Children Of The God's

鈴木ヨイチ

文字の大きさ
37 / 52
第2章

共闘

しおりを挟む
 とりあえず俺は、1度そこで未来視止め、避ける事だけに集中して、確実に避けた後すぐに、再び能力を使った。

 すると相手も走り出し、俺の方に向かって来ながら、左の掌を俺に向けてきた。

 その掌に電気を纏うと、次の瞬間、その電気は俺の腹部を貫通した。

 相手の能力が電気なのは分かってたし、速い事も理解してたつもりだけど、いざ攻撃をされて、それが全く目で追えないとなると、流石に焦った。

 とはいえ、俺が冷静な状態を保てれば、どんなに速い攻撃だろうと、未来を視る力の前では、全く問題無い。

 飛んで来る電撃を避ける未来を視て、実際に攻撃を避けてから、またすぐに能力を使った。

 そして、次の攻撃が来るから、それを避ける未来を視て、実際に避けてから、またすぐに能力を使う。

 俺は、このやり方を繰り返した。理由は、10秒通して視る事も出来るけど、少しでもタイミングがズレたら、待ち受けてる未来が全て死だから。

 俺は避ける事だけを考えて、ただひたすらに、このやり方だけを繰り返し、攻撃を避け続けた。

 そして、どのくらいの時間が経ったか、突然相手からの攻撃が止まり、それを見て俺も、距離を置いて立ち止まった。

「どうした……? ハァ……もうへばったかよ」
「後ろを見てみろ。お前達の負けだ」

 そう言われて、この状況で目を離せる程、俺に余裕なんか無いから、まずは能力を使い、相手の意図を確かめた。

 俺は相手から目を離さない未来、言われた通りに後方を見る未来、それぞれ10秒ずつを視て、何もしてこない事は確認出来た。

 ついでに、後方を見る未来を視た時に、イラフが俺達の方に向かい、飛んで来てた。

「イラフか、それがどうした?」
「そうか、何処まで見たのか知らないが、イラフは関係ない」

 その言葉を聞き、すぐに能力を使って、振り返る未来を視ると、地面すれすれを低空飛行するイラフの背中に、シュンが乗ってた。

 それを視て、シュンが乗ってるのは驚いたけど、それ以上に、イラフの飛行速度が、こんなに速い事に驚いた。

 100m以上は離れてる距離から、約1秒程で俺の横を通過し、その風圧で、俺は吹き飛ばされた。

 俺は未来視を止め、後方を確認する動作は省き、その場でうつ伏せになり、風圧で飛ばされないようにした。

 うつ伏せになったのと同時に、イラフが真横を通過したが、俺は間一髪で吹き飛ばされずに済み、俺の相手が吹き飛ばされていた。

 俺はすぐに立ち上がり、イラフを探すと、今度は俺が居る場所とは違う方向に向かっていて、その先にはウルが居る。

 それを見て、咄嗟に走りだしたけど、イラフがウルの真上で止まり、シュンが背中から飛び降りるのを、ただ見つめる事しか出来なかった。

 ウルはシュンの存在に気づいてないのか、気づいてるけど構ってられないのか、見向きもしない。

 そんなウルが、相手の攻撃を避ける為に、1歩後ろに下がった時、地上に降り立ったシュンが、ウルの背中に手を伸ばし、触れた。

「僕達の勝ちです」

 シュンがそう言った次の瞬間、俺の視界からウルが消えた。

 俺は止まらずに、走り続けながら、どうするべきかを考えた。

 もし電気の奴が、こっちに来たら4対1だし、ゴカイの方に行っても、恐らくゴカイに勝ち目は無い。

 だとしたら、俺がゴカイの元に行き、2人で協力して5人を相手にするか。

 逃げるという選択肢が、イラフがいる以上不可能になり、ウルもいなくなった今、俺達に残された選択肢はこの2つだけ。

 俺は時計台で時間を確認すると、時刻は22時30分で、夜間闘技終了まで、残り1時間半。

 その1時間半の間、協力して闘おう思い、ゴカイの方に向かう為に、方向転換した。

 その時、俺の視界に入ってきた光景に、思わず足を止めた。

 シュンに飛ばされた筈のウルがいて、その足元に倒れてたのが、電気の奴。

「ノーマさん、あなたはイートの相手をして下さい」
