はい」
「じゃあ、また」

 挨拶と、また来る約束をしたけど、ゴカイは何も言わず、会釈だけしてた。

「何も言わなくていいのか?」
「そうよ、なんか言いなさいよっ」

「いいよ……また来るしねぇ」

「ゴカイくん、お友達と仲良くするのよ。気軽に帰って来なさいね」

 ココロさんは少し声を震わせてて、その言葉を聞いたゴカイも泣いてた。

「また来るよ。ありがとねぇ」

 ゴカイは振り返って、ちゃんと挨拶をした。

「ばいばーい、また来てねー」

 帰ろうとしたら、さっき居た部屋の窓を開けて、小さい子達が手を振ってくれたから、振り返して、歩き出した。
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