「これは……どういう事だ?」

「説明は後です。今は闘いに集中して下さい」

 俺の後を追って来てたシュンに、言われるがまま訳も分からず、とりあえず方向転換して、イートの元に向かった。

 イートの所に向かってる間も、色々と考えたけど、何も分からないから、今はシュンの言う通り、闘いに集中しようと思った。

「シュン、あいつがイートって事は、糸使いだよな」
「そうです。でも心配はいりません」

 シュンはそう言いながら俺に触れ、すると俺の手の甲に、印と浮かび上がってきた。

「僕がサポートするので、触られないようにだけ気を付けて下さい」
「了解、よろしくな、シュン」

 シュンが能力を使い、俺はイートの背後に瞬間移動したから、すぐさま剣を振り下ろした。

 イートは気配を察したのか、瞬時に体を捻り、両手で剣を持ち、俺の剣を防いだ。

 体勢が整ってない状態で、耐えられる筈も無く、イートはその場に倒れ、それを見て、俺は追い討ちをかけた。

 イートを目掛けて剣を突き刺したが、これは、横に転がり避けられたけど、間髪入れず、転がった方向に剣を降った。

 これは流石に当たったと思ったが、これも剣で防がれ、更に防いだ衝撃を利用して転がり、俺から離れて、すぐに立ち上がった。

 俺はシュンにアイコンタクトを送り、すぐにイートの背後に移動し、再び剣を振り下ろした。

 前方に跳んで避けようとしてたが、反応が少し遅れ、俺の剣が背中を捉えた。

 イートは振り返り、勢い任せに剣を降ってきたが、俺は冷静に間合いから外れ、一気に踏み込み、斬り掛かる。

 それを、後方に跳びながら剣で防ぐイート、これを何度か繰り返し、1度手を緩めた瞬間、そこを狙って反撃してきた。

 俺はそのタイミングで、シュンにアイコンタクトを送り、イートの背後に移動して、背中を斬る。

 完全に捉えたこの一撃で、イートは前のめりに倒れたが、まだ動いてるから、触られないように近づかず、立ち上がるのを待った。

「シュン…………今ならまだ赦そう」
「いりません……あなたの赦しなんか、必要ない」

「そうか……シークを敵に回すという事だな。必ず後悔するぞ」
「自分の気持ちに嘘ついて、後悔するよりはマシです」

 イートは静かに立ち上がり、両手を広げると、手のひらから糸を出し、2体の糸人間を創り出した。

「それなら、ここで死ね」

 イートがそう言った瞬間、糸人間が動き出し、それぞれが俺とシュンに向かって、走ってきた。

 糸人間は、両手を刃物状に変形させ、斬りかかってきたから、その攻撃を避け、逆に斬りかかると、腕で防いでくる。

 糸だから簡単に斬れると思ってたが、本物の剣と遜色無く、俺の剣は弾かれた。

 俺は1度糸人間と距離を取り、本体を倒す為に、イートの元に向かい走り出したが、イートが左腕を振ると、糸人間が俺を目掛けて飛んできた。

 勢い良く向かって来る糸人間を1体避け、そのまま走り続けると、イートが今度は右腕を振る。

 俺は能力を使い、シュンがいる方向を見ると、そっちにいたもう1体の糸人間が、俺を目掛けて飛んできた。

 そのもう1体の攻撃を防ぎ、闘わずにイートに向かって走り出す。

 イートは左腕を振り、また糸人間がきて、攻撃を避け、走り出す。

 未来視はここで終わり、ここまでの未来を実行に移すが、イート本体には一向に近づけない。

 ただ、糸人間は2体とも俺の所にいる。その事に気づきシュンを見ると、シュンも察したのか、俺をイート本体の背後に、瞬間移動させてくれた。

 イートの背中目掛けて、力任せに剣を突き出すと、剣はイートを貫いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

異世界からの手紙

F.conoe
ファンタジー
異世界から手紙が届いた。 それは数日前に行方不明になった姉からの手紙であった。 しんみりと家族で手紙をやりとりする話。 でもラストは。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...